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アトピー治療における漢方の有効性

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痒くて我慢できない、治療を続けているけどなかなか良くならない。

皮膚科を受診される患者さんの中でも、アトピー性皮膚炎で悩んでいる方はかなり多くいらっしゃいます。日本では、ある調査によると、乳幼児では罹患率が最大で約30%にまでのぼると言われ、子供に多いというイメージがありますが、成人でも多くの方がこの疾患で苦しんでいます。

ところで、症状がだらだらと長引くのが特徴ともいえるアトピー性皮膚炎ですが、その治療で漢方薬が有効な場合があることをご存知ですか?ここではアトピーの基本的な知識や、一般に行われている治療法、さらに体質から改善していく漢方薬の考え方をご紹介したいと思います。

多角的な治療法を上手に取り入れて、ストレスの少ない健康的な生活を目指していきましょう。

アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

アトピー性皮膚炎とは、強い痒みのある湿疹ができる慢性の病気です。症状がだらだらと長引き、良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴です。一般的に6か月以上(乳幼児は2か月以上)症状が続くと診断されます。

湿疹の特徴としては例外もありますが、

  • 左右対称に症状が出やすい
  • 手や足の関節の裏、目や口の周り、耳、首などにできやすい
  • 湿疹は赤みがあり、じくじくしている。長引くと硬くなり、盛り上がってくる。

などがあります。痒みや皮膚の病変だけでなく、それらが原因で寝つきが悪くなり、昼間に眠気が出るなど、仕事や日常生活において様々な影響があります。

また、皮膚の痒みや炎症が長引くと我慢できずに引っ掻いてしまい、ますます症状が悪化します。これにより皮膚のバリア機能がさらに下がり、外からの刺激をますます受けやすくなるという悪循環に陥ってしまうのです。

 

どんなことが原因で起こるの?

本来、炎症とは身体が外から侵入してきた異物と戦ってくれる免疫反応によるもので、ウイルスや細菌などから身を守るために必要なものです。しかし、アトピー性皮膚炎ではこの免疫反応が過剰になり、退治する必要のないものにまで反応し、不必要に炎症が起きてしまっている状態になります。

過剰に免疫が働いてしまう原因には、元々アレルギーを起こしやすい体質があります。例えば花粉症や気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎などになったことがある人などで、このような体質をアトピー素因と呼んでいます。今は症状が出ていない人でも何かのきっかけで突然発症することもあります。他にも、皮膚のバリア機能の低下や長期間の皮膚への刺激やストレス、疲労なども免疫に影響を及ぼし、アトピー性皮膚炎を悪化させる原因になります。このように様々な要因が複雑に絡み合って発症する病気なのです。

アトピー素因そのものをなくすことは難しいですが、アトピーの症状を抑え、コントロールしていくことはできます。なるべく早くしっかりと炎症を抑えると同時に、悪化を防ぐために皮膚への刺激になる原因を取り除き、うるおいを保ちつつ皮膚を保護するようなスキンケアを行っていくことが大切です。

 

一般的な西洋医学による薬物治療

通常、アトピーの治療は、ステロイド剤や免疫を抑える薬でアレルギーによる炎症や痒みを抑え、皮膚のバリア機能を補う目的で保湿剤や保護剤(ヒルドイドやワセリン)が用いられます。痒みが強い場合は、アレルギーの治療に使われる抗ヒスタミン剤を併用していく対症療法が一般的に行われます。

アトピーは皮膚の症状により、軽微なものから重度のものまで数段階に分けられています。症状に合わせた治療を行い、改善したら1つ軽い段階の治療に移行していきます。症状が落ち着いてくるまでこれを繰り返し、最終的にはステロイドを使用せずに、保湿剤のみでも支障がなくなる程度まで症状を安定させることを目標とします。

西洋医学による薬物治療には即効性があり、できるだけ早く症状を抑える必要のある急性期や重症例に対して極めて有効です。しかし、ステロイドを長期間使用することで皮膚が薄くなったり、感染症になりやすくなったりといった副作用の問題もあり、使用量の調節には十分注意することが必要になります。また、症状が良くなっても急に使用を中止すると、再び症状が現れやすいという問題点もあります。

 

漢方による治療の考え方

そこで、対症療法を行っていく過程で、症状がある程度落ち着いてきたら漢方薬を併用し、ステロイドを少しずつ減らしていくという治療法も注目されています。ゆくゆくは漢方薬の服用量も減らしていき、身体が持つ本来の免疫力や保湿のみでコントロールができる状態を目指していきます。

東洋医学(漢方)では、体調の不良は「気・血・水」のうちのどれか、または複数が乱れていることによって引き起こされると考えます。アトピー性皮膚炎の症状を東洋医学的にみると、「血」の働きがとても重要です。「血」は体全体に酸素や栄養を巡らせると同時に、熱を冷ますことで体内の熱をコントロールして適正な状態に保つ役割を担っています。何らかの原因で「血」の流れが滞ると、皮膚に栄養分が行き渡らずに、汗や皮脂の分泌が不足して乾燥肌になってしまいます。また、熱をコントロールできなくなることから炎症などの熱性の症状が起こります。

しかしながら、アトピー性皮膚炎では、様々な原因が複合的に絡み合っている場合も多いです。しっかりと塗り薬を使い、適切なスキンケアをしているのに症状がなかなか良くならないのは、他にも悪化させる原因があるからかもしれません。皮膚の状態は胃腸や肺などの内臓の不調、不眠や日々のストレス、女性であれば生理周期などホルモンのバランスなどによっても大きく影響されます。このような不調が皮膚症状を悪化させている可能性も十分に考えられます。漢方治療では、“皮膚だけの問題”として捉えず、こうした状態も含めて考慮し、その人に合った治療をすることがとても重要です。

 

どんな漢方薬が使われている?

アトピー性皮膚炎の症状の直接の原因は、「血」の不足または循環の不良によるものなので、基本的には「血」を補う漢方薬である補血剤が中心に処方されます。補血剤には主に当帰(とうき)や芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)などの生薬が配合されています。

また、熱を冷まして炎症を抑える働きのある清熱剤もアトピーの治療には欠かせません。清熱剤には黄連(おうれん)、黄芩(おうごん)、黄柏(おうばく)、山梔子(さんしし)、石膏(せっこう)、知母(ちも)などを含むものが多くあります。痒みを抑える目的で、防風(ぼうふう)や荊芥(けいがい)などの生薬を含む処方も清熱剤と併せて服用すると効果的です。

加えて、この他にも精神的なストレスが強い場合は「気」の流れを改善する薬(理気薬)、食欲がない・体力がなく疲れやすいといった症状がある場合には「気」を補う薬(補気薬)も処方されます。アトピー性皮膚炎は複合的な病気ですので、これら以外にも体質や状態に合わせて様々な処方が検討されます。ここでは、アトピーに処方される漢方薬をいくつかご紹介していきます。

 

主に乾燥や痒み、炎症の改善を目的とした処方

黄連解毒湯(おうれんげどくとう)

  • 湿疹や痒み、皮膚炎
  • 比較的体力がある
  • のぼせ気味で顔色が赤く、いらいらしやすい
  • めまいや動悸が気になる

体の熱をとるための生薬で構成されている処方なので、炎症や痒みを和らげる目的でよく処方されます。熱を冷ます効果は、いらいらや怒り、のぼせにも効果があり、これらの特徴のある方に向いています。また、黄連や黄芩が配合されており、胸のもやもや感、つかえが気になるときにも有用です。

消風散(しょうふうさん)

  • 分泌物が多く痒みが強い
  • 体力は中程度以上
  • 部分的に熱感がある場合

熱を取り除き痒みを抑える作用に加え、余分な水分をとり分泌物を抑える蒼朮(そうじゅつ)や木通(もくつう)が配合されています。また、熱によって水分が減少するため「血」が少なくなりやすいので、「血」を補うために地黄(じおう)や当帰(とうき)といった生薬が配合されています。分泌物の多い、痒みが強い方に向いている処方と言えます。

桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)

  • 体力が衰えており、疲れやすい
  • あせも、汗により痒みが悪化する場合

この処方に含まれている黄耆(おうぎ)には、元気をつけて体力を回復する効果や、水分の偏りを正し、汗を抑える効果があります。体力がなく疲れを感じている人や、汗をかくことで悪化するアトピー性皮膚炎に用いられます。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)

  • 化膿している湿疹
  • 滲出性(液が出ていて、じくじくしている)の症状

痒みや炎症を抑える効果の他、膿を出させる桔梗(ききょう)や川芎(せんきゅう)、甘草(かんぞう)、余分な水分を取り除く茯苓(ぶくりょう)などが含まれ、化膿していて湿潤傾向のある湿疹に適応があります。また、この処方に含まれる柴胡(さいこ)には熱を冷まし炎症を鎮める他に、気分を晴れやかにする作用もあります。

当帰飲子(とうきいんし)

  • 皮膚の乾燥が気になる
  • だらだら続く慢性の湿疹・痒み

顔色が悪く、皮膚がかさかさしているなど、「血」によって運ばれる栄養素が低下した状態を改善する補血薬が多く含まれる処方です。体力を回復し、痒みを抑える効果も期待できます。ただし熱を冷ます作用はないので、炎症の少ない痒みが適応になります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

  • 皮膚の乾燥が気になる
  • 比較的体力がある人
  • のぼせが気になる

「血」の滞りを改善する生薬や、「血」を補う生薬が多く配合された処方です。皮膚の炎症が慢性化し、皮膚のきめが粗く硬くなった慢性化した状態に有効で、漢方では「血」の巡りが悪化し、「瘀血」が生じている状態と捉えます。そのため「血」の巡りが悪くなることで起こるむくみや肩こりなどの症状にも効果的です。また、「気」というエネルギーを巡らせる桂皮(けいひ)が含まれており、のぼせなどの頭に気が上ってしまった症状も改善します。

 

体質を改善する漢方処方

アトピーを始め、皮膚の状態は内臓や精神の状態に大きく影響を受けます。それらの不調がアトピーの症状を悪化させる原因となっていることがあります。例えば、体力が落ち、胃腸の機能が弱くなってしまうと飲食物から栄養素を摂れなくなり、肌の潤いの保持に必要な水分やセラミドが不足します。その結果皮膚が乾燥してしまい、肌のバリア機能の低下につながってしまいます。これらを改善することでアトピーも改善することが多々あります。

ここで紹介する漢方薬は、直接痒みを抑える効果のあるものではなく、患者さんそれぞれが抱える不調を改善することで、アトピーの治療の手助けをするものです。必ずこの処方、というように決まったものではありません。この記事では、胃腸を整える漢方薬をご紹介します。

四君子湯(しくんしとう)

  • 痩せて顔色が悪い
  • 吐き気や胃もたれで食欲がない
  • 体力がなく疲れやすい
  • 下痢気味

気力がないといったエネルギーの不足(気虚)を改善するための処方で、大棗(たいそう)や生姜(しょうきょう)などの組み合わせは胃腸の機能を正常にし、食欲を改善することで元気を回復させる効果があります。体力が落ちている状態では自然と治癒力も低下してしまいますので、他のアトピーの治療薬と一緒に使うことが多いです。

中散(あんちゅうさん)

  • やせ型
  • 胃痛や腹痛、ときに胸やけがある
  • 神経性の胃炎がある
  • 慢性的に胃の調子が良くない

身体を温める生薬が多く含まれています。冷え症により胃の具合が悪くなる人に向きます。芳香性の生薬により胃の調子を整え、胃酸を中和して胃痛にも効果があります。また、この処方には牡蠣(ぼれい)が含まれ、精神的な緊張を和らげる作用があり、ストレスが多い、精神的に動揺しやすい人にも有効です。

 

漢方薬のメリットとデメリット

漢方治療のメリットは、赤みや痒みなどの皮膚の症状だけにとらわれず、乾燥肌や胃弱などより本質的な体質の改善を期待できる点にあります。漢方薬は種類が豊富で、ここでご紹介したもの以外にも患者さんの体質により様々な選択肢が考えられます。

一方、デメリットとしては西洋薬と比較して効果が現れるのに時間がかかり、長期間服用を続けなければならないという点が挙げられます。

 

アトピーとの付き合い方

アトピー性皮膚炎は完全に治すことが難しいとされています。これは短期間治療をしても改善せず、病院や治療法を何度も変えてしまうことも原因であると考えられます。ただし、この病気で悩む方の多くは、継続して治療することで症状をコントロールして、最終的には薬が必要ない程度まで持っていくことができるのです。

ステロイドなどの副作用に不安があり、治療が続かない人や、治療を続けているのに効果が出にくい人などは、上手に漢方薬を取り入れながら治療していくのも良い方法です。自分に合った方法を見つけ、希望を持って根気強く治療を続けていきましょう。

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