精力減退は多く精神的なものが原因
精力減退とは、性欲・勃起力・勃起回数などが一時的に減少したものをいう。
目次
精力減退の原因
糖尿病などの代謝障害による病気のこともあるが、多くは精神的なものが関係していると考えられる。たとえば、疲労している場合。疲れていると精力は減退しがちだと信じられているが、頭脳労働する人と肉体労働する人では反応がちがい、肉体労働の場合は、ほどよい疲労が逆にセックスへのこころよい刺激とさえなる。
原因となる精神不安をとりのぞけば、減退した精力を回復することができるはずだが、精神的なものというのは原因がはっきりしないこともあり、なかなか思うようにはならない。
漢方では昔からよく研究されている
中国の医学史には「房中(ぼうちゅう)」が全盛をきわめる時代がいくつかある。これは、自己の精力を蓄えて生命エネルギーに転換し、不老の目的をも達しようとする性交技術のことで、これがさらに神仙系の医学と手を結び、いろいろな病変を房事(ぼうじ)(夫婦の交わり)で治療するという発想に発展する。漢代ごろにはじまり、最全盛期は楊貴妃(ようきひ)や玄宗(げんそう)皇帝が活躍する唐代である。古代中国医学としては邪道であるが、それだけに、性に関する分析は鋭く、さまざまな用語が残されている。
たとえば、陰痿(いんい)(勃起不全)・房労失精(ぼうろうしっせい)(オナニーや房事過多で精がもれる)・早泄(そうせつ)(早漏(そうろう))・陽不起(へのこたたず)(勃起不全)などは一時的現象をあらわし、遺精(いせい)(精液をもらす)・夢遺(むい)(夢精)・精滑(せいかつ)(夢をみずに、快感も勃起もなく、精液をもらす)・夢交(むこう)(未亡人などが性交の夢を見る)などは慢性的な症状で、虚弱体質の人に多い。
現在でも用いられている処方のみをあげよう。
精力減退に効果的な漢方薬
八味丸
老人で、手足が冷え、疲労倦怠感が強く、しかも胃腸は丈夫で、口が乾く人に使う。この処方は、最近では精力回復剤の万能薬のようにマスコミでもてはやされているが、初老以後にしのか用いられない。強精薬のつもりで青年が服むと鼻血が出てのぼせ、食欲もなくなり、げっそりやせてしまうことがある。なにしろ、この処方は附子剤なのである。
柴胡加竜骨牡蛎湯
これは、青年の陰痿・房労失精・早泄によい。目標は、ガッチリした体格で腹力も脈力もあるが、便秘ぎみで、意外に神経過敏、不眠で、夢をよく見る、のぼせる、肩こり。
桂枝加竜骨牡蛎湯
これも青年でも可。自覚症状は右に似ているが、便秘はなく、体力はやや弱
く、内気で、おどおどしやすい人に。女性の夢交にも効果がある。この二処方の精力減退に関する記述は、古典の『金匱要略』にも見られる。
鹿茸大補湯(ろくじょうたいほとう)
身体が衰弱して、貧血ぎみの、中年以後の虚労の人によい。
補中益気湯
過度の精神疲労や体力消耗があり腹力がなく、腹がやわらかで、寝汗・食欲不振に。
当帰芍薬散
これは女性の性感を高める処方である。貧血ぎみで疲れやすい、顔色がすぐれず、めまい・肩こりがあり、足腰が冷える人に。
民間療法
イカリソウ(淫羊藿(いんようかく))の葉か茎二〇グラムを一日量とし、約五〇〇ccの水で半量に煎じつめたものを、毎食前三〇分に飲む。あるいはイカリソウを酒に一か月ほどつけ、布でこしたあと、ハチミツを入れ、少量ずつ飲むのもよい。