生理不順は女性の宿命的な苦しみ
生理不順、生理異常、あるいは月経異常といわれるものには、次のようなものがある。
目次
生理不順の種類
早発(そうはつ)月経
初発年齢が極端に早く、十歳以前にあらわれる場合。卵巣(らんそう)・下垂体(かすいたい)などの腫瘍が原因のことが多い。
晩発(ばんはつ)月経
十八歳をすぎても、初潮がみられない場合。卵巣の発育不全が多いが、栄養不足・心臓病・結核・梅毒、あるいは鎖陰(さいん)などのことも。
無月経
生理的なもの(心配のない無月経)と病的なものがある。これについては後述する。
過少月経
月経の量がきわめて少ないもの。
稀発(きはつ)月経
三か月に一度とか、四か月に一度しか月経がないもの。過少月経とともに、卵巣機能不全のことが多い。現代医学的には、ホルモン療法を主体とし、ときに物理療法や手術を行う。
頻発(ひんぱつ)月経
月経の間隔がひじょうに短いもの。
過多月経
月経の量が異常に多いもの。頻発月経とともに、月経過剰症ともいう。
月経困難症
その最中や前後にさまざまな障害があらわれるもの。くわしくは、後述する。
いずれの場合も、正確に原因をつかんでおかなくてはならないから、医師(婦人科)の診察を受けておくことが大切である。
無月経の症状と原因
妊娠中や産後、授乳中の無月経は生理的なものである。また、月経は環境の変化、精神的なショックなどで一時的にとまることもあるが、これは生理的とはいえないが、病的ともいえないので、心配はいらない。
ふつう病的な無月経というのは、子宮の病気や異常・卵巣の故障・ホルモン分泌の異常、あるいは先天的なものによる場合をいう。現代医学の治療は、ホルモン療法(卵胞ホルモンや性腺刺激ホルモンなどを使う)を主体とし、必要に応じて物理療法や手術などを行う。
過多月経の症状と原因
出血量の多少はかなりの個人差があり、cc以上なら過多というぐあいに、一概にいうことはできない。ちなみに、平均的な出血量は一〇〇cc前後である。少なくとも貧血などのさしさわりがあるかどうかが問題になる。
ことに月経が不規則で、たえず出血する場合は、量の多少にかかわらず子宮ガン、その他の不正出血を疑う必要がある。そのほか、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)・子宮の位置異常・ホルモン分泌の異常・便秘・骨盤内のうっ血などが考えられる。
現代医学的には、原因療法ということになるが原因不明の場合でも、貧血をともなうのがふつうなので、鉄分を多くとるようにする。
月経困難症の症状と原因
主な症状には、下腹部痛・頭痛・頭重・乳房や腰の痛み・不快感・だるさ・めまい・便秘・下痢・肩こりなどがあるが、人によっては乳房がしこったり、お腹が張ったり、にきびが増えることもある。あるいは、興奮しやすい・イライラする・不安感・ふさぎこむなどの神経症状も少なくない。
病的な原因としては、子宮筋腫・子宮発育不全・子宮後屈・子宮前屈などの子宮の炎症や異常、卵巣機能の不全、卵管の炎症などのほか、ホルモン分泌や自律神経の異常も関係してくる。
なお、月経困難で生活にさしさわりがあるときでも、鎮痛剤やホルモン剤の乱用は避けるべきだ。使用法を誤るとかえってよくないからである。
漢方は典型的な瘀血症
昔から月のさわりとして、女性の宿命的な苦しみと考えられてきたが、漢方ではすでに述べたように、月経そのものを瘀血(古い血のたまったもの)としてとらえている。つまり、生理不順や異常は、典型的な瘀血症である。
原因がはっきりしている場合は、原病を治療するのが先決だが、この症状は原因不明のことが多く、いわゆる半健康の状態なのである。それだけに漢方では得意の分野であり、またホルモン分泌異常や自律神経失調によるものにも有効である。
生理不順に効果のある漢方薬
四物湯
貧血の傾向がある人の無月経に。子宮発育不全や卵巣機能障害があってもよい。
加味逍遙散
体質虚弱で、貧血性の無月経に。不眠・不安があって、気分すぐれぬものにも可。
十全大補湯
病後の疲労による無月経に。長期の授乳で衰弱して、月経がない場合でもよい。桂枝茯苓丸
無月経・月経過多・月経困難に一般的に用いられる。目標は、比較的体力があり、のぼせやすく、手足が冷え、肩がこり、鼻血が出やすく、顔に赤みが多いなど。
桃核承気湯
上の症状で便秘するものに。
温経湯
体力がなく、冷え症、手足のほてり、くちびるの乾きのある人に用いて効果がある。
柴胡桂枝湯
下腹部に圧痛はなく、肋骨の下に圧痛があり、腹直筋がつっぱっているような人に。
当帰芍薬散
無月経・月経困難に広く用いられる。目標は、貧血ぎみで、顔色わるく、手足が冷え、頭痛、めまいを起こしやすい人に。
当帰芍薬加附子湯
上よりも冷えが強い人に。
半夏厚朴湯
精神不安などから無月経になりやすい人、月経時に神経症状を起こしやすい人に。想像妊娠の場合にも用いられる。目標は、胃腸が弱く、のどに異物感があるなど。
生理痛体操も有効
月経直前から月経中の数日間は、ふだんより体調に気をつけ、規則正しい生活、じゅうぶんな睡眠を心がけ、心身の疲労を避ける。
生理痛は、骨盤内の充血と子宮筋の収縮によって起こるから、マッサージや体操が有効である。
生理痛体操は、次のように行う。
①あおむけになり、膝を曲げ、腹式呼吸する。
②両足を広げ、左足をゆっくり上げて左手でつかむ。手を放して足をゆっくり下げたら、右足も同じようにする。これを交互に数回繰り返す。
③あおむけのまま、両膝を抱きかかえ、腰までつけるようにする。これを数回繰り返す。
民間療法
モモの種子(桃仁(とうにん)=漢方の桃核承湯の主剤)一〇グラムを一日量として煎じて飲む。クロゴマをすり、一さじ分を茶わんに入れ、お茶を注いで、熱いのを飲むのもよい。