発熱に対する8種の漢方薬と使い分け
- 2017/1/30
- 症状別の漢方
発熱は、感染などの原因により体温調節を司る脳の視ど症床下部が刺激されることによって現れる全身症状です。発熱によりふるえが出たり、高熱のせいで意識がもうろうとすることもあります。
高熱が出る病気には、感染症、悪性腫瘍、膠原病、アレルギー性疾患、血液の病気、内分泌・代謝の病気などがあります。原因が判明しないのに三七~三八度の熱が続く状態を不明熱といいますが、倦怠感、食欲不振、不眠、頭痛、下痢などの症状をともなうことがあります。
目次
発熱に対する近代医学的な診断と治療について
発熱のしかた、時間的経過や推移、発疹や悪寒、胃腸症状、めまいなどの随伴症状の有無、既往歴についての問診、診察のほか、血液検査、尿や便の検査、X線検査などを行い、原因が判明しないときは、さらに精密検査が行われることもあります。発熱の原因が感染症であれば抗生物質が用いられるように、原因となる病気に合わせた治療を行います。
発熱に対する漢方での診断と治療とは
漢方でいう「熱」は、必ずしも体温の上昇をともなうものではなく、熱感を訴える場合も「熱」ととらえます。逆に、体温が上昇していても、熱感をともなわずに寒がる場合は「寒」といいます。
身体の表面に熱感が自覚され、体温の上昇がある場合を発熱、熱がからだの内に隠されて表面に現れることが少ない場合と体温の軽度の上昇の場合をおお微熱ととらえます。また、このような熱の状況に加えて重ね着をしてもゾクゾク寒けを感じる状況を悪寒といいます。発汗の有無などにより、病気の状況を判断してさまざまな処方を使い分けます。
実証
黄連解毒湯(おうれんげどくとう)
のぼせぎみで赤ら顔、目の充血、不眠、頭痛、動悸、いらいら、めまい、口の渇き、吐き気などがある人に用いられます。
葛根湯(かっこんとう)
自然発汗がなく、頭痛、寒け、肩,・背にゾクゾクした感じをともなう人に用いられます。
白虎加人参湯(びゃっこかにんじんとう)
高熱、のどが渇く、発汗が激しい、多尿、顔がほてる、手足の冷えなどの症状がある人に用いられます。
虚実間証
柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
みぞおちや脇腹付近の圧迫感や痛み(胸脇苦満)、寝汗、頭痛、吐き気などの症状がある人に用いられます。
小柴胡湯(しょうさいことう)
かぜ、熱感、寒け、みぞおちや右脇腹付近の圧迫感や痛み(胸脇苦満)、舌苔(舌の表面の白い苔)、口が苦い、悪心·嘔吐などがある人に用いられます。
虚証
桂枝湯(けいしとう)
かぜの初期、頭痛、悪寒、関節痛、自然発汗、体力の衰えなどをともなう人に用いられます。
香蘇散(こうそさん)
胃腸虚弱、頭痛、みぞおちのつかえ、不安、不眠、食欲不振、吐き気、胃内停水(胃のあたりをたたくとピチャピチャという振水音がする)などをともなう人に用いられます。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうどう)
顔色が悪い、冷え、貧血、口の渇き、尿量減少、食欲不振、軟便、動悸、息切れなどの症状がある人の微熱に用いられます。
発熱によく使われる漢方薬処方一覧
処方名 | 証 | 漢方的特徴(自覚症状) | 使用上の注意と参考事項 |
黄連解毒湯 | 実証 | 比較的体力がある人の、のぼせ、肩こり、不眠症、イライラ、かゆみ、めまい、動悸など | |
葛根湯 | 実証 | 頭痛、発熱、悪寒、肩、背中のこりがあり、発汗がない人のかぜ、扁桃炎、神経痛、じんましんなど | 胃腸が虚弱な人、体力が弱っている人、発汗過多、食欲不振、高齢者、高血圧、狭心症などの心臓病がある人、高度の腎臓病の人、交感神経刺激剤を併用する人には慎重に用いること。低カリウム血症などによる偽アルドステロン症(副作用) |
白虎加人参湯 | 実証 | 糖尿病や暑気あたりによる高熱、のどの渇き、発汗、多尿、ほてり、手足の冷えなど | 甘草、グリチルリチン酸およびその塩類を含む製剤との併用注意 |
柴胡桂枝湯 | 虚実 間証 |
自然発汗があり、微熱、悪寒、胸,脇腹の圧迫感、頭痛、関節痛など | 甘草含有製剤との併用注意。副作用に間質性肺炎による発熱や呼吸困難、発赤やじんましん、膀胱炎などの症状が出ることがある |
小柴胡湯 | 虚実 間証 |
体力が中程度の人の、上腹部の張り、舌苔、食欲不振、微熱、悪心、肝機能障害など | インターフェロン製剤を使用している場合、肝臓の疾患がある場合は、間質性肺炎などを引きおこすことがあるので併用不可 |
桂枝湯 | 虚証 | 自然発汗、微熱、悪寒、かぜの初期など | |
香蘇散 | 虚証 | 胃腸が弱い、神経質な人のかぜの初期など | 低カリウム血症などによる偽アルドステロン症(副作用) |
柴胡桂枝乾姜湯 | 虚証 | 血色が悪い、微熱、発汗、不眠症、疲労、倦怠感、食欲不振、動悸、尿量減少、神経症など |
まとめ
以上が発熱に対する8種の漢方薬と使い分けでした。用法、用量を守って正しくお使いくださいませ。発熱といっても、その原因は多種多様であり、的確に症状を把握して、それに対して適切な漢方薬を選択することが重要です。
自分の身体と対話しつつ、自分に合った漢方薬を選びましょう。