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北半球に広く分布するキンポウゲ科の多年草、トリカブト属の子根を用いる。トリカブト属は毒草として世界的に知られ、古くから毒殺に用いられたり、アジアではアイヌ民族などで矢毒としても利用されていた。インドや中国では古代より薬用としても応用され、「ビシュ」というインドのトリカブトの呼称が「附子」の語源という説もある。トリカブト属は種類が多く、日本だけでもヤマトリカブトAconitumjaponicum、カラフトブシA.sachalinense、ホソバトリカブトA.senanenseなど50種余りの種類があるといわれている。国産の野生の株から得られる生薬としてはおもにヤマトリカブト(オクトリカブト)が用いられている。中国の四川省などで栽培されている品種はカラトリカブト(㊥烏頭A.carmichaeli)である。トリカブトという名は花の形が雅楽を演奏するときに被る鳥の形をしたかぶりものに似ていることに由来する。薬用として根を用いるが、根は附子・烏頭・天雄などに区別される。一般にトリカブトの根は、茎に続く塊根(母根)があり、その周囲に数個の新しい塊根(子根)が連生している。この根の母根を烏頭(うず)、子根を附子(ぶし)、また子根の生えてない細い根をとくに天雄(てんゆう)という。塊根の形が鳥の頭に似ていることから烏頭、母根に付着した根ということから附子、子根がないのは天性の雄ということから天雄という名がある。しかし、現在では日本ではこれらを区別せずに附子といっている。また中国では減毒処理されていないものを烏頭、減毒処理をしたものを附子と称している。附子を薬用にするために古くから減毒する方法が考案されてきた。たとえば生の附子をニガリと食塩との混合液に浸した後に日干しすると、附子の表面に塩分が析出して硬くなるがこれを塩附子(えんぶし)という。一方、ニガリ液に数日間浸した後に煮沸などの加熱処理を加えたものを炮附子(ほうぶし)という。日本では塩水に浸した後、石灰をまぶして乾燥させたものを用いているが、これは白河附子(しらかわぶし)として知られている。近年、日本では2気圧の高圧下で120℃の水蒸気による加熱処理を20~30分間行い、さらに品質や力価を一定にするために粉末とした加工ブシ末が開発されている。トリカブトの成分には毒性の強いアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン低毒性のアチシンなど数多くのアルカロイドが含まれている。アコニチンは加水分解を受けると、ベンゾイルアコニンからアコニンへと変化し、毒性は著しく減じる。薬理的にはアコニチン・メサコニチンなどの鎮痛作用、アコニチン類やヒゲナミンなどの強心作用、アコニチンの血管拡張作用などが知られている。附子の薬理作用として鎮痛作用、抗炎症作用、強心作用、血管拡張作用、新陳代謝促進作用などが報告されている。一方、トリカブトの中毒症状として、口舌のしびれ、嘔吐、下痢、流涎がみられ、運動麻痺、知覚麻痺、痙攣、呼吸困難、心伝導障害などが出現し、死に至ることも少なくない。漢方では大熱の性質があり、補陽・温裏・止痛の効能がある。一般には陽虚の状態、つまり老化や疾病により全身の機能が衰退し、脈の微弱や身体の冷えが現れたときに用いられる。また、冷えによる痛みや風寒湿による痛みにも用いられる。たとえば下半身の冷感や倦怠感、下痢、浮腫、腹痛、腰痛、関節痛、リウマチ、ショック状態などに用いる。臨床的に附子中毒を予防するために、他の生薬とは別に先に煎じることが必要で一般に60分くらい煎じる。また、湯液の煎じる温度やpHによってもアルカロイドの抽出量に差があるため、附子の使用量が同じでも煎じ方や配合生薬によっても副作用の出ることがある。服用に関していえば、消化管内のpHが上がればアルカロイドの吸収が促進される。一般に空腹時より食後のほうが吸収されやすく、また低酸症や潰瘍治療薬を服用している人に副作用が出やすいといわれている。→烏頭・附子・天雄

①温熱作用

寒冷による症状や冷えによる機能異常に用いる。感冒などで悪寒が強いときには麻黄・細辛と配合する(麻黄附子細辛湯)。

腹が冷えて痛み、下痢するときには人参・乾姜などと配合する(附子理中湯)。また半身不随や顔面神経麻痺などには防風・細辛などと配合する(大三五七散)。

②鎮痛作用

関節や筋肉の痛みに用いる。リウマチなどで関節の痛みがあり、寒冷により痛みが悪化したり、四肢が冷えるときには桂枝・白朮などと配合する(桂枝加朮附湯)。リウマチで局所に熱感がみられ寒熱が錯雑しているときには知母などと配合する(桂芍知母湯)。陳旧化したリウマチで関節の変形のみられるときには防風・羗活などと配合する(舒筋立安散)。腕や下肢の筋肉が痛み、運動が困難なときには防風・黄耆などと配合する(十味剉散)。寒冷による腰痛や坐骨神経痛には芍薬・甘草などと配合する(芍甘黄辛附湯)。腹が冷えて痛み、吐き気や腹鳴のみられるときには硬米・半夏などと配合する(附子硬米湯)。

③抗衰弱作用

ショックや老衰、浮腫などに用いる。ショックなどで四肢が冷えて脈が途絶えそうなときには乾姜・甘草と配合する(四逆湯)。汗が出て止まらないときには黄耆と配合する(耆附湯)。出血のためにショック状態になったときには人参と配合する(参附湯)。

老化などで足腰が衰え、頻尿などのみられるときは山薬・山茱萸などと配合する(八味地黄丸)。心不全などで浮腫のみられるときは茯苓・白朮などと配合する(真武湯)。また食道癌や胃癌、食道痙攣などによる嚥下困難な状態には半夏・山梔子と配合する(利膈湯)。

処方用名

附子・生附子・生附・川附子・熟附子・炮附子・淡附子・製附子・黒附子・熟附片・淡附片・製附片・里附片・ブシ・加工ブシ

基原

キンポウゲ科RanunculaceaeのカラトリカブトAconitumcarmichaeliDebx.、その他の同属植物の子根。加工・炮製して利用することが多い。

性味

大辛、大熱。有毒

帰経

十二経

効能と応用

方剤例

回陽救逆

 

①四逆湯・通脈四逆湯・白通湯

陽気衰微の陰寒内盛あるいは大量の発汗・激しい下痢・激しい嘔吐などによる亡陽虛脱で、顔面蒼白・チアノーゼ・四肢の冷え・脈が微弱などショック状態を呈するときに、乾姜・人参・竜骨・牡蛎などと用いる。

②耆附湯

陽衰の衛表不固で自汗がとまらないときは、黄耆・竜骨・牡蛎などと使用する。

③参附湯・参附竜牡湯

大出血(血脱)による亡陽虚脱には、人参などと使用する。

補陽益火

①右帰飲・右帰丸・八味地黄丸

腎陽虚の腰や膝がだるく無力・四肢の冷え・寒がる・性機能減退・遺精・頻尿などの症候に、肉桂・熟地黄・枸杞子・山茱萸などと用いる。

②附子理中湯

脾腎陽虛の腹が冷えて痛む・泥状~水様便などの症候には、人参・白朮・乾姜などと用いる。

温陽利水

①真武湯・牛車腎気丸

腎陽虛による肢体の浮腫(腰以下に顕著)・腰痛・腰が重だるい・尿量が少ないなどの症候には、白朮・茯苓・牛膝・車前子などと用いる。

②実脾飲

脾陽虚による肢体の浮腫・腹部膨満感・泥状便などの症候には、乾姜・白朮・草果などと使用する。

散寒止痛

①甘草附子湯

風寒湿痺の関節の疼痛・しびれ感・冷えなどには、桂枝・白朮・炙甘草などと用いる。

②麻黄附子細辛湯

陽虚の風寒表証で、悪寒・発熱があるにもかかわらず脈が沈を呈するときに、麻黄・細辛などと用いる。

臨床使用の要点

附子は辛熱壮烈であり、「走(ゆ)きて守らず」で十二経を通じ、下焦の元陽(命火)を峻補して裏の寒湿を除き、皮毛に外達して表の風寒を散じる。それゆえ、亡陽欲脱の身冷肢冷・大汗淋漓・吐利不止・脈微欲絶などには回陽救逆し、腎陽不足の陽痿滑精・腰膝冷弱には補火壮陽し、脾腎陽虛・陰寒內盛の心腹冷痛・吐瀉転筋には温裏散寒し、陽虛不化水湿の身面浮腫・腰以下腫甚には助陽行水して冷湿を除き、風寒湿痺の疼痛麻木には祛風散寒止痛し、陽気不足の外感風寒で悪寒発熱・脈沈を呈するときは助陽発表する。このほか、補益薬と用いると一切の内傷不足・陽気衰弱に使用できる。

参考

附子は毒性が強いので、一般には加工・炮製したものを用いる。

生用すると作用が激烈で回陽救逆に働き、亡陽虚脱に短期間のみ使用する。

炮製した製附子(熟附子・炮附子・淡附子・黒附子)は、毒性があまりなく、補陽益火・散寒止痛などの効能をもつ。

日本では、高圧加熱により減毒した「加工附子」をよく用いる。

用量

3~12g、煎服。

使用上の注意

①有毒であるから約1時間先に煎じ、なめても口がしびれない程度にする。

②辛熱燥烈であるから、陰盛陽衰でなければ服用してはならない。

③陰虚内熱・妊婦には禁忌。

④半夏・栝楼・白蘞・白芨・貝母に反する。犀角を畏る。

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