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漢方医学の基礎、基本的な考え方とは

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医者漢方医学の基本的な考え方には、液体生理学、液体病理学といわれる「気・血・水」「五臓六腑 」「経絡」「表裏」「陰陽」「虚実」「寒熱」という考え方があります。

じつは、こうした言葉がわかりにくいのが伝統的東洋医学の難点になっています。また「陰陽」や「虚実」といっても、学派により、その意味が異なります。

 

 

体質、病状の基本は証

漢方医学での大切な考え方として、「証」があります。これは、鍵と鍵穴の関係によく似ています。人間は一人一人からだやこころの状態。病態がちがいます。その漢方薬がその患者さんの状態や病態にぴたりと合ったときにはじめて治療ができる、という考え方が「証」を診るということにつながっています。伝統的東洋医学は「証」にしたがって治療を行うこと(随証療法)をもっとも大切にしています。「証」とは、患者さん固有のからだとこころの状態でもあり心理、社会的な状態までも含んだ生きざま(生活習慣)でもあります。いわば、患者さんを全体的に包括した概念を「証」というと考えてよいでしょう。人は、生まれた環境も生活習慣も食べ物の好みもすべて異なっています。そのちがいを大切にしようというのが伝統的東洋医学の基本的概念です。現代医学は病名療法であり、診断がつかなければ治療ができません。また、診断がついても、必ずしも治療ができるとは限りません。ところが、漢方医学は、その患者さんの「証」さえわかれば、たとえ難病であろうが、かぜであろうが、不定愁訴(はっきりしない症状)であろうが、「証」によって、その患者さんに使うべき薬(漢方薬)が決まります。

病気は「血・気・水」の異常で起こる

「気」とは人間を生かしているエネルギーのようなものです。その機能すなわち、作用やはたらきはありますが、残念ながら目には見えません。よく「病は気から」 「元気」とかいいますが、本来「病は気から」というのは、人間を生かしているエネルギーのような「気」というものの巡りが悪くなり、そのために病気がおこってくることで、ふつう日常でいわれている「病は気から(気のせいでおこる)」とはニュアンスがちがいます。また、「元気」というのは、その人が生まれつきもっている「元の気」ということです。「元気をとりもどす」という言い方がありますが、病によって「気」がそがれてしまっている状態、「気」の巡りが悪い状態、それを元にもどすことを意味します。ツボとツボを結んだ線を経絡といいますが、「気」は、経絡にそってからだを巡っています。こうしてエネルギーが全身に行き渡っていきます。「気」が下から上へ突き上げてくることを気逆(期の上衝)といいます。更年期の女性が「のぼせる」とよくいいますが、下半身は冷え、上半身がのぼせる、これが気逆です。こうした症状は、現代医学では治療する方法があまりありませんが、漢方医学では桂枝や薄荷を上手に使えば、これをコントロールできます。
また、元気に対し、「気」が不足している状態を気虚といいます。補中益気湯などの気を補う漢方が使われます。

「血」とは、気によって巡らされている赤い液体で、栄養をつかさどり、外。内因からからだを守るものです。したがって現代医学的に考えると、まず血液そのものです。それから自律神経系、内分泌系、免疫系という、からだを巡ってからだを守っている恒常性でもあります。さらに、血液循環(血行動態)そのものでもあります。したがって、この「血」の概念は非常に大きいものといえます。「血」の不足している状態を血虚といい、これはまさに貧血のことです。こういう場合は、四物湯という、漢方薬がよく使われます。逆に血液が多すぎて充血しているような状態を血実といいます。

瘀血

「血」がスムーズに流れず滞っている状態を「瘀血」といいます。「瘀血」というのは、漢方医学では非常に重要な概念です。なぜなら、瘀血はすべての病気の根源であるからです。また「健康で長寿」というすべての人の願いを実現させるために、未病を治すこと、すなわち病気を未然に治療しようというとき、瘀血の概念はたいへん有用です。もちろん、瘀血があるから〇〇という病気がある、と断定することはできません。そのためには、現代医学的な分析的な診断が有用です。しかしながら、瘀血が進行している場合、なにか恐ろしい病気が切迫していることはまちがいありません。なぜなら、健康な人に瘀血はないからです。健康で長寿を願うなら、瘀血の概念を忘れることはできません。

痔があるか月経異常があるかは、患者さんに聞けばわかります。つまり検査をする必要はありません。逆にいえば、瘀血のことを患者さんに教えれば、患者さんは自分で瘀血を診断することができます。

瘀血は、病気が未完成のとき(未病のとき)にも現れてきます。現代医学的には、まだ十分診断がつかない時期、すなわち十分に病気ができあがっていない状態でも、瘀血を診ることによって、その人の病気が進行していることを知ることができます。

どうして瘀血がおこるのか

基本的には、瘀血のおこりやすいような遺伝的素因があります。私たちは、長い人生を生きていると、いろいろな生活習慣をとります。偏った食事、飲み過ぎ、食べ過ぎ、運動不足、たばこ、睡眠不足、持続した緊張、こういったことがあたりまえの生活になってきます。さらに、外傷丶手術、感染症、ステロイドホルモンなどのある種の薬物の使用やストレスが関係してきます。こうした多要素があいまって、その人の生活習慣を形成し、瘀血をおこしてきます。まさにこれは、生活習慣病の発症様式と同じです。実際、瘀血はがん、心筋梗塞、脳血管疾患といった日本人の三大死因と大きく関連しています。

瘀血の治療

まず、私たちの生活習慣を改善しなければなりません。自己破壊的な生活習慣を続けていては、瘀血からは解放されません。どうしたら健康的·生産的な生活習慣をつくることができるかを、その患者さん固有の状況に合わせて探る養生学が重要になってきます。まずは、食べ過ぎ、飲み過ぎ、睡眠不足、運動不足、動物性たんぱくの食べ過ぎといった生活習慣から脱却し、上手にストレスをコントロールし、運動、食事、飲酒、睡眠、排泄といった基本的な生活習慣を健康的なものに変えていきましょう。また、徹底したリラクセーションも必要です。そのうえで必要に応じて、薬物療法を行います。
瘀血の治療薬は、駆瘀血剤といいます。その代表的なものに桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりゅうがん)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)があります。桃核承気湯という薬は、体力のある女性(実証)に、ふつうの体力の女性には桂枝茯苓丸(虚実間証)、体力のない女性には当帰芍薬散(虚証)というように、その人の体力の程度に応じて、すなわち「正」にしたがって漢方薬は使い分けられます。

また、柴胡という生薬の入った漢方薬も駆瘀血剤です。大柴胡湯(だいさいことう)小柴胡湯(しょうさいことう)は有名です。そのほか柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)など、いろいろな処方があります。

現代医学的薬剤のなかにも駆瘀血剤に当たるものがあり、コエンザイムQ 10やビタミンE、EPA (イコサペント酸エチル)などがそうです。

「水」の概念は、中国ではあまりはっきりしていませんでした日本人が江戸時代に明確にした概念です。それは、日本
人に「水」の病態をもった人が多いからでしょうすでに述べたように、「気Lとともにからだ中を巡る赤い液体が「血」ですが、そのなかで「気」とともに巡っている赤くない液体、すなわち体液、分泌液、尿、浸出液などのこ「水」といいます。「水」がたまった状態を水滞、または水毒といいます。
胸水あるいは腹水がたまるというのは、みな水滞のことです。代表的な水滞あるいは水毒は、細胞と細胞の間に水がたまっている状態を示します。たとえば関節リウマチの人には、朝起きたときに手がこわばる、という症状があります。この「朝のこわばり」というのは、朝、まだからだの循環機構が十分にはたらいていないとき、からだの末梢の関節、すなわち手の指の関節周囲に水がたまるためにおこる症状です。したがって関節リウマチという病気は、漢方の概念からみると水滞の病気ということになります。水滞の症状としては、浮腫(むくみ)、腹水、胸水、手のこわばり、胃内停水(みぞおちを軽くたたくとピチャピチャという音がする)、耳鳴り、めまい、たちくらみ、車酔い、吐き気、頭痛、二日酔いなどがあります。
水滞の治療薬はいろいろありますが、代表的なものは五苓散(ごれいさん)、柴苓湯(さいれいとう)で、おもに体力中程度の人に用いられます。五苓散は、関節リウマチなどの治療によく使われますが、二日酔いにも効果があります。柴苓湯は、とくに二日酔いに効き、その予防効果もあります。下肢のむむくみには、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)がよく用いられます。水滞の治療薬の効果は、住んでいる地方により、多少ちがうようです。同じ日本人でありながら、土地柄によって効果のある漢方薬が異なります。これには食べ物など、生活習慣、養生の問題が関係していると考えられます(身土不二)。

病気と抵抗力の強さ(陰陽・虚実)

漢方には、「陰陽」と「虚実」という考え方がありますが、学派によってその定義が異なります。ここでは、できるだけ単純に考えて「陰陽」は病気の強さ、「虚実」は人間一人の体力の強さ、抵抗力の強さ、と考えましょう。

陰陽

陰陽で病気の強さを分けると、強い順から太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病と六種類になります。病気のために、新陳代謝の低下がみられる場合を「陽」の状態、逆に、病気のために新陳代謝の低下がみられる場合を「陰」の状態といいます。たとえば、急性の肺炎では、その初期は熱や汗が出て、息が荒くなり、あちこちの関節が痛みます。これが「陽」の状態ですが、これが進行してくると、徐々にこれらの激しい症状がなくなり、ぐったりしてきます。もっと進行すると下痢などの消化管症状が強く出ます。
これが「陰」の状態です。体力のない高齢者では最初から陰の状態で発病することがあります。病気は「陽」の状態から「陰」の状態へと進行すると考えられています。「陽」の状態のときは瀉剤(冷やす薬、抑える薬)が効果的で、「陰」の状態のときは、補剤(温める薬、持ち上げる薬)が効果的です。瀉剤には黄連や石膏の入った漢方薬がありますが、現代医学的な消炎鎮痛剤(アスピリンなど)や抗生物質、βブロッカーなども一種の瀉剤です。補剤とは、体力や新陳代謝の低下を補う薬剤のことをいい、漢方薬には当帰芍薬散など多くの種類がありますが、現代医学的薬剤には多くありません。

虚実

虚実というのは、その人の体力·抵抗力の強さ、ということができます。プロレスラーのような体格の人は、非常に体力もあり、抵抗力も強くこういった人は実証といえます。方、体力のない、抵抗力の弱い、やせているような人は虚証といいます。しかし、太っている、やせているということだけでは簡単に判定できません。その中間の人たち、体力が強くもなく弱くもない人たちのことを中間証または虚実間証といいます。それらの特徴を右表に示します。

証がわからない壊症

壊病(壊証ともいう)とは、陰陽·虚実の概念に照らしても「証」が決められない状態をいいます。いわば、なんらかの理由で、その人本来の証が崩れてしまった状態です。例をあげると、気管支ぜんそくをもった四五歳の更年期の女性は一八歳のときから長く気管支拡張剤とステロイドホルモン剤を服用し続けていました。この人の主訴は頭痛でした。この患者さんにいろいろな漢方薬を使ってもまったく効果が現れませんでした。

漢方医学では、患者さんを外側から診て診断する、つまり四診によって診断を下し、治療にあたるのですが、証が読み取れませんでした。この人の場合、気管支拡張剤とステロイドホルモン剤を長期にわたって服用していたことが、壊病の原因になったと考えられました。

漢方治療の基本は補・瀉

伝統的東洋医学では、人間は、そもそも丸いバランスのとれたものと考えました。それが長い年月を生きていくなか、さまざまなストレスや病気によって、全体的に大きくなりすぎてしまうことも、また、逆に小さくなってしまうこともあります。また、局所的に大きくなってしまう場合も小さくなってしまう場合も出てきます。私たち人間には、そもそも生まれもった「気」があり、そのちょうどよい発達の度合いのバランスがあります。そのバランスが崩れてしまった状態の把握、つまり、陰陽、虚実の病態を正しく把握し、評価するのが、「証を診る」ことです。全体的に大きくなりすぎたか小さくなりすぎたかまた部分的(局所的)にどこが大きくなりすぎたかどこが小さくなってしまったかを診ることが「証を診る」ことです。その「証」を診たあとの治療の原則は、「陽・実」の人には瀉法を、「陰·虚」の人には補法を行うということになります。たとえば、がんができるということは、局部的には余計なものが飛び出してくるようなものです。がんのように、飛び出した余計なものを切って取り除くことを「瀉」といいます。それとは反対に、なんらかの理由でへこんでしまった、あるいは、不足してしまった部分を補うことを「補」といいます
この「瀉」と,という考え方は、漢方医学に限らず現代医学のなかにもあります。たとえば糖尿病の患者さんはインスリンというホルモンが足りません。これは不足しているのですから、補法により、インスリンを補います。漢方医学では、この考え方がもっと細やかに、積極的になされます。なぜなら、治療に直結するからです。したがってこれは現代医学にももっと積極的に導入しなければならない、重要な漢方医学の概念です。

現代医学は基本的には瀉法にすぐれています。がんを外科的に切り取る、放射線療法でがん細胞をたたく抗がん剤でがん細胞を殺す、消炎鎮痛剤で炎症を抑える。痛みを取る、抗生物質で細菌を殺す殺菌剤で消毒する、などがその例です。そもそも現代医学は、分析という方法をもっとも大切にしているので当然といえば当然でしょう。一方、漢方医学は瀉法と補法のバランスをとるのにすぐれています。特徴的なのは、漢方医学には多くの補法があるということです。漢方薬の十全大補湯や補中益気湯などは代表的な補剤です。残念ながら、現代医学には補剤はあまり多くありません。
さて、がんの治療を例にとると、手術によってがん細胞だけを取り除くことができればよいのですが、残念ながら、そのまわりの正常な部分にも影響を与えてしまいます。さらに抗がん剤でたたくということは 瀉」がほとんどで、「補」がありません。抗がん剤は生体の若く活発に代謝している細
胞にも瀉的な影響を与えてしまいます。これが脱毛や骨髄を抑制するなどの副作用となって現れてしまいます。したがって、抗がん剤で瀉法を行うなら、同時に漢方薬で補法を行うことで副作用が防げます。人間の生体への治療には 」と「補」のバランスを上手にとることが重要です。そこに、現代医学に漢方医学を応用する意味が出てきます(統合医療)。さらに、心身医学は身体·心理·社会·実存的なアプローチを通して瀉法と補法を使い分けることができます。私たちは、全人的医療という患者中心医療のなかで、現代医学(近代的西洋医学)、漢方医学(伝統的東洋医学)、さらに、心身医学を使い分けていくことを提唱しています。

体の冷え、のぼせを表す寒熱

寒証というのは、冷え症という意味です。実際にからだが熱いのか冷えているのかということも重要です。熱証の患者さんに対しては冷やす方法である瀉法が用いられ寒証の患者さんには温める補法が用いられます。更年期の女性によくみられる症状として「冷えのぼせ」があります。これは下半身が冷え、上半身がのぼせるというものです。実際、下半身は冷たく、顔は赤く、顔に触れると熱い患者さんがいます。これは「気逆(気の上衝)」の症状の方には桂枝茯苓丸がよく効きます。現代医学的には、寒証によい治療法はありません。私たちは寒証の診断をつぎのように決めています。五つの項目のうち、三つ以上あてはまる場合、寒証とします。

寒証の診断

①冷えを訴える。

②夏は冷房に弱く、冷房機を避ける。

③冬は電気毛布、あんかを使う。

④しもやけができやすい。また、できたことがある。

⑤からだを丸めて寝る。

寒証は女性の不妊症の原因になったり、手足の冷え、痛み、しびれの原因になります。その現代医学的病因としては、末梢の血流動脈血)不全、心臓の収縮力の低下などをベースにした血行動態の不全状態があります。寒証には、当帰芍薬散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯などがよく用いられます。

病気の進行度を表す表裏

「表裏」とは現代医学の発生学によく似ています。漢方医学では、人間のからだは、三層からなっていると考えますもっとも外側を「表 真ん中を、「半表半裏」、もっとも内側を「裏」といいます。「表」というのは、神経、皮膚、筋肉関節丶うなじ、頭といったからだの表面です。「表」に効く代表的な漢方薬には、麻黄、桂枝を主成分とする葛根湯などがあります。「半表半裏」というのは、内臓です。代表的な生薬が柴胡です。実際、柴胡剤はのど、気管、肺、肝臓、心臓、脾臓などの内臓の疾患に用います。「裏」というのは、消化管です。ここに効くのは人参や芍薬です人参湯や人参養栄湯などが代表的な漢方薬です。漢方医学では、原則的な考え方として、病気は「表」から「裏」に進むと考えられています。たとえば、かぜをひくと、その初期ではまず背すじがゾクゾクとし、寒けがする、肩がこったり、背中がいやな感じになります。こういうときに葛根湯を飲むとよく効きます。なぜかというと、病気がまだ「表」にあるからです。そのうちにだんだん気管支炎をおこしてせきやたんが出るようになり、その後肺炎へと進行します。このときの病気の座は「半表半裏」にあるので、葛根湯を飲んでも効きません。むしろ副作用が強く出てしまいます。このときには小柴胡湯のような柴胡剤が勧められます。病気がさらに進行するとやがて腹痛、下痢、食欲不振、吐き気といった消化管の症状になり、これは「裏」の病態です。こういう場合は人参湯などを服用します。このように、病気の進行度に応じて薬を使い分けていくのが漢方独特の方法で、現代医学にはない考え方です。

最後に

いかがでしたか?歴史も深く奥が深い漢方薬の基礎についての話でした。難しいと思った方もいるかもしれませんね。しかし、この基礎知識は自分の体を知り、健康を保つためにも非常に友好的な知識として作用することでしょう。ここからさらに漢方薬に興味をもっていただければ幸いです。

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