命とりになることはない
男性で最高血圧が一〇五以下、女性で一〇〇以下なら、低血圧である。ことに最高血圧が八〇以下になると、からだがだるくなり、立ちくらみがして生活ができなくなる。
もっとも、低血圧が高血圧ほど問題にされないのは、これが命とりになることはないからである。むしろ「血圧が低い人は長生きする幸せな人だ」という医者もいるくらいである。なお、低血圧症という病名はない。
目次
低血圧の症状
一般に、血圧の低い人は無力体質で、神経質な人に多く、ふだんの活動能力がどうしても弱くなる。そのため、疲れやすい、立ちくらみや脳貧血を起こしやすい、手先や足先が冷える、ちょっとしたことで息切れがする、朝起きるのがつらいといった症状が出やすい。あるいは、頭痛・頭重・耳鳴り・食欲不振・便秘または下痢・生理不順などが起きることも多い。
しかも、血圧が低いことで悩む人は、今あげた症状が三つも四つも重なって起きるから、ご当人としては深刻にならざるを得ないのである。
いわば、半健康のデパートみたいなものなのだ。
原因
多くは体質的なもので、これを本態性(ほんたいせい)低血圧という。しかし、低血圧が病気の一症状としてあらわれる場合もあり、これを症候性(しょうこうせい)低血圧とよぶ。慢性の病気で全身が衰弱しているとき、胃かいようなどの大出血、粘液水腫、アジソン病、シモンズ病、栄養失調などである。症候性のものの場合は、原病を治療することで、低血圧も正常にもどる。
漢方は自覚症状を好転させる
高血圧とはちがって、半健康の状態だから、積極的に漢方を使用してかまわない。体質改善をはかる目的もあるが、自覚症状を取り去ることができれば、必ずしも血圧が上昇しなくてもよいのは高血圧の場合と同様である。
低血圧におすすめの5つの漢方薬
真武湯(しんぶとう)
虚弱体質で、疲れやすく、下痢ぎみ、めまい、手足の冷えをおぼえ、貧血ぎみの人に。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
貧血症の人で、胃下垂などがあり食欲不振、疲れやすく、元気のない人に。
半夏白朮天麻湯(はんげはくじゅつてんまとう)
胃下垂などで、食事をすると眠くなり、頭痛とめまいをともなうものによい。
ところで、この処方は「血圧が高い」の項にも登場した。これは、血圧が異常な状態になっている体質を治すということで、処方が両方にまたがっても決して不思議ではない。そして、このことからも、漢方薬がたんなる血圧降下剤・上昇剤でないことがおわかりいただけるだろう。
当帰芍薬散
めまい・貧血・どうき・頭重があり手足が冷える、生理不順の女性に用いる。
当帰芍薬加附子湯
上よりも症状が強い人に。
タンパク質と脂肪を多くとる
血圧が低くても、なんの自覚症状もない本態性のものは、まったく心配ない。症状が強くあらわれる場合には、まず精神の安定をはかり、食事はタンパク質と脂肪が多く、消化のよいものをとるようにする。刺激の強い食品や酒・タバコは避けたほうがよい。適度の運動も必要である。
なお、高温になると、血管が弛緩し、血圧は低くなる。低血圧の人が夏に弱いのはこのためだ。