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防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)は汗つかきなのにむくみやすい症状に効果的

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「防已黄耆湯は汗つかきなのにむくみやすい症状に効果的です」

処方のポイント

水分代謝を促進する防已・黄耆、消化器を賦活する白朮(あるいは蒼朮)、生姜・大棗・甘草で構成。体力低下による水分流通の不調を改善し、よく汗をかくのにむくむ、からだが重だるく疲れやすい、尿量が少ない等の症状に適応。甘苦味で、温服が効果的。

防已黄耆湯が適用となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

色白で筋肉が柔らかく水ぶとりの体質で疲れやすく、汗が多く、小便不利で、下肢に浮腫をきたし、膝関節の腫痛するものの次の諸症:腎炎、ネフローゼ、妊娠腎、陰嚢水腫、肥満症、関節炎、癰、癤、筋炎、浮腫、皮膚病、多汗症、月経不順。

足がむくみやすく、夕方に靴がきつくなり、靴下の痕がくっきりつきます

疲れやすく、汗をかきやすいとのことなので、気虚の浮腫とみて防已黄耆湯を使用。6カ月ほど服用してもらったら、下半身がすっきりしたと喜ばれた。同じむくみでも、口の渇きがあれば五苓散を使う。尿が多くて下半身の冷えを伴う場合は苓姜朮甘湯が良い。

ダイエットしたいのですが、食事を減らしても全然痩せません

158cm、68kgの女性。家事をしてもすぐ疲れる。ひどい汗っかきで、膝の痛みがある。

いわゆる水太りタイプ。防已黄耆湯を10カ月間服用してもらい、体重を10kg減らして58kgとした。気虚の場合、食事を減らしても体調が悪化するだけである。

便秘があれば麻子仁丸など気虚に適した処方の併用を検討する。

気虚ではなく筋肉質なタイプの肥満なら大柴胡湯などにする。

漢方的適応病態

1)気虚の風水。すなわち突然発症する浮腫(特に顔面や身体上部)、発熱、悪風~悪寒、体がだるい、尿量減少等の風水の症候に、自汗、息切れ、元気がないなどの気虚の症候を伴う。

2)気虚の風湿。すなわち急に生じる関節痛や腫脹、全身が重だるいあるいは発熱悪風などの風湿の症候に、自汗、息切れ、疲れやすい、元気がないなどの気虚の症候を伴うもの。

防已黄耆湯の組成や効能について

組成

防己12黄耆15白朮9炙甘草6生姜3大棗3

配合生薬は、黄耆(おうぎ)、防已(ぼうい)、白朮、甘草、生姜、大棗(たいそう)の六味である。

君薬は、処方名が示す通り防已と黄耆であり、防已には利水消腫・祛風止痛(きょふうしつう)の働きがある。祛風して水の流れを良くし、利尿作用により浮腫を解消する。特に重力に影響されるむくみに効果がある。消炎鎮痛や筋弛緩作用もあり、関節痛を改善する。黄耆は益気固表して衛気を強化する。皮膚の血液循環を促して無為な

発汗を止め、体表の免疫力を高める。毛穴をきゅっと締める感じである。さらに体液の流れを調えて、利尿してむくみを解消する。補気力が強く、脳の活性を上げて全身の機能を高める。しびれを軽くする働きもある。両者の働きにより体表を固めて風邪を払い、気と体液の流れを良くする。

臣薬の白朮は補気健脾して湿邪を除去する。黄耆とともに益気固表の力を強めて免疫力を高め、防已とともに祛湿行水(きょしつこうすい)の効果を倍加させて、浮腫や関節痛を解消する。佐薬の生姜と大棗は、風邪を除去し、水の流れを調え、体表の状態を改善する。生姜は末梢血管を拡張し、黄耆の働きを助ける。使薬の甘草は、消化吸収機能を調えて、諸薬の薬性を調和する。以上、防已黄耆湯の効能を「益気祛風(えっききょふう)、健脾利水」という。

湿邪が脾胃を侵して腹部膨満感などの症状があるときは平胃散を合わせる。腹痛があれば芍薬甘草湯などを併用する。吐き気もあれば桂枝湯を合わせ飲む。関節炎で炎症が強い場合は、麻杏薏甘湯(まきょうよくかんとう)や薏苡仁湯の方が良い。元気がない、汗が出るなどの気虚の症状がみられない風水には越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)を使う。防已黄耆湯を使うには、患者が気虚であることが大前提なのである。

出典は『金匱要略』である。

効能

益気去風・健脾利水

主治

気虚水停

♢益気去風

気虚による防御機能の低下に対して用いる治法である。表虚固(体表の気が虚して腠理がゆるんだ状態)の場合、外邪が体内に侵入しやすくなるので、表虚を益気しながら去邪する必要がある。

♢健脾利水

脾の運化機能を強め、停滞した水湿を除去する治法である。

♢防御機能

気の5つの生理機能(推動・温喣・防御・固摂・気化)の1つである。

解説

本方剤は主薬である防己(去風湿)と黄耆(益気固表)にちなんで「防已黄耆湯」と命名された、主として「風水」や「風湿」の治療に用いる処方である。「風水」「風湿」の主症状は浮腫で、「風水」による浮腫は程度がひどく、広範囲に及ぶことが多いが、治癒は容易である。「風湿」による浮腫は粘りがあって、除去がむずかしい。水と湿は同類であり

区分しにくいので、臨床では、水湿とよぶことが多い。

適応症状

◇悪風・自汗

体内の気(特に体表に分布している衛気)が不足すると、体表を固めて邪気の侵入を防御する力が弱まる。このとき、風邪の侵入を受けると悪風の症状が現れる。表虚では腅理が弛緩してしまうため、汗が出やすくなる。表虚不固の代表的な症状である。

◇浮腫・身重

水湿停滞の症状で水湿が体表の皮膚・筋肉に滞ったためにおこる。湿邪は「重」を主るため、身体が重く感じられる。肺は「皮毛」を主り、脾は「筋肉」を主るため、肺と脾の気が虚すと皮膚・筋肉に浮腫が現れやすくなる。

◇小便不利

脾気が虚して水湿を運化することができなくなるため、小便の通利も悪くなる。

◇活淡・苔白

舌淡は気虚を示し、白苔は陰邪である水湿の停滞を示す。

◇脈孚

病位が体表にあることを示す。

防已は辛・苦・寒(辛ー発散風邪:苦一燥湿:寒一清熱)の性味をもち、去風、利水、除湿の作用が優れている。風邪と湿邪を除去でき、風湿による浮腫治療の主薬である。水湿が長く停滞して化熱するときは、防巳の寒性でこれを抑える。防已には漢防已と木防已の2種類がある。漢防已は利水退腫の作用が強いので浮腫に使い、木防已は去風止痛の作用が強いので、風湿痺痛(関節痛)に使うとされるが、現在ではこうした使い分けをすることは少なく、混用することが多い。黄耆は肺・脾に帰経し、体表に作用する。補気作用がつよく体表を固め発汗を止める。さらに利水退腫の作用によって、気虚による浮腫、排尿困難を治療する。黄耆を補気昇陽の目的で用いるときは蜜炙のものがよいが、本証のように益気固表・利水の目的で用いる場合は生のままがよい。白朮には、健脾作用があり、そして苦温の薬性で体内の水湿を乾燥させる。水湿による実証には蒼朮を選ぶことが多いが、気虛による浮腫や自汗には補気・燥湿作用のある白朮を用いる。防已の去風除湿作用が強くても黄耆、白朮といった扶正薬が配合されているので身体の正気を損傷する心配はない。

炙甘草は健脾益気の作用を増強する。このような場合は蜜炙甘草のほうが適している。悪風

自汗などは営衛不和によって現れる症状であり、生姜と大棗を用いてこれを調和させる。

臨床応用

◇浮腫

①気虚による浮腫:脾肺気虚(疲労感、食欲不振、息ぎれ、風邪をひきやすい、汗が出やすいなど)のため、水湿が皮膚・皮下に停滞した浮腫、排尿困難に用いる。

②風水・風湿:風邪と湿邪が虚に乗じて侵入した浮腫に用いる。表証(悪風、発熱、汗出など)の症状をともなうことが特徴である。

解表作用を増強したいとき+「麻黄湯」(解表散寒)

③原因不明の浮腫:原因不明の浮腫で、虚に偏った状態に用いる。月経期間は気血が不足して浮腫がおこることもある。これには補気薬の多い本方剤を優先的に使用する。

◇心疾患

木防已は去風湿薬に属し、関節痛をともなうリウマチ性心疾患に用いる。漢防巳は補気・利水作用があり、動悸、息ぎれ、浮腫などをともなう心不全にも使用される。

陽気不足の症状をともなうとき+「苓桂朮甘湯」(温陽利水)

◇腎疾患

慢性腎炎で、気虛による浮腫、排尿困難、蛋白尿などにも使用が考えられる。

利水作用を増強したいとき+「五苓散」(利水)

◇肝疾患

肝疾患による浮腫、腹水などで、気虚症状がある場合に用いる。ただし疏肝活血法を併用する必要がある。

肝鬱血瘀による疼痛があるとき+「当帰芍薬散(活血・利水・止痛)

または+「冠元顆粒」(活血・理気・止痛)

◇肥満

気虚湿盛(息ぎれ、身体が重いなど)の肥満にも使用できる。

舌苔白膩など痰湿停滞の症状があるとき+「二陳湯」(燥湿化痰)

注意事項

本方剤は主に気虚による浮腫を治療するもので実証の浮腫には適していない。

気の不足による水分停滞や風湿を改善

気虚の人の浮腫や関節痛などに使用

人体を構成する気・血(けつ)・津液(しんえき)は、互いに助け合いながら体内を巡る。津液は、気が後押ししてくれることで、ようやく体内を巡ることができる。気が守ってくれるので、無駄に体外に排泄されることもない。

ところが気が不足すると、水分の代謝や循環が鈍くなり、むくみやすくなる。守りも弱くなり、ちょっと動いただけで、どっと汗が出る。汗と一緒に元気も体外に流れ出る。ますます気虚になり、疲れやだるさは消えない。

こういう体質を改善できるのが、防已黄耆湯である。

どんな人に効きますか?

防已黄耆湯は、「気虚の風水・風湿」証を改善する処方である。

風水・風湿は、ともに風邪(ふうじゃ)に含まれる病邪。気虚の体質のうえに、これらの病邪が侵入し、様々な症候が現れる。

まず風水とは、水分代謝が不十分で、水分が体内にたまりやすい体質に風邪の刺激が加わり、ますます水分が停滞する病態。むくみ、発熱、悪寒、体が重だるい、尿量減少などの症状が出る。急性腎炎、慢性腎炎、ネフローゼ症候群、心臓性浮腫などでみられる。また風湿とは、風邪と湿邪が合わさった病態で、関節痛、関節の腫れ、関節に

水がたまりやすい、全身が重だるい、悪風などの症状が現れる。変形性関節症、関節リウマチ、神経痛などでみられやすい。風水・風湿ともに風邪なので、突然、急に症状が発生することが多い。

 防已黄耆湯の証の特徴は、これらの症状のベースに気虚があるということである。気虚つまり全身の機能低下があるために、免疫力や抵抗力も落ちており、病邪をなかなか排除できない。

 この場合の気虚は、俗にいう、毛穴が緩んでいる状態である。体表をきゅっと密に引き締める力が弱い。従って気虚特有の、疲れやすい、元気がない、息切れ、舌は淡白色で、舌苔も白い、といった症状のほかに、緩んだ毛穴(汗腺)から汗がじわじわと出やすくなっている。開いた毛穴からは風邪も侵入しやすく、先の風水・風湿になりやすい。

気虚の多汗症の場合、ちょっと動いただけでも汗をかく、上半身から汗をかきやすい、といった特徴がある。暑い夏に顔からだらだらと汗をかいて、扇子やタオルが手放せず、ぽっちゃりしたタイプの人の体質改善に、防已黄耆湯が効く場合が多い。このタイプの人には、膝が痛む人が少なからずおり、いずれの症状にも本方が効く。

 気虚の浮腫もよくみられる。気が不足しているため、水分を上部まで循環させることができず、水分は重力に負けて下半身にたまり、夕方になると足がぱんぱんにむくむ。立ち仕事や、パソコン業務などで1日中座りっぱなしの場合、顕著に現れやすい。

この水分、横になって寝ている間にまた全身に広がるので、朝になると足のむくみが解消されている。朝だけ上半身で水分が多くなり、顔がむくみ、まぶたが腫れぼったくなったり、手の指がむくんで指輪がきつくなったりする場合もある。全て気が虚しているせいで生じる浮腫である。

 

用語解説

1)津液とは、体の中に存在する水分のこと。気・血・水(すい)と呼ぶ場合もある。

2)風邪は病邪の一つで、環境変化や病原菌などの外因により突然発生したり体調が急変したりす る。五臓の肺が支配する水道(水分の通り道)の調整機能が影響を受けやすく、そのせいで風湿 や風水が生じやすい。

3)気には、推動、温煦(おんく)、防御、固摂、気化の5つの働きがある。このうち防御は病邪から  体表を守り、固摂は必要なものが漏れ出るのを防ぐ作用を意味する。気が虚して毛穴が緩むと、 これら2つの力が弱まる。なお防御の働きをする気を衛気(えき)と呼ぶ。

4)こういう汗を自汗という。ちょっと動いただけ、あるいはちょっと暑いだけで、汗がじわじわと出てく る。肌が湿っぽい。

5)祛風とは、風邪を除去すること。

6)気虚のうち、衛気が不足している証を衛気虚という。衛虚と呼ぶこともある。

 黄耆は固表の主薬といわれ、かぜをひきやすい人の体質改善にもよい。

7)行水とは、水分の流れを良くすること。

8)風邪の場合、一般には葛根湯や麻黄湯あたりの麻黄剤で発汗させて治療に当たるのだが、衛  気虚が根底にあるときは、発汗とともに気虚がさらに進んで病態が悪化する恐れがあるので、このように補気しつつ祛風する。益気、健脾で正気を養いつつ、祛風・利水で邪気を払う。この治療原則を扶正祛邪(ふせいきよじゃ)という。

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