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高熱でからだが熱く、多量の汗をかくときは白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)

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「白虎加人参湯は顔が赤くなるほどの高熱時によく使われます」

処方のポイント

熱を強力に下げる石膏が中心の白虎湯(石膏・知母・甘草・粳米)に消化器機能を亢進する人参を加えたもの。高熱でからだが熱く、多量の汗をダラダラとかき、体力も体液も消耗し、のどの渇きがひどい等の症状に適応する。甘苦味で、温服が効果的。

白虎加人参湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

のどの渇きとほてりのあるもの。

漢方的適応病態

気分熱盛(陽明病経証)。すなわち、息切れ、無力感、疲労感など気虚の症候を伴うもの。舌質は紅で乾燥、舌苔は黄。脈は大で、無力。

白虎加人参湯の組成と効能について

組成

石膏30知母9甘草3粳米9人参5

効能

清熱・益気生津

主治

気分熱盛・気津両傷

 〇清熱・益気生津:亢進した熱邪が体内の気と津液を消耗した病態に対して、清熱しながら益気。生津する治法である。

 〇気分熱盛:気分証とは「衛気営血弁証」(温熱論)による分類の一段階で、大熱。大汗、大渴、脈洪大の四大症状を特徵とする病証である。この病証は『傷寒論』の陽明経証に相当する。

 〇気津両傷:亢進した熱邪が急激に気と津液を損傷した病態をいう。気と津液が慢性的に不足する病証は気陰両虚という。

解説

白虎加人参湯は「白虎湯」に人参を加えた処方である。「白虎湯」は気分に存在する強い熱を清熱し、生津する。人参は気津而傷に対して効果がある。五行学説では白虎は西方を守る金神で、季節は秋に属する。秋は盛夏を制することから、清熱作用に優れている本処方は「白虎湯」と名付けられた。

適応症状

◇大熱

全身の熱盛を示す症状である、温熱の邪気が衛分(表)から気分(裏)に深く入った場合や、傷寒の邪気が熱化した場合におこる。陽明胃経は「多気多血の腑」であるため、邪気が陽明経に侵入すると、正邪の抗争は激しく高熱が現れる。

◇大汗

熱が津液を燻蒸、上昇し外へ追い出す症状である。

◇大渇

熱邪によって津液は消耗され、大汗によって津液が流失してしまう症状である。冷たい水を飲みたがる。

◇顏面紅潮・頭痛

陽明経の邪熱が経絡に沿って頭部。顔面に上昇する症状である。

◇舌紅・苔黄・少津

紅舌と黄苔は熱盛を示し、舌面の乾燥は体内の津液が消耗されていることを示す。

◇脈洪大有力あるいは大無力

亢進した熱に促されて気血の流れが速くなると、脈は洪大有力(大きく力がある)となる。高熱、大汗の後気と津液が甚だしく消耗されてしまうと大無力(大きいが力がない)の脈がみられる。

寒の薬性をもつ石膏と知母は、「熱なる者はこれを寒す」の治療原則による配合で、熱邪を清する。石膏は清熱生津の代表薬である。甘寒の性味をもち、優れた清熱作用によって津液の消耗を防ぎ、囗渴症状を回復させる。知母も石膏と同じく清熱作用があるほか、潤の薬性によって津液の根本である陰を潤し、石膏の生津作用も補佐している。粳米と甘草は石膏、知母の寒性を和らげながら、主として胃気。津液を保護する。実熱証で胃気の損傷がみられないときには、粳米を除き甘草を生甘草にすることも多い。人参は益気生津の作用をもち、強い口渇、汗が止まらない、脈無力といった気津両傷の症状に適している。温性の人参より涼性の西洋参がよい。

臨床応用

◇高熟

邪気と正気の抗争が激化した高熱に用いる。弁証の要点は大熱、大汗、大渇・大脈の四大症状である。

  〇表寒証をともなうとき+「葛根湯」(辛温解表) 

            または+葱白、豆豉、細辛、「葱豉白虎湯」(解表清熱)

 〇腸燥便秘をともなうとき+「大承気湯」(瀉熱通便)

             または+大黄、芒硝=「白虎承気湯」(瀉熱通便)

 〇皮膚斑疹をともなうとき+「黄連解毒湯」(清熱解毒)

 〇高熱により意識が混濁するとき+「三黄瀉心湯」(清熱瀉火)

                  または+「牛黄清心丸」(清熱・開竅・安神)

                  または+羚羊角、犀角=「羚犀白虎湯」(清熱解毒開竅)

 〇寒熱往来をともなうとき+「小柴胡湯」(和解少陽)

             または+柴胡=「柴胡白虎湯」(和解少陽、清熱生津)

◇脳炎発熱

口渇、舌紅などの熱盛症状をともなう脳炎の基本処方として用いる。随伴症状にしたがって次の処方を併用する。

〇頭重、身重、苔膩、口渇するが飲みたくない(湿重)のとき

          +蒼朮=「蒼朮白虎湯」(燥湿清熱)

または+「平胃散」(燥湿理気)

〇痙攣をともなうとき+「釣藤散」(清肝化痰)

                    または+羚羊角、釣藤、全蝎(清肝熄風)

〇意識障害がみられるとき+「牛黄清心丸」(i青熱開竅)

                              または+「安宮牛黄丸」(清熱解毒、除痰解竅)

◇肺炎

特に大葉性肺炎に用いることが多い。

咳嗽、痰黄などの症状をともなうとき+「麻杏甘石湯」(清肺止咳)

◇糖尿病

熱によって津液の消耗された症状に用いる。

 〇口渇症状がつよいとき+「六味地黄丸」(滋陰補腎)

             または+「麦門冬湯」(益氣養陰)

◇歯痛

胃熱が胃経の走行している歯茎を犯したため、一時的に現れる歯痛に用いる。

 〇便秘症状をともなうとき+「大承気湯」(瀉熱通便)

◇痺証

白虎加人参湯の優れた清熱作用は、特に関節の腫れ、痛み、熱感をともなうリウマチに適している。

 〇関節の痛みが強いとき+「桂枝芍薬知母湯」(去風除湿・温経散寒・清熱通絡)

             または+「薏苡仁湯」(除湿去風・散寒通絡)

             または+「疎経活血湯」(活血通絡)

◇産後の発熱

出産は気血を消耗するため、産後に発熱することが多い。高熱の他、口渇が強く、汗が多い場合に本処方を用いる。人参の益気生津作翔の効果が期待できる。

注意事項

①悪寒、発熱、頭痛、無汗、口不渇など(風寒の邪気を受けた表証)に用いてはならない。

②主症状である四大症状が揃わなくても、熱が盛んであれば白虎加人参湯を用いてよい。

③「真寒仮熱」(熱症状がみられるが病の根本は寒にあるもの)に用いてはいけない。

④白虎加人参湯を用いて熱が下がり、諸症状が軽減したら、直ちに停薬しなければならない。継続して投薬すると、身体を過度に冷やし寒証に転じてしまう恐れがある。弁証が正しければ一週間以内に効果が現れる筈であり、効果がみられない場合にはほかの方剤に変方する。

〇正気を保護しつつ熱邪を除去

 勢いのある熱邪による炎症や感染症に有効

熱邪は病気や体調不良の原因(病因)の一つであるが、その熱邪が患者のどこに存在するか、勢いはどれくらいか、などによって多種多様な症候や病変(熱証)が表れる。漢方では、熱証を呈する病気(熱病)に対し、一律に清熱剤で熱を冷ましてしまうのではなく、患者の証に従って様々な方剤を使い、熱病の根本治療を進める。

 例えば熱病の初期には悪寒や頭痛が見られるが、ひどくなると熱感が強まり、口の渇きが生じる。さらに悪化すると高熱を発し、うわ言を言うなど、意識にも影響が及び、さらに進むと出血を来すようになる。漢方では、それぞれの段階に応じて処方を使い分ける。

 白虎湯(びゃっことう)や白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)は、体内のやや深い所に存在する熱邪が、人の免疫力や抵抗力(正気[せいき])と激しく争っている時に使う処方である。

どんな人に効きますか

白虎加人参湯は、「気分熱盛(きぶんねつせい)、胃熱、気陰両虚(きいんりょうきょ)」証を改善する処方である。

熱病の証を判断する方法(弁証)の一つr衛気営血(えきえいけつ)弁証」において病邪が裏に入った病態を「気分」証というが、「気分熱盛」証は、体内に侵入した熱邪が勢い盛んな状態で「気分」に滞在し、正気と激しく争っている状態を指す。

熱病の別の弁証法である「六経(ろっけい)弁証」では、陽明病の「陽明経」証に当たる。陽明胃経が走る頭部、鼻、口腔、咽喉部、頸部、脾胃、鼠径部に熱証が生じやすい。

気分熱盛証においては、胃を中心に(胃熱)、体内に強い熱邪が存在している。正気は衰えておらず、まだまだ強い。従って、正気と邪気(熱邪)とが体内で激しく争っているため、比較的高い熱、あるいは熱感が出て、汗が多く出る。悪寒はない。顔面紅潮、ほてり、口渇、口臭、腹部膨満感、味覚の減退、体が重だるい、うわ言など精神の乱れ、不眠、尿失禁、脂性肌、頭痛、手足先の冷え(熱厥[ねっけつ])などの症状も表れる。舌は赤く、黄色い舌苔が付着する。ここまでが熱を体外に発散させる白虎湯の適応証である。高熱、口渇、多汗、力強い脈が四大症状とされる。

 さらに熱が強まると、津液が損傷する。津液の消耗が激しくなると口喝がひどくなり、水分を補給してもなかなか癒されない。胸部の熱感や閉塞感、胸苦しさ、胸部がざわざわとした落ち着かない不快感(心煩)、濃い色の尿なども見られる。また、熱に伴う発汗で津液が皮膚から失われる時に、気も一緒に漏れ出て消耗し、気虚証となる。これが「気陰両虚」証(気陰両虚の陰は、津液と同義)。この証になると、白虎湯が適する証で見られる症候に加えて、息切れ、無力感、疲労倦怠感、背部の軽度の悪寒など、気虚の症候が見られるようにな舌は白虎湯の場合よりも乾燥が進むので潤いが少なく、黄色い舌苔も乾燥する。ここまで来ると、白虎加人参湯の適応証となる。

臨床応用範囲は、慢性胃炎、急性肝炎、気管支炎、肺炎、インフルエンザ熱中症、日本脳炎、糖尿病、甲状腺機能亢進症、高血圧、てんかん、慢性関節リウマチ、副鼻腔炎、歯周病、口内炎、咽頭炎、結膜炎、歯痛、皮膚炎、湿疹、乾癬、夜尿症、レイノー病などで、気分熱盛、胃熱、気陰両虚の症候を呈するものである。

どんな処方ですか

配合生薬は、石膏、知母(ちも)、甘草、粳米(こうべい)、人参の五味である。

白虎湯の君薬の石膏は胃熱を冷まし、熱を体外に発散させる(解肌透表[げきとうひょう])。特に陽明胃経の熱を冷ます働きが強い。心煩を和らげ口渇を癒す。知母は臣薬として胃熱を冷まし(清熱瀉火[せいねつしゃか)、熱による陰液の消耗を防ぎ(滋陰潤燥[じいんじゅんそう))、君薬の働きを助ける。血糖降下作用もある甘草と粳米は佐薬として気と津液を補って(益気生津[えつきしょうしん])、胃を守り、君臣薬の働きを助ける。また寒性の強い清熱剤である石膏や知母の刺激から胃を守る。さらに甘草は使薬として、諸薬の薬性を調和させる。白虎加人参湯においては人参が気を補いつつ(補気)、胃の津液を補い、口渇を解消させる。

以上、白虎加人参湯の効能を「清熱瀉火、益気生津」という。五味の生薬の相互作用により、正気を損傷することなく、邪気を除去する。中国では、人参の代わりに、人参より滋陰清熱効果が高い西洋参がしばしば使われる。

石膏には、胃だけでなく肺の熱を冷ます力もある(肺、胃の経脈に入る)、胃熱を冷ます場合は本方のように知母と組み合わせるが、肺熱を除去したい場合は、麻杏甘石湯(まきようかんせきとう)のように、麻黄と組み合わせる。

津液の損傷が激しい場合は麦門冬湯(ばくもんどうとう)を合わせる加竹葉石膏湯(ちくようせっこうとう)を使う。糖尿病で腎陰虚証が明らかな場合は六味地黄丸(ろくみじおうがん)を合方する。悪寒と熱感を繰り返す症状(往来寒熱)があれば小柴胡湯(しょうさいことう)などの柴胡剤を合わせる。のぼせなど陽気が強い場合は白虎加桂枝湯(びゃっこかけいしとう)がよい。

胃の熱が、今回の証のように体外に発散しようとせず体内にこもって便を乾燥させ、便秘に至らしめる場合もある。この場合は陽明病の陽明腑証に当たり、「熱結(ねっけつ)」証と呼ばれ、大砥気湯(だいじょうきとう)などの承気湯類を使う。本方と合わせてもよい。

寒性が強く、冷え症、舌の色が白っぽいなど寒証が見られる人には使わない。また熱証でも、陰虚証で生じた虚熱には用いない。

出典は『傷寒論』である。前述の六経弁証は、この『傷寒論』で展開される弁証法である。

こんな患者さんに

皮膚が痒くて仕方ありません。

寝ている間に掻きむしっているようです

皮膚は乾燥気味で、患部は赤く、熱がこもっているように感じる。気分熱盛、陰虚証とみて本方を使用。痒みは次第に治まり、3カ月で完治した。熱感がなければ当帰飲子(とうきいんし)を検討する。

慢性的な鼻詰まりです。粘性の鼻汁が少し出ます

味の濃い料理や酒を好む。口内炎ができやすく、口臭がある。胃熱証とみて本方を使用した。4カ月で鼻が通るようになった。その後、口臭もなくなった。口内炎もできなくなった。

用語解説

1)熱病は、病邪が出現した発病初期を過ぎると、正気との争いが激しい熱盛期に入る。正気が強く病邪が衰えれば回復期に入る。正気が弱いと病状が悪化していく。

2)陽明胃経は経絡の一つ。経絡とは、気・血・津液が体内を運行する通路。

3)腎陰虚証は、成長・発育・生殖や体液の調節をつかさどる五臓の腎の陰液が

不足した状態。糖尿病の場合、多尿、のぼせ、手足のほてり、寝汗などの症侯が見られる。

4)虚熱とは、津液が損傷した(險虚証)ために相対的に生じる熱証。熱そのものに勢いがある僕制のではなく、熱とバランスを取っていた津液が減ったために表れてくる。本方が有効なのは、虚熱ではなく実熱。

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