「当帰飲子は皮膚の乾燥とかゆみによく使われます」
処方のポイント
血液を補強する四物湯と、皮膚の止痒作用をもつ防風・蒺藜子、皮膚の赤みを取る荊芥、皮膚を丈夫にする黄耆、からだの潤いを保持する何首烏、消化器を保護する甘草で構成。皮膚が熱をもち乾燥する、かゆみがある等の症状に適応する。甘辛味。
目次
当帰飲子が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ。
漢方的適応病態
血虚生風。すなわち、皮膚がかさかさしてつやがない。粃糠様の落屑、小さな皸裂、遊走性のかゆみ、かきむしって少量の出血や血痂がみられる、発赤や滲出物はみられないなどの症候。
当帰飲子の組成や効能について
組成
当帰5白芍薬3生地黄4川芎3何首烏2黄耆2荊芥2防風3白蒺藜3炙甘草1
効能
養血去風
主治
血虚風盛
◎養血去風:体内の陰血を養うことによって風を除去する治法である。
◎血虚風盛:陰血不足のために、陽に属する風が動き出し、亢進した病証を示す。
解説
当帰飲子は血虚症状をともなう慢性皮膚疾患に用いる処方である。
適応症状
◇皮膚乾燥
陰血が不足して皮膚に栄養と滋潤を与えることができなくなると、皮膚がカサカサする。
◇皮膚瘙痒
陰血が不足して内風が生じると、皮膚が痒くなる。内風が盛んであると全身性の瘙痒がみられ「風痒」ともいう。
◇瘡疥
慢性皮膚疾患の一種で、細かく小さい発疹と痒みがあり、滲出物が出てもすぐ乾燥する。全身に蔓延することが多い。
◇眩暈・疲労
血虛によって眩暈が、そして気虚によって疲労倦怠感が出現する。虚弱症状をともなうことが多い。
◇舌質淡・苔薄
淡舌は気血の不足を示し、薄い苔は湿邪が存在しないことを示す。
◇脈細
陰血の不足を示す。
当帰飲子の作用は大まかに補益と去風に分けられる、当帰、白芍薬、生地黄、川芎(四物湯)と何首烏は陰血を補い、皮膚乾燥に潤いを与える。さらに「四物湯」には活血作用があり、血の運行を改善し皮膚の瘡疥を治療する。生何首烏の解毒作用は、皮膚に潜伏した風毒を除去することができる。黄耆は補気作用が強く、慢性皮膚疾患の回復期に配合されることが多く、疲労倦怠感にも効果がある。荊芥、防風、白蒺藜は去風薬である。皮膚搔痒の治療に必要不可欠のものである。白蒺藜の止痒作用は特に優れている。
臨床応用
◇皮膚疾患
当帰飲子には補益薬(特に養血薬)が多く配合されているので、慢性の皮膚疾患、痒みの強いカサカサした皮膚疾患(皮膚瘙痒症、蕁麻疹、乾癬、角化症、慢性、アトピー性皮膚炎など)に適している。
◎皮膚の紅潮が強いとき+「柴胡清肝湯」(清肝解毒、止痒)
◎皮膚の搔痒が強いとき+「消風散」(散リ虱止痒)
◎腎虚症状をともなう老人性皮膚搔痒症のとき+「六味地黄丸」(滋陰補腎)
注意事項
温補・潤燥作用があるので皮膚の赤味が強い(熱)ときや、滲出物が多い(湿)場合には不適当である。