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血行不良が原因の諸症状に四物湯(しもつとう)

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「四物湯は血行不良が原因の諸症状によく使われます」

処方のポイント

血液を補強する当帰、地黄、両者を補強する芍薬、血行を促す川芎で構成。血行改善に作用する。めまい、顔色が悪い、爪が割れやすい等の血行不良関連症状に適応。不眠、動悸、便秘、生理不順等、応用される症状は幅広い。胃もたれに要注意。甘辛味で、温服が効果的。

四物湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

皮膚が枯燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症:産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順、冷え症、しもやけ、しみ、血の道症。

漢方的適応病態

血虚。すなわち、顔色が悪くつやがない、皮膚がカサカサして潤いがない、爪の色が悪くもろい、目がかすむ、目が疲れる、目の乾燥感、頭がボーッとする、ふらつく、動悸、四肢のしびれ感、筋肉がびくびく引きつる、筋肉の痙攣がよく起きるなどの症候で、女性では月経周期の延長、月経量が少ない、無月経などがみられる。

四物湯の組成や効能について

組成

当帰10熟地黄15白芍薬10川芎6

効能

補血調血

主治

血虚・血滞

〇補血調血:血を補うことを主にしながら、血の運行を調節する治法である。

解説

四物湯は補血の基本処方で、処方を構成する4薬はともに血と関係があり、作用も類似していることから、「四物湯」と名付けられた。本来、婦人科の諸疾病を治療する処方であるが、現在は臨床各科の血に関する疾病に広く用いられている。

適応症状

◇眩暈

血虚により頭部に栄養を供給することができない症状である。

◇動悸

心血虚により心の「血脈を主る」機能が低下したために生じる症状である。

◇目が乾燥・疲労する

肝血虚により目を養うことができない症状である。

◇面色萎黄

心血虛により顔面への栄養が不足すると、顔色はつやがなく黄色くなる。

◇爪につやがない

「肝の華は爪にある」。肝血が不足すると爪はもろくなり、色が悪く、つやがなくなる。

◇月経不順・月経痛

「肝は血の海である」。肝血が不足して血海が空虚になると、月経が不順になり、量も少なくなる。血が子宮を養うことができなくなると月経痛が生じる。

◇舌質淡

血虚を示す舌象である。心は舌に開竅するので、心血虚のときには特に舌の反応が現れやすい。

◇脈細弦あるいは細渋

細弦脈は肝の血虚が著しいことを示す。渋脈は血流が悪いときに現れる。

肝は疏泄と蔵血の機能をもつ臓腑なので、肝病の治療には肝気の疏通と肝血の貯蔵を調節することが大切である。熟地黄と白芍薬は陰血を補益し、肝の蔵機能を調節する作用をもつ。特に熟地貫は大補肝腎の薬で、肝(木)の母臓である腎(水)にまで作用して補うことができる。白芍薬は薬味が酸て、主に肝に帰経し、陰血を収斂しながら腹痛を止める。当帰と川芎は辛散の薬性をもち、肝気を通じさせ疏泄機能を調節することができるので「血中の気薬」と呼ばれている。当帰は補血活血の作用を有する代表薬で、熟地黄と白芍薬の補血作用を増強し、月経不順、月経痛を治療する要薬である。川芎は優れた活血作用と理気作用を兼備し、気滞血瘀に起因する疼痛を治療する。本方は4薬によって組成されており、補血、活血の効能があり、血虚と血瘀の双方を治療できる良方である。

臨床応用

◇月経不順・月経痛

月経の源は血であり、補血、活血作用を有する本方は月経を調節する重要処方である。月経の量が少なく、質が薄いなどの血虚症状および血塊があり、色が暗いなどの血瘀症状に適している。

〇疏肝理気作用を増強したいとき+「加味逍遥散」(疏肝健脾)

〇月経痛がひどいとき+「当帰芍薬散」(養血止痛)

◇血虚証

臨床では全ての血虚証に用いることができる、眩暈、爪につやがない、舌淡、脈細などの症状を弁証の要点にして、貧血の治療に用いることも多い。

「気は血を生む」ので、血虛に対して補気薬を配合すると効果が高められる。本方には補気薬が配合されていないため、「四君子湯」(健牌益気)を併用するとよい。

◇血瘀証

軽い血瘀証に用いることもできる。頭痛、胸痛、腹痛などの疼痛症状および顔色が暗い、舌暗、脈渋などを弁証の要点にして、慢性頭痛、狭心症、肋間神経痛、肝炎、胆嚢炎などの疾患に用いることができる。

活血効果を高めたいとき

熟地黄を生地黄に、白芍薬を赤芍薬に、当帰を当帰尾に変え、川芎を増量する。

〇または+「桂枝茯苓丸」(活血似瘀)

◇蕁麻疹・湿疹・アトピー性皮膚炎

慢性の皮膚疾患では血虚。血燥により、皮膚がカサカサして、痒みが強い症状カ覗れ、難治のことも多い。調血作用のある本方は、皮膚科疾患の基本処方として広く用いられる。本方に下記の方剤がよく併用される。

 「当帰飲子」(養血・清熱・止痒)

 「柴胡清肝湯」(清肝・解毒・利湿)

 「温清飲」(養血・清熱)

 「荊芥連翹湯」(散風・清熱解毒)

 「消風散」(去風・清熱・止痒)

皮膚疾患では四物湯中の熟地黄を生地黄にかえて、涼血清熱作用をもたせればさらに効果は高くなる。

血液の質や流れを改善

婦人科疾患に加え頭痛やしびれにも

血液の質や流れを良い状態に保つことは、健康にも、美容にも、極めて重要である。血液は体中をくまなく巡り、体の隅々にまで栄養や酸素を送り届ける血液循環量は、およそ5L、これが少しでも足りなくなったり、中身が薄くなったり、ちょっとでも流れが滞ったりすると、健康状態が不安定になる。

そんな血液の質や流れが悪くなったときに役立つ処方の一つが四物湯である。

どんな人に効きますか

四物湯は「血虚」証を改善する基本処方であり、「血虚の聖剤」と呼ばれている。「血(けつ)」は血液や栄養を意味する概念であり、血虚とは「血」が足りない体質や状態を指す。

ただし血虚イコール貧血あるいは栄養失調ではない。「血」には、体を滋養する作用という意味もある。だから栄養が足りていても、血液循環や自律神経系、内分泌系などが失調していれば、人体の隅々まで血液や栄養が供給されなくなり、これも血虚証となる。もちろん根底には消化吸収や代謝機能の低下があり、食べたものが血となり肉となってくれない体質があるのだが、必要な所に必要な滋養分が供給されていない状態や体質が血虚である。

まずみられやすい症状は、顔色が悪い、肌に艶がない、肌に潤いがなくかさかさする、唇が荒れる、など。これらは肌が滋養されていないがために生じる症状だ。さらに頭髪や爪に栄養が行きわたらなくなると、髪の毛が細く弱々しくなり、爪がもろく、爪の色が悪くなる。脳に供給される栄養が不足すれば頭の回転が鈍くなり、頭がぼ一つとすめまいやふらつき、立ちくらみ、耳鳴り、頭痛も生じる。目も血の不足には敏感で、目が疲れやすい、目がかすむ、ドライアイ、焦点が合わない、といった症状が表れる。神経系や筋肉の栄養が不足すれば、手足のしびれ、筋肉の痙攣、引きつり、こむら返り、関節痛などが生じる。舌は白っぽい色をしている。多くは人体の中心から遠い遠心部に十分「血」が補給されていない状態だ。

血虚が長引くと、動悸、不安感、焦燥感、忘れっぽい、寝つきが悪い、眠りが浅い、夢をよく見る、などの症状もみられるようになる。女性では卵巣などへの栄養供給が不足し、生理が遅れ、経血量が減る。

このような症状が表れていれば、病気になっていなくとも血虚が進行している。未病の状態である。大きな病気になる前に、四物湯などで血虚体質を改善するのがよい。

血虚の人がなりやすい病気は数多く、皮膚掻痒症、冷え症、関節炎、腰痛、神経痛、自律神経失調症、不眠症、アレルギー疾患、高血圧、動脈硬化症、胃・十二指腸潰瘍、視力障害など多岐にわたる。

これらの疾患に加えて、四物湯は、生理不順、無月経、生理痛、不正性器出血、不妊症、更年期障害など婦人科系疾患に有効である。もちろん貧血や栄養失調にも効果がある。

一時的な貧血や栄養失調ならば鉄剤や栄養剤を飲めばよい。しかしこれらは対症療法であり、血虚体質の改善にはならない。根本的な改善には生薬の力を借りるのがよい。

なお「気は血の帥、血は気の母」といわれる通り、血と気は深い関係にあり、血虚と同時に気虚にもなる人が多い。この証を「気血両虚」という。血虚の症状に加えて、元気が出ない、疲れやすい、気力に欠ける、動きたくない、など気虚の症状も表れる。こういう場合は四物湯など血虚を改善する処方に加えて、四君子湯など気虚を補う処方を一緒に服用するとよい。

どんな処方ですか

配合生薬は、地黄、当帰、芍薬、川芎(せんきゅう)の四味である。

君薬の地黄は滋陰補血する働きが強い。人体に必要な物質を補ってくれる。臣薬の当帰は補血活血(ほけつかっけつ)作用があり、血虚を補うとともに血行を改善し、君薬を助ける。佐薬の芍薬と川芎は、芍薬の補血平肝(ほけつへいかん)作用と川芎の活血行気(かっけつこうき)作用により、「血」を補いつつ気血の流れをスムーズにして君臣薬を補佐する。芍薬には鎮痙作用もあり、筋肉の痙攣を鎮める。また、川芎は使薬として諸薬が薬効を十分発揮できるように働く。

地黄、芍薬、当帰は人体を滋養し、栄養状態を改善する。地黄と芍薬は滋陰補血効果が高く、ねっとりとした特徴があるが、川芎と当帰が血流を改善して滋養分を体の隅々にまで運び届ける本方の配合の妙である。さらに当帰、川芎、芍薬は卵巣機能を改善し、月経調整に働く。鎮静作用もある。以上、四物湯の効能を「補血活血、調経」という。

四物湯は胃腸機能が弱い場合、胃にさわることがある。その場合は平胃散や四君子湯を合わせ飲む。皮膚がかさかさして炎症やかゆみが生じている場合は黄連解毒湯を併用する、貧血に動悸、めまい、むくみがあれば、苓桂朮甘湯と合わせ飲む、関節炎でしびれや痛みがひどい場合は、四物湯をベースにした疎経活血湯などがよい。血虚証で高血圧の人には、四物湯に加味した七物降下湯が適する。

こんな患者さんに

長年の頭痛持ちです。頭が重く、ふらつくこともあります

ドライアイで、目が疲れやすい。眠りが浅く、よく夢を見る。時に動悸が生じる。舌は白く痩せている。

血虛の頭痛である。4カ月ほど四物湯を服用すると、慢性的な頭痛から解放された。目の乾きも改善した。

刺すような痛みの頭痛なら血瘀証なので桂枝茯苓丸、目の充血やいらいらを伴う場合は釣藤散、めまいや吐き気があるなら半夏白朮天麻湯が効く。

足がしびれる。長く散歩をすると、だるく痛む

夜中に足がつって目覚めることもある

最近は、肌の乾燥やかゆみも気になる。足のしびれや痛みは、温めると少し楽になる。舌は白く湿っぽい。

血虚証とともに冷えがあるので、四物湯と八味地黄丸を服用してもらった。舌の湿り気がとれてからは四物湯だけを飲み続けてもらい、しびれや痛みはなくなった。

天気が良くないときに悪化するなら、五苓散などと合わせるか、薏苡仁湯を使う。

用語解説

1)四物湯は「婦人病の聖薬」と称され、婦人科系疾患に多用される。ただし他の疾患でも血虚証であれば男女の別なく有効であり、性別にこだわる必要はない。

2)四物湯と四君子湯を合わせると八珍湯になる。長期化した機能低下や栄養不足を補ってくれる。これに黄耆と桂皮を加えると十全大補湯になる気血両虚に加え、手足の冷えなどの寒証が生じている場合に使う。

3)川芎は気を巡らせて「血」の運行を推進してくれるので「血中の気薬」と呼ばれる。

4)四物湯に黄連解毒湯を合わせると、温清飲になる。これは血虚血熱証を改善する処方である。皮膚の乾燥とかゆみに有効な処方には当帰飲子があるが、これも四物湯を基礎にした処方である。

5)四物湯と苓桂朮甘湯を合わせると、連珠飲になる。「血」を補いつつ余分な水分を捨てることにより、自律神経系の失調を改善する。

6)12世紀(宗代)に編纂された中国の処方集。薬局方という言葉の起源となった。

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