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丸ごとわかる気・血・水の理論

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漢方医学において病気の原因を診立てるにあたり、気血水の理論は重要であり根底の概念です。今回はそんな気血水の理論のはじまりから実際の診断において使われる方法や、日頃できる養生など気血水という理論の全てを丸ごとご紹介いたします。

気血水論のはじまり

中国の春秋・戦国時代(紀元前770~221年頃)に、中国最古の医学書と呼ばれる『黄帝内経(こうていだいけい)』が著されました。この時代の中国は文学・芸術・科学・技術が高度に発展しました。この黄帝内経で注目すべき内容は「治療より予防」に重点を置いていることです。この中で気血水論の元となる気血水説が説かれていました。

その後の漢の時代(紀元前202年~)に張仲景(ちょうちゅうけい)は『傷寒雑病論(しょうかんざつびょうろん)』著しました。『傷寒雑病論』はのちに『傷寒論』と『金匱要略法論(きんきようりゃくほうろん)』の2冊になりましたが、『傷寒論』には113の方剤(漢方薬)が記されており、中には「葛根湯」など現代でも使われている方剤が記録されています。

気血水論の提唱者 吉益南涯

日本で吉益南涯(よしますなんがい)が、父であり医師であった吉益東洞(よしますとうどう)の次男として生まれたのは1750年のことです。南涯はこの『傷寒論』を幼いころから家のあちこちにおいては愛読していたのは有名な話です。日本で「気血水論」を最初に提唱したのがこの吉益南涯でした。南涯が24歳の時に父の東洞が他界し、4歳で長男が天然痘で他界していたため、南涯が父の跡を継ぐことになります。この時の日本は西洋医学の元となった蘭学(オランダ医学)が入ってきており、東洋医学と西洋医学のぶつかり合いが激しい時代でした。

南涯は漢方医学を重視していましたが蘭学にも受容的で、門人には麻酔の父華岡青洲もいました。華岡青洲は1804年に全身麻酔というで乳がんの手術を成功させていることで有名です。南涯は45歳の時に『医範』を著しましたが、その中で「気血水論」を打ち出しました。

水穀精微は「気」「血」「水」の生みの母

気(き)・血(けつ)・水(すい)は互いに影響し合っています。大切なことは「過不足が無いこと」と「巡りがいいこと」です。

そもそも気には「先天の気」と「後天の気」があり、先天の気は親から遺伝で受け継いだもので加齢とともに減少していくため、いかにそのスピードを緩やかにする養生を出来るかがポイントになります。後天の気、血、水は「水穀精微(すいこくせいび)」から作られます。水穀精微というのは、食事を摂り消化や分解を経て吸収をされた栄養素ですので、水穀の精微を生み出すのに重要な関わりのある臓腑は「胃腸」になります。

不摂生や暴飲暴食、睡眠不足、過労、運動不足などによって胃腸が疲れてしまうと、いくら食べても消化などが十分に進まずに気・血・水の元となる水穀の精微がうまく作られません。また、血・水は気の巡りに乗って全身に運ばれますし、血・水が不足したり滞れば気も減退してしまうというように、3つはお互いに影響を及ぼしながら人の体を健康に保っています。

漢方医学で気血水という理論は重要な診断の基準

漢方は先に触れた通り数千年の歴史で確かな臨床経験を元に作られ、処方をされます。ですが、処方にあたっては西洋医学のように「病気を中心」にするのではなく、「あなたの体質」に合わせてオーダーメイドで処方をされます。つまり、西洋医学では同じ病気に対して同じ薬が処方されるのに対し、漢方医学はその人の全てを診て、元々の健康な状態からどこがバランスを崩しているのかを把握して処方がされます。

漢方をおすすめする際に行う「四診」

西洋医学での診断は問診や様々な検査がありますが、漢方医は四診(ししん)といって四つの診断方法を用いて患者を診ます。

望診(ぼうしん)・・・顔色や表情、体型、姿勢等とともに「舌診(ぜっしん)」といって、舌の色や大きさ、色、舌苔の厚みや色なども診ます。
聞診(ぶんしん)・・・声の大きさや話し方のトーン、咳の有無や出方、痰などの様子、呼吸音やにおいを確認します。
問診(もんしん)・・・自覚症状や病歴、食べ物の好みやライフスタイル、仕事や女性の場合は月経についてなどを本人や家族に聞きます。
切診(せっしん)・・・体に実際に触れて症状を診ます。脈診と腹診とがあります。

四診で得た情報と症状との関係

四診によって得た情報によって症状の原因や状態を把握していきます。

気血水・・・病気の原因
五臓・・・・病気に罹患している体の部位
八綱弁証・・病態
六部位・・・病気の進行状態

病気の原因・起因を診断するために重要な「気・血・水」

四診においては病気の原因・起因を診断するうえで重要なものが気・血・水です。例えば同じ風邪でも、気が不足して体を守る力が弱ったからなのか、血が不足して栄養が行き届かない為に起きたのか、水が停滞して老廃物を外に排出できないからなのかによって、漢方の処方が変わります。

五臓と五行説で部位を確認

五臓とは五臓六腑というように肝・心・脾・肺・腎という5つの臓器と五行説を組み合わせた診断方法になります。
四診においては、病気がどの部位に出ているかを診断するものとなります。

八綱弁証で状態を把握

八綱弁証(はちこうべんしょう)とは、各種の病気を「表証と裏証」「虚証と実証」「寒証と熱証」「陽証と陰証」の8種類の証候にまとめて診断することです。中医学では、万物は二つの側面がありそのバランスが取れている状態が健康であると考えます。八綱は8つの証候から、あなたの元々の体質とどのバランスが崩れることで体調を崩しているのかを診ます。

表証(ひょうしょう)と裏証(りしょう)

表とは内臓に対しての体の表面を指します。具体的には皮膚や筋肉を指し、表面に出ている証候から病気の原因や体質を探ります。また、病気の場合は表面で症状がとどまっている、つまりまだ病気の初めの段階であることも意味します。

例:気管支炎の場合
悪寒・発熱・頭痛・鼻づまり・鼻水といった初期症状が表証です。

裏とは体表に対して内臓を指します。具体的には血脈・骨髄・臓腑の症状を指します。また、裏証が出ている場合は症状の範囲が広く深く、病気の期間が長引くことを意味します。

例:喘息・動悸・腹痛・下痢・便秘等

虚証(きょしょう)と実証(じっしょう)

虚とは「不足している」ことを意味します。具体的には気・血・水の不足や内臓機能の低下によって体調を崩します。実証とは臓腑の働きが低下してはいないのですが、外の環境の変化や七情という7種類の感情によって正気と邪気の戦いが激しくなることによって表れる症状です。

寒証(かんしょう)と熱証(ねっしょう)

寒証とは体の冷え症候群で3つのタイプがあります。

  1. 表寒証・・・そう先に触れた通り”表”は体表面を表しますので、秋から冬にかけて寒くなる時期に体が冷えるタイプです。
  2. 裏寒証・・・なまものや冷たいもの、冷房が効きすぎるところで過ごすことで内臓まで冷えているタイプです。
  3. 虚寒証・・・虚証で触れたように不足しているものや内臓機能の働きの低下によって慢性的に体の一部が冷えているタイプです。

熱証とは体に熱がこもるタイプで3つのタイプがあります。

  1. 表熱証・・・夏の暑さや温度の高い職場などで外からの熱に触れ続けることでバランスを崩すタイプです。
  2. 裏熱証・・・辛いものや熱いもの、お酒の摂取のし過ぎが主な原因で体が常に火照るようなタイプです。
  3. 虚熱証・・・内臓機能の低下やホルモンバランスを崩すことで、体を冷やす作用の水が不足して熱を感じるタイプです。

陽証と陰証

上記で触れた「表証と裏証」「虚証と実証」「寒証と熱証」は、陽証と陰証にそれぞれ分かれます。日本人の多くが陽が良くて陰が悪いというイメージを持っていると思いますが、中医学や東洋医学では少し違います。どちらがいいというのではなく、太陽が朝昇って夜には沈むようにバランスが取れていて対立し統一され両者があって一つであるという考えかたです。どちらが強く出すぎているのか、どちらの機能が弱っているのかによって治療の方向性が変わりますので、八綱のなかでも「総綱」と呼ばれています。

陽証に属する証候→表証・実証・熱証
陰証に属する証候→裏証・虚証・寒証

六病位

六病位(ろくびょうい)とは、病気の進行状態を表します。
「太陽病、少陽病、陽明病、太陰病、少陰病、厥陰病」
例えばインフルエンザに罹った時は、24~48時間以内に高熱や関節痛が最初に出ます。そこから3日ほどかけて熱が下がり、咳やのどの痛みといった風邪に似た症状がその後出て、7日程度で症状が沈静化します。このように病気にはかかり始め、ピークの状態、病気で衰弱することによって起こる状態、治癒に向かう時期というように状態が変化をしていきます。それぞれの病における六病位を知っておくことで、目の前の患者が今どの状態にあるのかを判断するのに重要な基準となります。

気血水の理論をもとに出来る3つの養生

 

未病でもなんとなく不調でも、気・血・水の不足や停滞が分かれば、日々の養生でからだ本来の働きを高めて病気になるのを予防することもできます。漢方は1人1人の体質に合わせて処方することが出来るのですが、漢方だけではなく日々できる養生が3つあります。自分がどこでバランスを崩しているのかを知り、対策を実施すれば、早い段階で改善することが見込めます。

食養生で体質を改善!

先に触れた通り水穀の精微から気は作られ、その気に乗って血・水はめぐることを考えると、食養生がいかに重要か分かると思います。以下に気・血・水の不足や停滞に対して効果的な食材をあげますので、是非ご自身の体質と合わせて食養生も取り入れてみましょう。

不足を補う食べ物

気の不足を補う食べ物・・・栗、鶏肉、米、牛肉、しいたけ、朝鮮人参、山芋=補気類
血の不足を補う食べ物・・・イカ、豚足、人参、レバー、ほうれん草、落花生、竜眼肉(りゅうがんにく)=補血類
水の不足を補う食べ物・・・あわび、あなご、牡蠣、木耳(きくらげ)、牛乳、クコの実、黒ゴマ、すっぽん、豚肉=補陰類

めぐりをスムーズにする食べ物

気のめぐりを助ける食べ物・・・玉ねぎ、ラッキョウ、えんどう豆、そば、オレンジ、ジャスミン=理気類
血のめぐりを助ける食べ物・・・蓮根、なす、木耳、チンゲン菜、酢、姜黄、ウコン=理血類
水のめぐりを助ける食べ物・・・さくらんぼ、うど、木瓜、金針菜、冬瓜、小豆、大豆、白魚、はまぐり、黒豆=去湿類

生活習慣も見直そう!

食養生以外にも生活習慣の中で気・血・水を不足させたり、めぐりを滞らせずに養生できることがあります。

睡眠

睡眠は人の体を成長させるだけではなく、体の修復を速めたり新陳代謝を促したりと重要な要因を占めています。十分な睡眠をとることは大切な養生になりますので、時間だけではなく質にもこだわることが体の働きを高めてくれます。

喫煙

また喫煙は香辛料と同じで、体に湿熱を溜めやすくめぐりを滞らせる原因となるので、禁煙することも大切です。

過労

仕事は人生において非常に重要ではありますが、働き過ぎは病気の原因になります。また、ストレスを溜めることにも繋がりますので、健康のためには自分自身の体質に合った働き方をすることが養生となります。

適度な運動で老廃物を排出!

適度な運動は気・血・水のめぐりを改善する効果があります。また、水は冷える環境になると下に下がるので、運動によって足の裏を刺激することはポンプ作用を助けて、老廃物を排出する手助けにもなります。

気血水という理論を知って健康を維持しよう

今回は気血水という理論の始まりから漢方医学でどのように使われているかをご紹介しました。気血水という理論は一人一人の病気の原因を突き止めるのに大変重要な項目です。勿論病気に限らず、未病の状態でも病院では分からない不調も気血水の理論に基づいてみれば原因を知ることができます。また、日々の生活においても自分が何が不足しているのか、何が滞っているかが分かれば養生をしやすく、健康を維持できるようになります。気血水を踏まえて上手に養生しながら、健康維持に役立ててください。

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