menu

悪心や嘔吐に二陳湯(にちんとう)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

「二陳湯は悪心や嘔吐によく使われます」

処方のポイント

痰を除き嘔吐を止める半夏、消化器と呼吸器を活性化する陳皮、消化器周辺の水分停滞を解消する茯苓、消化器を賦活する生姜・甘草で構成。悪心、嘔吐、食欲不振等の消化器症状、淡白な痰が多くでる等の呼吸器症状に適応。頭のふらつき、動悸等にも。甘辛味で、温服が効果的。

二陳湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

悪心、嘔吐。

漢方的適応病態

肺胃の痰湿、すなわち、白色で多量の喀痰、咳嗽、あるいは口がねばる、悪心、嘔吐などの症候で、めまい感、動悸、不眠などを伴うこともある。

二陳湯の組成や効能について

組成

半夏9陳皮9茯苓6生姜3炙甘草3

効能

燥湿化痰・理気和中

主治

湿痰咳嗽・脾湿気滞

◎燥湿化痰:水湿を乾燥させ除去する治法である。、痰が多い咳嗽によく用いる。

◎理気和中:気の流れをよくして、中焦脾胃の調子を整える治法である。痰湿の停滞によっておこる気滞(特に中焦脾胃の気滞)によく用いられる。

解説

二陳湯は痰湿を取り除く基本処方である。痰湿による咳嗽および脾胃の症状に広く用いられている。

二陳湯の主薬である半夏と陳皮の2薬はともに陳(古い)のほうがよいとされるので、「二陳湯」と名付けられた。

適応症状

◇白い痰が多い

痰湿の停滞によって現れる症状である、「脾は痰を生む源」で、脾が虚して水湿を運化できないと痰が生じる。痰がまだ熱に変わっていないので、色は白い。湿は痰より粘稠度が薄く、痰は湿より濃いが、臨床では区別できないことが多い。

◇咳嗽

痰湿が気の流通を阻害し、痰と気が一緒に上逆することによっておこる肺の症状である。

◇胸胃脹満

痰湿が停滞して胸胃部に気滞が生じた症状である。脹は気滞によって、満は痰湿の停滞によって現れる。

◇悪心・嘔吐

痰湿が胃の和降機能を乱し、痰湿と胃気が上逆する症状である。

◇眩暈

濁った陰邪である痰が上逆して、清陽の集まる頭部を乱した症状である。

◇舌苔白潤

病因の痰湿は陰邪で、寒性であることを示す舌象である。

◇脈滑

痰湿が多いときにみられる脈象である。

半夏は燥性が強く、湿痰を除去して咳をしずめ、同時に嘔吐を止める。陳皮とともに本の主薬である。陳皮にも痰を除去する作用があるが、芳香性による理気作用が強く、痰湿による気滞の胸胃脹満を治療する。茯苓と炙甘草はともに脾胃の運化機能を強めて、痰湿の発生を防止する。茯苓は滲湿利水作用も強く、中焦に停滞した痰湿を尿にかえて排出し、半夏、陳皮の化痰作用を増強する。生姜は半夏の化痰·止嘔作用を増強する。二陳湯を煎じる際、中国では烏梅一個を入れる習慣がある。酸味の烏梅と甘味の甘草によって酸甘化陰で陰を増やし、半夏と陳皮の燦性を穏やかにする意味がある。

臨床応用

◇湿痰咳嗽

二陳湯は咳嗽、痰の症状を治療する基本方剤である。臨床では、気管支炎などの咳嗽、痰に多く使用する。二陳湯は特に痰が多い症状に適しているが、痰の性質によって次のように加減する。

◎寒痰(痰が薄く、白い)のとき+「苓甘姜味辛夏仁湯」(温肺化飲)

  または+「真武湯」(温陽利水)

  または+乾姜、桂枝、附子(散寒化飲)

◎熱痰(痰が黄色く、濃い)のとき+「竹茹温胆湯」(清熱化痰)

  または+「柴陥湯」(清熱化痰)

  または+栝蔞、黄芩、竹茹(清熱化痰)

◎気痰(胸悶、胃脹)のとき+「半夏厚朴湯」(理氣化痰)

  または+「四逆散」(理気疏肝)

  または+厚朴、香附子、枳殼(理気除脹)

◎食痰(嘔吐、ゲップ苔膩)のとき+神曲、山楂子、萊菔子(消食開胃)

  または+焦三仙(麦芽、神曲、山楂子)(消食化滞)

◇胃炎、胃・十二指腸潰瘍

胃と十二指腸の病変で、悪心、嘔吐、脹腹、胃痛などの痰湿停滞症状をともなうときに用いる。

◎胃痛が強いとき+「安中散」(温中散寒、止痛)

◇眩暈

痰濁上逆による眩暈に用いる、苔が厚く、悪心をともなうときに適している。場合によっては「半夏白朮天麻湯」(健脾化痰、止眩)を併用してもよい。臨床では、メニエール症候群に多く用いられている。また脳卒中後遺症で喀痰が多い、舌苔が厚い、眩暈などの痰湿症状がみられる場合も使用できる。

◇肥満症

痰湿停滞による肥満症には化痰燥湿作用が利用される。

◎にきび便秘をともなうとき+「防風通聖散」(解表、瀉熱、通便)

異常な水液を取り除く基本処方

気管支炎や胃炎、食欲不振などに使用

水は生きていく上で欠くことができないが、時として体内に滞留し、体調に影響を与えることがある。特に現代のように西洋化した食生活、過度の栄養摂取や飲酒、運動不足が日常化すると、過剰な水液が体内にたまりやすくなり、さらにストレスの影響でその流れが滞る。その結果、体内に水液が停滞し、様々な病気や症状が生じる。一陳湯は、この異常な水液を取り除くための基本処方である。

どんな人に効きますか

二陳湯は、「湿痰(しつたん)」証を改善する処方である。

湿痰は痰飲の一種。痰飲とは、水液代謝の病理産物のこと水液の代謝が正常に行われなくなると、水液が滞留し、痰飲が生じる。粘稠な性質のものを痰、さらさらしたものを飲として区別する場合もある。正常な水液は津液(しんえき)であり、人体に必要な基本物質であるが、水液が停滞して体内に貯留すると痰飲となり、人体の正常な生理活動の邪魔をして、心身に好ましくない症状が表れることになる。

痰飲には、その性質により、湿痰、熱痰、燥痰、寒痰、風痰などの種類がある。このうち、痰が白色で多く、喀出しやすい、咳が出る、胸苦しい、吐き気がする、嘔吐、めまい、動悸、手足がだるい、白い舌苔がぺとぺと、あるいは粘っこく付いている、など湿っぽい症候を伴う場合の痰飲を、湿痰という。

湿痰は、五臓の脾と肺の機能失調と関係が深い。脾の機能失調により痰がたまり、肺の機能が侵される。気道での分泌が増大し、咳や痰が出る。湿痰の増加は清陽の流れを阻害するので、めまい、動悸が起こる。胃の機能も失調し、吐き気、嘔吐、腹部膨満感が生じる。水湿が体内にたまることにより、手足がだるくなる。「痰は万病のもと」ともいわれており、痰飲証が引き起こす症候は多い。

臨床応用範囲は、慢性、急性気管支炎、肺気腫、慢性、急性胃炎、胃、十二指腸潰瘍、妊娠悪阻、心因性嘔吐、食欲不振、消化不良、胃下垂、二日酔い、不眠症、帯下など。白色の痰が多くて喀出しやすい、白い舌苔がべっとり、あるいは粘っこく付着している、といったところが証判断の押さえどころである。

どんな処方ですか

配合生薬は、半夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜の五味である。

半夏は君薬として燥湿化痰(そうしつけたん)、降逆和胃(こうぎゃくわい)する鎮咳作用もある。臣薬の陳皮は燥湿祛痰して半夏を助け、さらに気を巡らせて痰を消失させる。半夏と同様、制吐作用もある。胃腸の蠕動も助ける。

痰は脾から生まれる。そこで佐薬の茯苓が健脾滲湿(けんぴしんしつ)して脾の機能を調え、痰の生成を抑える。同じく佐薬の生姜も脾胃に作用して降逆化飲し、かつ半夏の毒性を制しつつ、半夏と陳皮の行気消痰作用を助け、和胃止嘔する。

甘草は使薬として諸薬の薬性を調和し、潤肺和中(じゅんぱいわちゅう)する。本来は陳皮の代わりに橘紅(きっこう)が使われ、さらに烏梅(うばい)も配合されている。烏梅は佐薬として収斂作用を持ち、正気の消耗を防ぐ。

以上、二陳湯の効能を「燥湿化痰、理気和中」という。「陳」には古いという意味がある。半夏と陳皮は古いものほど良質とされており、よってこの名がある

痰飲発生の根本には、脾の機能低下がある。従って痰飲の治療には、まず健脾が必要。健脾せずに痰飲を除去しようとしても、ガス漏れを直さずに部屋の換気をするようなもので、きりがない。

津液は、気とともに体内を流れる。従って気を巡らせることも痰飲の除去には必要。多くの場合、痰飲の治療には理気薬が配合される。風が吹いていてこそ、窓を開けて部屋の換気ができるのである。

こうして化痰、健脾、理気の3つの働きをコンパクトにまとめた処方が二陳湯である。これ1つでガス漏れも直し、部屋の換気もできる。邪魔な湿痰を取り去るという「標治14]と、健脾して生痰のもとを絶つ「本治」の両方に配慮した秀逸な処方といえる。

二陳湯は、多くの方剤に組み込まれている。脾気虚証があれば六君子湯を使う。これは二陳湯に人参、白朮、大棗を加えた処方である。不眠、驚きやすい、いらいらなどがあれば温胆湯(うんたんとう)を用いる。これは二陳湯に清熱効果が加味されたような処方である。めまいが強ければ、二陳湯が基本となる半夏白朮天麻湯を飲む。嘔吐が激しい場合は五苓散を合わせる。上腹部膨満感や食欲不振が顕著なときは平胃散を併用する。

二陳湯から陳皮と甘草を除くと小半夏加茯苓湯(しょうはんげかぶくりょうとう)になる。二陳湯は痰や咳など肺の症候に、小半夏加茯苓湯は嘔吐など胃の症候に使うことが多い。

なお二陳湯は燥性が強いため、空咳が出る、痰がからみやすく粘っこい、痰に血が混じる、など陰虚証の人には使わない。

こんな患者さんに

不眠症で、なかなか寝付けません。ストレスで過食気味です

湿痰が邪魔をして、昼から夜へという自然な変化に体がついていかない。陽から陰へとスムーズに心身の状態が変わらず、いつまでも目がさえている。二陳湯で燥湿化痰し、不眠症を改善した。

息子が小児喘息です。ひどいときは咳込みます

虚弱体質で胃腸が弱く、かぜを引きやすい。脾気虚の湿痰とみて二陳湯を使用。1年飲み続けてもらったところ、すっかり丈夫になった。

咳込むときは麻杏甘石湯を併用した。

用語解説

1)痰といっても気道から分泌される粘液ではなく、もっと広い概念。

2)痰飲は脾で生まれ肺に蓄えられるので、脾は「生痰の源」、肺は「貯痰の器」と呼ばれる。

3)清陽とは、陽気つまり気の正常な上昇のこと。脾胃において飲食物から得られた気が上昇(清気、清陽)して体内を巡り、老廃物が下降(濁気、濁陰)して排泄されていれば、健康、昇清をつかさどるのは脾、降濁をつかさどるのは胃。

4)燥湿化痰とは、湿痰を除去すること。

5)降逆和胃とは、胃気の逆上を緩和すること。

6)化飲とは、痰飲を除去すること0

7)生の半夏には催吐、咽喉刺激。失声、嗄声などの弱い毒性がある。これらは生姜と合わせ煎じると消失し、逆に制吐作用が残る。

8)潤肺和中とは、肺を潤し、中焦つまり脾胃の機能を調えること。

9)陳皮は蜜柑の皮で、橘紅はその外層部分のみ陳皮は理気燥湿に優れ、橘紅は化痰作用が強い。

10)人体の持つ健全な生命力を正気という。正気は邪気と相対して人の健康を維持する。二陳湯の場合は、正気の一部である体液を半夏が燥湿し過ぎる恐れがある。これを烏梅が防ぐ。

11)健脾は、脾の機能を立て直す治療法。

12)津液や血(けつ)を体内で巡らせる働きを、気の推動作用という。

13)理気とは、気の巡りを良くする治療法。

14)病変の本質が「本」で、外に表れる症状が「標」。体質改善など根本治療が本治で、対症療法が標治。本治も標治も大事だが、標治だけでは病気は繰り返す。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

*

ピックアップ記事

  1. 【期間限定無料】推奨漢方判定フォーム

  2. 憂鬱・不安感がある方に効果的な漢方薬4種

  3. 生理不順に効果のある9種類の漢方薬

ページ上部へ戻る