からだの雑音が聞こえてくる
音源はないはずなのに、音が聞こえてくるのが耳鳴りである。健康な人でも、防音室にはいるとなんらかの音が聞こえてくるし、敏感な人になると、周囲が寝静まったあとに、感じることもある。これは、耳という得官がきわめて敏感にできているため、血管の中を血液が流れる音とか、筋肉や関節の動きの音など、からだの内部の雑音をキャッチしてしまうからである。
このほかにも、強く鼻をかんだあとや、飛行機が上昇・下降するとき(爆音とは別に)に、耳鳴りをおぼえることもある。これらは、血圧の変化を耳がキャッチしたのである。いずれにせよ、これらは正常な生理反応で、問題はない。
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耳鳴りがするときに考えられる病気
ところが、昼間、周囲がにぎやかなのにもかかわらず、音が聞こえてくるというのが、病的な耳鳴りである。耳は脳の血管に近いため、その異常を比較的早く察知するのだ。
たとえば、高血圧症・糖尿病・動脈硬化などの可能性もあるので、早めに医師(耳鼻科か内科)の診察を受けるべきだろう。そのほかにも、更年期障害・メニエル症候群・貧血症・偏頭痛(へんずつう)などでも耳鳴りを感じるし、いわゆるストマイつんぼといって、結核性の病気でストレプトマイシンを使ったとき、人によっては耳鳴りを感じる。
なお、耳鳴りは人さまざまで、ジンジン、ジージーと表現する人もいれば、カンカン、ガンガン、キーン、ゴロゴロ・・・という人もいる。
漢方的に耳鳴りはへそから下に力がない
現代医学の診察の結果、どこにも異常は見当たらないといわれることがある。いわゆる半健康の状態なのだが、耳鳴りにはめまいをともなうことが多く、放っておくわけにはいかない。こんなとき、漢方を使用するとよい。
漢方では、耳鳴(じめい)は腎虚(じんきょ)(へそから下に力がないことをいう)・鬱火(うっか)(精神的ストレス)・風熱(インフルエンザなど)によるものとされており、水毒(前述参照)との関係を重視する。
耳鳴りがするときの9種の漢方薬
苓桂朮甘湯
胃が弱く、神経質で、立ち上がったときにめまいをともなう人に一般的に用いる。
茯苓飲
胃下垂、胃アトニーの人に用いる。
当帰芍薬散
貧血ぎみで、手足が冷えやすく、尿の出がわるい女性で、耳鳴りするものに。
三黄瀉心湯
顔が赤く、興奮しやすい人に。
大柴胡湯
胸やわき腹に圧迫感があって、血圧が高く、便秘する人に処方する。
大柴胡去大黄湯(だいさいこきょだいおうとう)
上の症状で、便秘しない人に。
柴胡加竜骨牡蛎湯
神経質で、不眠・めまいをともない、腹部に動悸が感じられる人によい。
柴胡桂枝乾姜湯
上のような症状で、便秘がなく、やや貧血ぎみの人に起こる耳鳴りに使う。
八味丸
冷えやすく、腰痛や、のどが渇く傾向がある人によい。慢性腎炎の人にも用いる。
民間療法としての食品
豆乳を毎日二合ずつ飲用するとよい、といわれる。下痢をする人は、一合にする。
コンニャクも効果があると伝えられる。できれば、これにクロマメとコンプをいっしょに煮て、食べるとよいだろう。
クリを食べるのもよい。あるいは、カチグリを煎じて飲んでもかまわない。