「柴胡桂枝湯は長引くかぜで、体力消耗したときによく使われます」
処方のポイント
小柴胡湯と桂枝湯を合わせたもの。結果的には小柴胡湯に、からだを温める桂皮と止痛効果のある芍薬甘草湯が加わった形になっている。感冒で悪寒と発熱の繰り返しがなかなか抜けず、関節に痛みがある等の症状に適応。甘辛味で、温服が効果的。
目次
柴胡桂枝湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症:感冒、流感、肺炎、肺結核などの熱性疾患、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胆のう炎、胆石、肝機能障害、膵臓炎などの心下部緊張疼痛。
漢方的適応病態
1)太陽少陽合病。すなわち半表半裏証(少陽病)に頭痛、悪風、身体痛などの表寒(太陽病)を伴うもの。
2)肝鬱化火。脾気虚。痰湿。
柴胡桂枝湯の組成は効能について
組成
柴胡12黄芩5半夏5炙甘草3桂枝5芍薬人参5大棗5生姜5
効能
和解少陽・解表
主治
少陽証・太陽証
解説
本方剤は「小柴胡湯」と「桂枝湯」の合方であり、原方薬量の半分を使用している。体表の邪気がまだ除去されていない段階で、邪気の一部がさらに体内の肝胆経に侵入した病態に用いる処方で、太陽、少陽双方の邪気を除去して流通するものである。
適応症状
◇発熱
微悪寒:体表部に残っている邪気との闘争によっておこる症状である。太陽表証を代表する症状である。
◇関節痛
邪気が経路の気血の流れを塞いだため、「不通則痛」で関節・筋肉の疼痛を生じる。太陽表証の症状である、
◇悪心
肝胆経に邪気が侵入して、胆気が胃気の和降機能を失調させ、胃気が上逆するためにおこる症状である。
◇心下支結
心下部に存在するつかえ感、不快感のこと、硬くもなく、痛くもない症状で、少陽証の胸脇苦満の軽症といわれる。
◇舌苔薄白
邪気が体内に深く入っていないため、苔の変化はみられない。
◇脈弦あるいは浮
弦脈は少陽証を示し、浮脈は太陽証を示す。
処方分析
「桂枝湯」—–辛温解表(体表部の邪気を追い払う)
「小柴胡湯」—疏肝清肝(肝胆部の邪気を和解する)
本方剤は太陽・少陽両経の病証が同時にみられるときに用いる。両経の症状が軽症なものに対する処方で使用薬量は各半量となっている。
臨床応用
◇風冒
和解少陽の作用をもつ「小柴胡湯」が入っているので、吐き気、胃のもたれ食欲不振など胃腸症状をともなうカゼ(悪寒、発熱、身体が痛い)に用いる。
◇関節痛
温通血脈の桂枝、緩急止痛の白芍薬によって関節痛を治療する。「小柴胡湯」が配合されているので、食欲がない、口苦、胸脇苦満など肝胆気鬱症状をともなうときに効果がある。
◇慢性肝炎
「小柴胡湯」の疏肝清肝、桂枝の温通血脈、白芍薬の柔肝緩急止痛作用は、瘀血肝鬱に対して効果がある。慢性肝炎・肝硬変初期(肝脾肥大、疼痛などの症状)に用いられる。
◇神経症状
散風作用がある柴胡・桂枝が入っているので、風邪に起因する顔面神経麻痺に使用できる。緩急柔筋(痙攣症状を和らげる)作用をもつ白芍薬も症状改善の一役を担っている。疏肝清肝の「小柴胡湯」の併用により、鬱症、ノイローゼ、心身症、癲癇などにも応用される。
◇胃炎
疏肝清肝作用のある「小柴胡湯」と、和胃の桂枝、芍薬、甘草が併用されているので、ストレスなどに起因する胃痛、胃炎(肝胃不和)に用いられる。
- 注意事項:上昇性、温性があるので、顔面紅潮、頭痛、高血圧など肝火上昇の病証には不適当である。