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頭痛やいらいら、下半身のトラブルに竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)

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「竜胆瀉肝湯は頭痛やいらいら、下半身のトラブルによく使われます」

処方のポイント

解熱作用の竜胆・山梔子・黄芩を中心に、利尿作用の沢瀉・木通・車前子、からだの潤いを保持する地黄・当帰、消化噐を保護する甘草で構成。頭痛、赤目、脇の張り、いらいら感、陰部のかゆみ、排尿時痛、尿のにごり、多量のおりもの等、多くの熱症状に適応。甘苦味で、温服が効果的。

竜胆瀉肝湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

比較的体力があり、下腹部筋肉が緊張する傾向があるものの次の諸症:排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(帯下)。

漢方的適応病態

1)肝胆火旺(肝火上炎)。すなわち、はげしい頭痛、目の充血、目やに、眼痛、口が苦い、急性の難聴や耳鳴、耳痛、胸脇部の脹った痛み、いらいら、怒りっぽい、不眠、尿が濃いなどの症候。黄疸が出ることがある。

2)下焦の湿熱。すなわち、排尿痛、頻尿、濃縮尿、排尿困難、あるいは陰部湿疹、陰部の腫脹疼痛、黄色の帯下などの症候。

竜胆瀉肝湯の組成や効能について

組成

竜胆草6沢瀉12車前子9木通9生地黄9当帰3黄芩9山梔子9甘草6

効能

瀉肝胆実火・清熱利湿

主治

肝経実火・三焦湿熱

解説

「竜胆瀉肝湯」は全部で7とおりの組成がある。竜胆瀉肝湯は明の薛鎧「保嬰攝要」によるものである。中国ではこれに柴胡を加えた『医方集解」の「竜胆瀉肝湯」を用いることが多い。竜胆瀉肝湯は肝胆の実火と湿熱を同時に瀉すことができ竜胆草を主薬とした処方であることから「竜胆瀉肝湯」と名付けられた。

適応症状

◇頭痛

肝の経脈は頭頂部に、胆の経脈は側頭部に分布しているので、肝胆の実火が経脈に沿って上行すると、頭痛が現れる。

◇耳鳴・耳聾

胆脈が耳前後に分布しているので、胆の実火が上衝し、胆脈の走行する耳部を犯すと、急性の耳鳴、耳聾がみられる。

◇目の充血

肝経の火熱が上昇して、肝の竅である目に及んだ症状である。

◇口苦

実火あるいは湿熱によって胆汁が燻蒸され溢れ出る症状である。

◇脇脹・脇痛

肝の疏泄機能が失調し、肝経の走行する脇腹部に肝気が停滞した症状である。

◇湿疹

湿と熱によって生じる症状である。皮膚が赤く、滲出物が多いのが特徵である。主に耳部、脇の下、腰の廻り、陰部など肝胆に属する部位に湿疹がみられる。

◇尿痛尿濁

湿と熱が一緒に入り雑じって下行すると、尿は黄色く濁って、痛みなどの症状が出現する。

◇帯下

湿熱下注(湿邪と熱邪が下に注ぐ)による症状である。带下の量が多く、色は黄色で悪臭がある。

◇舌紅・苔黄膩

実火の存在によって舌紅苔黄の舌象が現れ、湿邪が絡むときは腻苔となる。

◇脈弦滑

弦は肝胆の疾患を示す脈象であり、滑脈は湿邪と実熱を示す脈象である。

竜胆草は肝を瀉する大苦大寒の薬で、苦味で燥湿、寒性で清熱瀉火する、竜胆瀉肝湯の主薬である。黄芩と山梔子の清熱作用は竜胆草より穏やかで、竜胆草の清熱瀉火作用を増加する。また黄芩の燥湿作用と山梔子の利水作用は体内の湿を除去する。車前子、沢瀉木通は滲湿利水薬で、下焦を疏通し、肝胆経の湿熱を下から除去する。生地黄と当帰は肝の陰血を滋養して肝を柔らげ肝胆の実火による陰血の損傷や、利水薬による陰の損傷を防ぐ。生甘草は甘味によって、肝の硬直をゆるめながら諸薬を調和する。

臨床応用

◇頭痛

肝胆実火の上衝による頭痛、眩暈に適しており、特に肝経の頭頂部と胆経の側頭部の疼痛に用いることが多い。虚性の頭痛に用いてはならない。

頭痛がひどいときは清肝の菊花、止痛の川芎などを併用してもよい。

◇目の疾患

肝火上炎による目の疾患、例えば急性結膜炎、急性緑内障、角膜潰瘍などに使う。疾病の急性期に用いることが多く、野菊花、夏枯草、桑葉などの清肝明目薬を併用するとよい。

◇耳鳴・難聴

肝火を瀉する作用が強いので肝胆の熱盛、火昇による急性耳鳴、突発性難聴など、耳の急性疾患に用いられる。

◇中耳炎

急性および慢性の滲出性中耳炎に用いる。

〇急性中耳炎のとき+「柴胡清肝湯」(清肝解毒)

〇小児の慢性中耳炎(湿盛脾虚体質)に+「六君子湯」(健脾化痰)

                     または+「啓脾湯」(健脾益気・渗湿)

◇蓄膿症

口臭、口苦、頭痛などの症状をともなう胆熱上衝による蓄膿症に適している。

〇発熱、頭痛、鼻塞のとき+「荊芥連翹湯」(散風、清熱解毒)

〇発熱、鼻水が黄色いとき+「辛夷清肺湯」(清肺開竅)

◇帯状疱疹

帯状疱疹は湿熱邪毒が肝経に侵入することによって生じる疾患である。急性期に竜胆瀉肝湯を用いることが多い。

〇痛みが強いとき+r四逆散」(舒肝理気・止痛)

〇帯状疱疹の後遺症による疼痛に+「加味逍遥散」(活血疏肝)

                  または+「冠元顆粒」(活血化瘀)

◇肝胆疾患

竜胆瀉肝湯は肝胆の湿熱を瀉す作用があるので、肝炎、胆嚢炎に用いることも多い。

〇急性肝炎には+「茵陳蒿湯」(清熱利湿)

〇急性胆囊炎には+「小柴胡湯」(清肝疏肝)

◇膀胱炎

本処方には渗湿利水、通彬鞄が多く配合されているので、急性期の捞胱炎に用いる。

〇通淋利水作用を増強したいとき+「猪苓湯」(利尿清熱)

                 または+「五淋制(淸熱通淋)

◇膣炎

帯下が多く、黄色い、陰部が痒いなどの症状に用いる。婦人科の内性器炎にも用いられる。

〇老人性の膣炎には+「知柏地黄丸」(補腎淸熱)

         または+「牛車腎気丸」(補腎利水)

注意事項

竜胆瀉肝湯は苦味が強く、薬性が寒に属するため、脾胃を損傷し、吐き気や下痢をひきおこす場合があるので、脾胃虚弱の患者には慎重に用いなければならない。長期にわたる服用も避けるようにする。

肝胆の熱邪や湿邪を除去

頭部の熱証や下腹部の湿熱に使用

方剤名には様々な意味が込められている。例えば桂枝茯苓丸(けいしぶくりようがん)の名には、配合生薬が含まれている。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)には効能が明記してある。

今回、解説する竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)の名には、君薬の名と効能の両方が含まれている。竜胆瀉肝湯の君薬が竜胆、効能が瀉肝というわけだ瀉肝とは、精神情緒や生理機能の調整をつかさどる五臓の肝(かん)の失調により生じた病邪、特に熱邪を除去することを指すストレスや暴飲暴食により生じた熱証を改善するのが本方である。肝と表裏の関係にある六腑の胆(たん)の熱も瀉する働きがある。竜胆にも「胆」の字が含まれており、竜胆瀉肝湯の名は掛詞(かけことば)のようで美しい。

どんな人に効きますか

竜胆瀉肝湯は、「肝胆実火上炎(かんたんじっかじょうえん)、肝胆湿熱下注(かんたんしつねつかちゅう)」証を改善する代表的な処方である。

肝胆は前述の通り、それぞれ五臓六腑の一つである。胆の機能は主に、胆汁を貯蔵する胆嚢としての働きと、精神的に物事の決断をつかさどる働きの2つ。ストレスや暴飲暴食の繰り返しにより、肝胆の機能が失調して生じた熱邪が上炎し、肝経や胆経を通じて人体の上部に達し、症候を生じさせるのが「肝胆実火上炎」証である。自律神経系の過興奮や過緊張と関係が深いと考えられている。

この証の場合は、肝経や胆経が通る頭頂部、目、耳などに症状が表れることが多い。よく見られる症候は、頭痛、頭部の脹痛、目の充血、目やに、めまい、難聴、耳鳴り、鼻血、口の苦み、顔面紅潮、脇痛、いらいら、怒りっぽい、短気、せっかち、不眠などである。舌は赤く、黄色い舌苔(ぜったい)がついている。

肝胆の失調により生じた熱邪が湿邪と結び付いて下降すると「肝胆湿熱下注」証になる。熱邪が人体を上昇しようとするのに対し、湿邪は重く、下に沈んでいこうとする。この証の場合も湿邪が熱邪を包み込み、人体の下部で症候を生じさせる。過度の飲酒や、刺激物、脂っこい物、味の濃い物の嗜好により、湿熱が生じる場合も多い。

この証の場合も肝経が通る生殖器や泌尿器で症状が表れやすく、陰部の痛み、痒み、腫れ、熱感のほか、濃い色の尿、濁った尿、排尿痛、残尿感、頻尿、黄色い帯下(おりもの)、臭いが強い粘稠な帯下などが生じやすい。下腹部の炎症に近い。肝胆実火上炎証と同じように舌は赤く、黄色い舌苔が付きやすいが、舌苔が厚くべっとりとしていることが多い。

臨床応用範囲は、片頭痛、急性結膜炎、外耳炎、鼻炎、副鼻腔炎、口内炎、黄疸、肝炎、急性胆嚢炎、急性腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、外陰炎、膣炎、睾丸炎、急性前立腺炎、鼠径部リンパ節炎、痔、高血圧症、自律神経失調症、不眠症、性機能障害、頭部の湿疹、脂漏性湿疹、脱毛症、アトピー性皮膚炎、帯状疱疹、帯下などで、肝胆実火上炎、肝胆湿熱下注の症候を呈するものである。

どんな処方ですか

配合生薬は、竜胆(りゅうたん)、黄芩(おうごん)、山梔子(さんしし)、沢瀉(たくしゃ)、木通(もくつう)、車前子(しゃぜんし)、当帰、地黄、柴胡、甘草の十味である。

君薬の竜胆は苦寒薬(くかんやく)であり、肝経に入り、上半身では肝胆の実火を鎮め、下半身では肝胆の湿熱を排除する。この竜胆一味で竜胆瀉肝湯の役割を果たしそうであるが、さらに別の生薬を配合することにより竜胆の力を強め、欠点を補っていく。黄芩と山梔子も苦寒薬であり、臣薬として熱を冷まして湿邪を除き(燥湿清熱[そうしつせいねつ)、君薬の薬効を強化する。

佐薬の沢瀉、木通、車前子は利水作用により湿邪を除去して熱を排し、湿熱を取り除く。

肝胆実火や苦寒薬は、陰液を消耗しやすい。そこで地黄と当帰が陰液を補い、正気(せいき)の損傷を防ぐ。柴胡は肝胆の気の流れをスムーズにし、諸薬の肝経での流れを促進する。さらに黄芩との組み合わせにより肝胆の熱を冷まし、気を上昇させる。これら地黄、当帰、柴胡も佐薬として働く。甘草は使薬として苦寒薬の刺激を弱めて益気和中(えつきわちゅう)しつつ、諸薬の薬性を調和する。

以上、竜胆瀉肝湯の効能を「清肝胆実火(せいかんたんじっか)、瀉下焦湿熱(しゃげしょうしつねつ)」という。攻撃的な生薬群の中に正気を補う生薬(地黄と当帰)が配合され(瀉中有補[しゃちゆうゆほ])、実火上炎を下降させる苦寒薬群の中に昇陽薬(柴胡)が加味され、脾胃を守る生薬(甘草)が組み込まれている。これにより、病邪を除去すると同時に正気の損傷を防ぐ良方となっている。

口渇が強ければ白虎加人参湯(びゃこかにんじんとう)を加える。便秘が見られるときは調胃承気湯(ちょういじょうきとう)などを合わせる。頭痛や目の充血が強ければ菊花茶(きくかちゃ)を併用する。

なお、苦寒薬の強い作用が和らげられて全体のバランスはある程度落ち着いてはいるが、それでも苦寒性が強い処方なので、胃腸が弱い患者や、冷えが顕著な場合、陰虚証などには使わない方がよい。虚証の症候が見られるなら別の証なので、釣藤散(ちょうとうさん)などを検討する。

こんな患者さんに

膀胱炎です残尿感があり、すぐトイレに行きたくなります

排尿時の灼熱感や、排尿後の痛みもある。鼠径部リンパ節が腫れている。舌に黄色い舌苔がべっとりと付着している。肝胆湿熱下注証とみて竜胆瀉肝湯を使用、3週間ほど飲み続けると全ての症状がなくなった。

夜ベッドに入っても、いらいらしてなかなか眠れません

寝ようと思っても、色々思い出したり考えたりしてしまい、そのうちいらいらしてくる。怒りっぽい。割れるような拍動性の頭痛もする。肝胆実火上炎証と考えて竜胆瀉肝湯を服用、3カ月ほどで寝付きが良くなり、眠りも深くなった。

用語解説

1)肝経も胆経も経絡の一つ。経絡は気血の通り道。臓腑に異常が生じれば、同じ経絡上で異常が生じやすい。

2)苦寒薬は、身体を冷やす働きがある苦い生薬。炎症や内熱を鎮め、解毒する作用があるが、脾胃を傷付け、冷えをもたらす可能性があるので、虚弱な患者や高齢者などには慎重に用いる。

3)陰液とは、人体の構成成分のうち、血(けつ)・津液(しんえき)、精を指す。

4)正気とは、健康を維持するために必要とされる気、血、津液のことで、人体にとって必要な機能や物質を指す。病邪から身を守ってくれる。

5)和中とは中焦(ちゅうしょう)、つまり身体の中心部分である脾胃の機能を調えること。

6)陰虚証とは、陰液が不足している証。

7)他に『蘭室秘蔵』『医宗金鑑』『薜氏十六種』などの古典にも掲載がある。また一貫堂の処方などもあり、『医方集解』のものと組成が異なるものも多い。

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