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倦怠感、浅い呼吸、食欲不振に六君子湯(りっくんしとう)

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「六君子湯は食欲不振によく使われます」

処方のポイント

消化器、呼吸器を温め機能補強する四君子湯に、痰を除き嘔吐を抑える半夏、消化墨の動きを健やかにする陳皮を加えたもの。消化器、呼吸器の機能低下により発生した倦怠感、浅い呼吸、食欲不振、腹部の振水音(ポチャポチャ音)等に適応。甘辛味で、温服が効果的。

六君子湯が適応となる病名·病態

保険適応病名・病態

効能または効果

胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐。

漢方的適応病態

脾胃気虚の痰湿(脾虚生痰)。すなわち、元気がない、疲れやすい、食欲がない、食べると腹が脹るなどの脾胃気虚の症候に、悪心、嘔吐、呑酸、上腹部のつかえ、水様便、胸苦しい、咳嗽、痰が多い、あるいは浮腫などの痰湿の症候を伴うもの。

六君子湯の組成や効能について

組成

人参3白朮5茯苓3甘草3半夏5陳皮3生姜3大棗3

効能

益気補中・健脾養胃・化痰行気

主治

脾胃虚弱痰停気滞

解説

六君子湯は「四君子湯」に半夏、陳皮を加えた処方である。「四君了場」に比べ、去痰燥湿の作用が増強されている。

処方分析

半夏は燥湿化痰作用に優れており、湿痰を除去することができる。陳皮は理気作用に優れ、「気順なれば則ち痰消える」とあるように、半夏の化痰作用を補佐する。さらに半夏には止嘔作用と胃の痞満を除去する作用があり、陳皮の化痰、和胃作用も症状の改善に効葵する。

臨床応用

◇咳嗽・痰

慢性気管支炎など肺の病証にみられる、痰が多い、痰の色が白い、痰の質が薄い、苔が白膩、悪心、食欲不振など脾胃虚弱による痰湿症狀に用いることが多い。

◇悪心・嘔吐

「二陳湯」の成分があるので悪ふ嘔吐の症状を治療する。特に脾胃虚弱による昇降失調の悪心、嘔吐に適する。

脾胃の機能を高めつつ異常な水液を除去

消化器系疾患以外にも広く応用

胃腸機能が弱くなると消化吸収機能が低下し、消化された飲食物がスムーズに体内を流通しなくなる。その結果、水液が体内に滞ってしまう。体内の過剰な水液は体の負担となり、様々な病気や症状の原因となる。六君子湯は、このような状態を解決する処方である。

六君子湯は、四君子湯(しくんしとう)と二陳湯(にちんとう)を合わせた処方である四君子湯は、胃腸の機能を高めつつ「気」を補い、二陳湯は、体内に停滞している過剰な水液を取り除く。この2つを合わせた六君子湯は、胃腸機能を高めて余分な水液を除去する力を持つ。

どんな人に効きますか

六君子湯は「脾胃(ひい)気虚、痰湿(たんしつ)」証を改善する代表的な処方である。

脾胃とは、五臓の一つである「脾」と、六腑の一つである「胃」を指す、胃は飲食物を受け入れ(受納)、消化し(腐熟)、食べた物を人体に有用な形に変化させる。脾はそれを吸収して気血を生成し、全身に輸送する(運化)。脾胃の機能が低下すれば体内で気血が不足し、様々な病気や症候が引き起こされる。これが「脾胃気虚」証である。胃腸機能の低下だけでなく、代謝の低減、免疫力の低下、神経の興奮性の減衰、造血機能の弱まりなども起こる。

「痰湿」は痰飲(たんいん)の一種であり、水液代謝の病理産物を意味する水液の代謝が正常に行われないため、水液が滞留して生じる。正常な水液は人体に必要な基本物質(津液[しんえき])であるが、それが停滞して貯留すると痰飲となり、人体の正常な生理活動の邪魔をして、心身に好ましくない症状が表れることになる。特に脾胃気虚の場合、運化。受納機能が弱いために飲食物から生じる湿濁が消化器官内にたまり、痰湿が生まれやすい。

脾胃気虚証の人は気血が不足しているので、元気がなく疲れやすい。手足がだるく、気力に欠ける。また、声に力がない、口数が少ない、息切れしやすい、顔色が白いなどの特徴が挙げられる。

痰湿証では、湿濁が消化器官内にたまっているため、食欲不振、おなかが張る、消化不良、胃もたれ、みぞおちのつかえ吐き気、嘔吐、呑酸、食べ物の味が感じられない、軟便、下痢などの症候が生じる。そのほか、多量の白い痰、咳、胸苦しさ、めまい、動悸、むくみ、手足が重だるいーなど湿っぽい症候も表れる。白っぽい舌の上に、白い舌苔がべとべとと、あるいは粘っこく付着している。舌が大きく、腫れぼったい場合も多い。

臨床応用範囲は、慢性・急性胃腸炎、胃・十二指腸潰瘍、逆流性食道炎、嘔吐、食欲不振、胃下垂、胃アトニー、消化不良、貧血、低蛋白血症、下痢、慢性、急性気管支炎、慢性腎炎、帯下などで、脾胃気虚、痰湿の症候を呈するものである。六君子湯が適応する証は、脾胃気虚という虚証が根本にあり、その上に痰湿という実証が乗じている状態である。このような証を「本虚標実(ほんきょひょうじつ)」といい、単純な虚証や実証より多い。従って、六君子湯は様々な疾患に広く使われる。

どんな処方ですか

配合生薬は、人参(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりよう)、甘草、半夏(はんげ)、陳皮、生姜、大棗(たいそう)の八味であ四君子湯(人参、白朮、茯苓、甘草)と二陳湯伴夏、陳皮、茯苓、甘草、生姜)を合わせた成分といえる。

四君子湯の成分として、君薬の人参は補気し、脾胃の機能を高め、臣薬の白朮は健脾と同時に湿邪を除去し(燥湿)、人参の補気作用を強める。また、二陳湯の成分として、君薬の半夏は燥湿化痰(そうしつけたん)、降逆和胃(こうぎゃくわい)、鎮咳し、臣薬の陳皮は燥湿去痰(そうしつきょたん)して半夏を助け、気を巡らせ痰を除去する。佐薬の茯苓は健脾燥湿し、白朮との組み合わせにより健脾祛湿の力を強め、痰の生成を抑える。止瀉にも働く。甘草は使薬として益気和中しつつ、諸薬の薬性を調和する。生姜と大棗も脾胃の機能を調える。生姜には半夏の毒性を制する働きもある。

以上、六君子湯の効能を「補気健脾(ほきけんぴ)、理気化痰(りきけたん)」という。脾胃の運化。受納機能を回復させて、気を養い、同時に気を巡らせ、体内の痰湿を除去する。白朮の代わりに蒼朮を使う場合もある。体質を強める「補薬」と病邪を除去する「瀉薬」を組み合わせ、正気を補い邪気を除去し、虚実を均衡させる。六君子湯は虚実という、相反する作用を和解する処方である。

胸脇部の痛みや不快感があれば四逆散を併用する。腹部が冷えて痛い場合は人参湯(にんじんとう)を合わせる。嘔吐が激しい場合は五苓散(ごれいさん)を合わせ飲む。上腹部膨満感や食欲不振が顕著なときは平胃散(へいいさん)を併用する。気鬱が強ければ香砂六君子湯(こうしやりつくんしとう)がよい。

こんな患者さんに

主人が抗癌剤治療をしていますが、副作用が強く、つらそうです

抗癌剤の副作用は、倦怠感、食欲不振、嘔吐、下痢などである。脾胃気虚、痰湿証とみて六君子湯を服用してもらった。副作用は次第に軽くなり、2カ月後には全くなくなった。吐きけが強い場合は少量ずつ服用するとよい。

さほど食べていないのに太ってしまいます

筋肉が柔らかいぼっちゃりタイプ。疲れやすく、汗つかきで、むくみがある。白っぽい痰が多く、便は軟らかめ。脾胃気虚、痰湿と考えて六君子湯を服用。少しずつ体重が減り、1年で6kg減量した。痰湿が蓄積して肥満を引き起こした例。

用語解説

1)「気」は人体のあらゆる生理機能を推し進める生命エネルギー、生命力に相当する。元気、やる気の「気」。

2)受納、腐熟のほか、胃はさらに飲食物の有用な部分(清)を脾に渡したあと、残りのかす(濁)を下の小腸、大腸に降ろす「降濁」機能も持つ。

3)「血(けつ)」は生命活動に必要な栄養。血液のみを意味するのではない。

4)運化は脾の最も重要な機能。胃の降濁に対し、「清」を肺に持ち上げるので、脾の「昇清」機能という。

5)痰といっても気道から分泌される粘液ではなく、もっと広い概念。

6)飲食物の残りかす(濁)は湿っぽい。これが健康を害する要因となっている場合、湿濁と呼ぶ。

7)本虚標実とは、本質的に体質が虚しているところに、病邪が表面化して存在している証。体質を強化しつつ、病邪を除去して病気を根治していく(扶正祛邪)。

8)純粋な虚証でなくても、純粋な補薬を使うことなどもある。患者の証や治療の優先順位をケース・バイ·ケースで判断し処方を決める。

9)燥湿化痰とは、痰湿を除去すること。

10)降逆和胃とは、胃気の逆上を緩和すること。

11)和中とは、中焦つまり体の中心部分である脾胃の機能を調えること。

12)生の半夏には催吐、咽喉刺激、失声、嗄声など弱い毒性がある。これらは生姜と合わせ煎じると消え、逆に制吐作用が残る。

13)出典を16世紀(明代)『医学正伝』あるいは『万病回春』とする場合もある。

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