原因のないケースが多い
大人の睡眠時間は八時間が理想といわれるが、これはあくまでも平均値で、個人差がある。要は、量(時間)の問題ではなく、質(眠りの深さ)の問題ではなかろうか。
いわゆる不眠症といわれる人の場合、眠らないとからだによくないとあれこれ考え、むだな神経を消耗させるのが特徴で、実際はけっこう眠っているものだ。ただ、眠りが浅いだけなのである。ただ、眠りが浅いだけなのである。そして、これといった原因がないのがふつうである。こうした人は、なるべく薬にたよらないほうがよい。
目次
よく眠れない場合に考えられる病気
けれども、高血圧症・動脈硬化症・心臓病・呼吸器の病気・痛みやかゆみがはげしいとき・下痢や嘔吐がつづくとき・更年期障害などの場合は、病的な状態で眠れなくなる。むろん、原病の治療が先決である。
漢方は副作用はないけれど
現代医薬の中には、サリドマイドのように社会問題になったものもあり、睡眠薬を用いる場合は副作用が心配である。その点、漢方は証があっていれば安心して使用できるのだが、漢方薬といえ ども薬であるから、できれば服まないで治したほうがよいのはいうまでもない。
よく眠れない時に効く6つの漢方薬
黄連解毒湯
のぼせて、気分がイライラし、頭がさえて寝つかれない、赤ら顔の人に。
三黄瀉心湯
上の症状で、便秘ぎみのものに。
柴胡加竜骨牡蛎湯
上腹部が膨満し、ものにおどろきやすく、へその部分に動悸があり、便秘の傾向があって、熟睡できないものに用いる。
酸棗仁湯
疲れていて、しかも眠れない、虚証の人に用いる。下痢をしている場合はいけない。処方名の酸棗仁(さんそうにん)は、サネブトナツメの実の種子で、不眠に効があり、民間的にもよく使われる。
加味帰脾湯(かみきひとう)
ふだん胃が弱く、疲れやすく、貧血ぎみの人の精神過労が原因の不眠に効く。
加工(かこう)ブシ末(まつ)
劇薬の附子(トリカブトの根)を無毒化したものだが、不眠症一般にも効がある。「アコニンサン」の商品名で売られている。
薬を使わずに熟睡できる方法
まず、睡眠を司どる大脳を適当に疲労させるよう、昼間の仕事や勉強を充実させることである。ただし、疲れすぎてもよくないので、寝る前に軽い体操をするとか、ぬるま湯に入るとよい。
そして、早く寝て早く起きることだ。人間のからだは、昼間目をさまして働き、夜は休んで眠るように生活のリズム、バイオリズムができているからである。これは、交感神経と副交感神経の働きなのである。
寝具にも気を配りたい。ベッドならクッションはほどほどに、あまりからだの沈まないものを。ふとんなら下にマットレスを敷いて、健康に寝がえりがうてるようにする。
眠っているときは消化器も休んでいたいから、むしろ空腹状態のほうがよい。その意味で、夕食は就寝前散~四時間ぐらいが理想的である。
なお、「眠らなければいけない」という緊張感がいちばんよくない。眠れないときは「よし、朝まで起きていよう」というくらいの開き直った気持ちでいると、いつのまにか眠れるものである。