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膀胱炎や不眠に清心蓮子飲(せいしんれんしいん)

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「清心蓮子飲(せいしんれんしいん)膀胱炎や不眠によく使われます」

処方のポイント

利尿作用の車前子、精神を安定化する蓮肉・茯苓を中心に、余剰な熱を下げからだを潤す麦門冬。地骨皮・黄芩・消化器を補強する人参。黄耆・甘草で構成。頻尿や膀胱炎に適応する。ねあせ、不眠、不安感等の精神症状にも応用される。

清心蓮子飲が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

全身倦怠感があり、口や舌が乾き、尿が出しぶるものの次の諸症:残尿感、頻尿、排尿痛。

漢方的適応病態

気陰両虚・心火旺。すなわち、いらいら、焦燥感、不眠、多夢、口や咽の乾燥感、口内炎、胸が熱苦しい、動悸、手のひらや足のうらのほてりなどの陰虚火旺の症候に、元気がない、疲れやすい、気力がない、食欲不振などの気虚の症候を伴う。尿量減少、濃縮尿、頻尿、排尿痛、残尿感(淋症)、あるいは遺精、あるいは不正性器出血などがみられることも多い。

清心蓮子飲の組成や効能について

組成

蓮子肉4黄芩3地骨皮2茯苓3車前子3麦門冬4人参3黄耆2甘草2

効能

清心火・益気陰

主治

虚火上炎・心腎不交

◎清心火:心の虚火を清する治法である。(心火には虚火と実火がある。)

◎益気陰:不足している気・陰・津液を補益する治法をいう。

◎虚火上炎・心腎不交:通常、心火と腎水は相いまじわることによって、陰陽の平衡を調節している、腎陰の不足あるいは心火の亢進によって、腎水と心火が協調関係を失うと「心腎不交」の病態を呈するようになる。代表症状には心煩、不眠、夢が多い、動悸、遺精などがある。

解説

清心蓮子飲は清火と補虛の2つの効能をもつ扶正去邪(正気を助け、邪気を除去する)の処方である。主に心・腎の疾患に用いられる。

適応症状

◇心煩・不眠・多夢

心火が陰の抑制をはなれて上昇し(心腎不交)、心の蔵神機能を乱すことによって現れる症状である。

◇発熱

微熱のことが多い。陰虛火旺による心の虚火上炎の症状である。

◇口乾

体内の陰分と津液が不足し、咽を潤すことができない症状である。心火が上昇して肺を克し、肺津の不足によって口乾症状が現れる、という解釈もできる。

◇疲労倦怠感

虚火によって気と陰がともに消耗し、不足した症状である。

◇小便淋濁

尿が頻繁に出る、尿濁、排尿痛などの症状を示す。心は小腸と表裏関係にあるため、心火が亢進して熱が小腸に移行すると、小腸の「泌別清濁」(清濁を分別する)機能が乱れ尿が濁るなどの症状がみられる尿と排尿痛は熱の存在によっておこる。

◇遺精

心腎不交で、腎陰虛による虚火が精室を乱した症状である。

◇帯下

心腎不交によって、腎の蔵精機能が影響を受け、带脈を制約できなくなると、異常な带下症状が出現する。濁った帯下が多量に出る。熱の勢力が強いときには帯下の色が黄色く、赤くなることもある。

◇舌尖紅・苔乾

舌尖は心を代表する部位で心火が上炎すると舌尖は赤くなる。体内の陰津が不足しているため、苔の表面に潤いがなくなる。

◇脈細数

細脈は気・陰の不足を示し、数脈は虚熱を示す。

清心蓮子飲の主薬は交通心腎の蓮子肉である。収斂薬に属し、尿濁、帯下、遺精などの症状を治療する。蓮子肉には清心火、安神作用もある。黄芩、地骨皮にはともに清熱作用がある。黄芩は清熱作用が強く、上焦の心熱を淸する。地骨皮は虚熱を清する作用が特徴的で、陰虚火旺の症状を改善する。茯苓と車前子には優れた利水作用があり、主に下焦の尿の病変を改善する。また車前子には清熱作用もある。麦門冬は優れた滋陰生津の作用によって、体内を滋潤すると同時に、微寒の薬性によって心熱を清し、煩躁、不眠などの疟状を改善する。人参、黄耆、甘草の3薬は扶正薬で、気虚による疲労倦怠感などの虚弱症状に効果がある。

臨床応用

◇心腎不交証

腎陰虛と心火旺が同時に現れている症状(心煩、不眠動悸、夢が多い、遺精など)を中心に用いる。気、陰を補う薬が入っているので気陰不足の傾向(鬱証、自律神経失調証、性的神経衰弱など)に使用することが多い。

◎鬱の症状が強いとき+「加味逍遥散](舒肝・清熱・健脾)

◎不安、不眠などの症状が強いとき+「天王補心丹」(滋陰清熱・養心安神)

   または+「酸棗仁湯」(養血清熱・疏肝・安神)

◎遺精などの症状があるとき+「柴胡加竜骨牡蛎湯」(疏肝・鎮驚渋精)

◇淋証

利水薬は多くないが心熱を清して、心と表裏関係にある小腸の清濁を分別ける機能を回復させることにより、さまざまな尿の症状(頻尿、排尿痛、残尿感、尿濁、血尿など)を改善する。心腎を交通させれば、腎の気化機能も増強され尿に対する調節もよくなる。

慢性・反覆性の膀胱炎、腎盂腎炎などの泌尿器系疾患にも用いられる。

◎膀胱症状が強いとき+「猪苓湯」(清熱涼血、利湿)

                   または+「五淋散」(清熱利湿)

◇口内炎

特に心火旺による舌紅、口乾などの症状をともなう口内炎に用いることができる。補益薬が配合されているので急性より、反覆する慢性口内炎に適している。

上盛下虚の症状を改善

体力が衰えた人の泌尿器系の慢性疾患などに

上盛下虚(じょうせいかきよ)とは、上半身が実証なのに下半身が虚している(腎虚)というアンバランスな状態である。下半身が虚しているために虚火(虚熱)が上半身に上昇して熱証を呈する。慢性的な体調不良を抱えながら生活や仕事を続けざるを得ない人によく見られる。本方は、その虚実の不均衡を調整するのが特徴である。

どんな人に効きますか

清心蓮子飲は、「気陰両虚、心火旺」証を改善する処方である。

人体に必要不可欠な構成成分は、気・血(けつ)・津液(しんえき)である。気を陽気、血と津液を陰液と呼ぶこともある。この陽気と陰液の陰陽バランスが整っていると健康体でいられるが、バランスが崩れると、体調不良や病気の根本原因になる。

気虚は、陽気が不足している体質を指す消化吸収機能をはじめとし、全身の機能や興奮性が低下しているような状態である。元気がない、疲れやすい、無気力、手足がだるい、食欲不振などの症候を伴う。

一方、陰液が不足している体質を、陰虚という。体液が不足しているので、乾燥や脱水が生じる。

陰虚証になると、体液の不足により、相対的に熱証が強くなって表れやすい(陰虛火旺[いんきょかおう])。これは全身の抑制性が低下して相対的に興奮性が高まっている状態であり、自律神経系の興奮や異化作用の亢進が生じている状況に等しい。

陽気と陰液は陰陽互根の関係で密接につながっており、一方が不足すると他方も不足しやすく、両方が不足する状況が生じやすい。この気虚と陰虚が同時に存在する証が「気陰両虚」である。興奮性の低下(気虚)と亢進(陰虛)が混在する状態である。

陰虛により生じた熱邪が上昇し、五臓の心に至ると「心火旺」証になる。この証になると虚熱が生じるので、いらいら、焦燥感、不眠、多夢、不安感、のぼせ、口渇、喉の渇き、口内炎、唇の乾燥、胸部の苦悶感、動悸、微熱、午後からの熱感、手のひらや足の裏のほてり、寝汗などの症候が表れる。

泌尿器・生殖器系においては、脱水による尿量減少や濃縮尿、排尿痛、尿の濁り、血尿、あるいは自律神経系の緊張による頻尿、残尿感、さらに脳の興奮性の過亢進による遺精、そして気虚による固摂作用の低下が原因で生じる出血(気不摂血[きふせっけつ])の不正性器出血などが見られる。

舌は赤く乾燥しており(陰虛火旺の舌象)、付着する舌苔は少ない(陰虚の舌象)。

臨床応用範囲は、気陰両虚、心火旺の症候を呈する疾患で、自律神経失調症、不眠症、更年期障害、高血圧、口内炎、膀胱炎や尿道炎などの慢性の尿路感染症、膀胱神経症などの神経症、前立腺炎、前立腺肥大症、腎盂腎炎、アトピー性皮膚炎、花粉症、気管支炎、糖尿病などである。泌尿器系の疾患に多用される傾向にあるが、こだわる必要は全くない。

上盛下虚は上実下虚ともいい、体内に虚実が夾雑している状態である。根本には、長期にわたる体調不良や疾患があり、そのために体力や機能が衰えて下焦が虚した状態となる。すると内熱などの病邪をコントロールできなくなり、それが風船のように体内を上昇して上焦で病態が表れるのである。

どんな処方ですか

配合生薬は、蓮肉(れんにく)、麦門冬(ばくもんどう)、黄芩(おうごん)、地骨皮(じこっぴ)、人参、黄耆(おうぎ)、茯苓(ぶくりょう)、車前子(しゃぜんし)、甘草の九味である。

君薬の蓮肉(蓮子)は心火を清め(清心)、腎陰を補う(益腎)、全身を滋潤して脳の興奮性を鎮める。遺精を止める働きもある。

臣薬の麦門冬は陰液を補い(滋陰)、体液を潤して熱を冷まし、異化作用の亢進を鎮めて消炎解熱する。

他は甘草以外佐薬であり、黄芩は熱証を冷まし(清熱)、鎮静、降圧する。地骨皮も清熱するが、こちらは虚熱を冷ます力が強い。人参は気を補い、脾の機能を高める(補脾益気)、黄耆も脾胃の機能を高め、気を補う。人参と黄耆の組み合わせにより、補脾益気の力が強まる。茯苓は脾の機能を立て直して湿濁を運び去り(健脾運湿)、脾胃の機能を調整(和中)して止瀉する。車前子は利水して泌尿器系の熱を去り(利水通淋[りすいつうりん])、滋養作用で下焦を強める。茯苓と車前子の利尿作用により膀胱の緊張が緩和され、泌尿器系への刺激が軽減する。

甘草は、使薬として脾胃の機能を調えて気を補いつつ(益気和中)、諸薬の薬性を調和する。

以上、清心蓮子飲の効能を「益気滋陰、清心火、利水」という。鎮静と興奮の両作用によりバランスの失調を緩解させ、諸症状を改善するいらいら、動悸、不眠など心火旺が強ければ、黄連解毒湯や酸棗仁湯(さんそうにんとう)を合わせ飲む。口渇など乾燥が強い場合は麦門冬湯や六味地黄丸を合方する。遺精で上盛下虚がない場合は桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)を使う。

泌尿器系の症状の場合、加齢によるものなら八味地黄丸、炎症が強く痛みや熱感を伴うなら竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)、慢性化したものには五淋散などを検討する。本方は、上盛下虚の傾向にある場合や、ストレスや緊張による排尿トラブルによく使う。

上盛下虚の諸症状については、陰虚火旺証の頭痛や肩凝りには六味地黄丸、肝陽化風証のふらつきや耳鳴りには釣藤散、脾胃不和証の嘔吐や下痢には半夏瀉心湯、衝任虚寒証の冷えのぼせや月経不順には温経湯、寒痰証の喘息や気管支炎には蘇子降気湯(そしこうきとう)などを使う。

こんな患者さんに

◎繰り返し膀胱炎になります。心配事が多いときに悪化します

疲れやすく、頻尿で、排尿時に不快感を伴う。のぼせと口渇がある。

気陰両虚、心火旺とみて本方を使用、3カ月で完治した。

◎いらいらして眠れません。口内炎も治りません

疲れているのに眠れない。眠っても夢をよく見る悩み事が続いているという気陰両虚、心火旺とみて本方を使用。1カ月で口内炎が治り、2カ月ほどでいらいらと不眠が改善した。

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