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当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

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「当帰芍薬散は血行をよくします。婦人科でよく使われます」

処方のポイント

血液の質や量を確保する四物湯成分を中心に、水分流通を調える茯苓・白朮(あるいは蒼朮)・沢瀉(参考:五苓散)で構成。不妊、生理痛、冷え症、むくみ、更年期症状等の婦人科系の症状に適応。めまい、立ちくらみ等には男女ともに使用。甘辛味で、温服が効果的。

当帰芍薬散が適応となる病名・病態

保険適応病名病態

効能または効果

筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症:貧血、倦怠感、更年期障害(頭痛、頭重、めまい、肩こり等)、月経障害、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症。

漢方的適応病態

血虚・脾虚湿盛。すなわち、皮膚につやがない、頭がボーッとする、頭痛、手足の痺れ感、筋の痙攣、月経量が少ない、月経が遅れる、月経痛などの血虚の症候に、食欲不振、疲れやすい、顔や手足のむくみ、頭が重い、腰や四肢の冷え、腹痛、泥状~水様便、白色帯下、尿量減少などの脾虚湿盛の症候を伴うもの。

当帰芍薬散の組成や効能について

組成

芍薬18当帰9川芎9茯苓12沢瀉9白朮12

効能

養血疏肝・健脾利湿

主治

血虚肝鬱・脾虚湿滞

解説

当帰芍薬散は「婦人懐妊、腹中㽲痛」(妊娠の腹症)を治療する処方である。㽲痛とはジワジワ、シクシクした痛みで、その性質からみると虚証の腹痛に属する。方剤の治療目標となる病態は血虚と水湿の停滞である。

適応症状

妊婦の腹痛

女性は妊娠によって気血を消耗しやすい状態となる。元来肝鬱脾虚の人はさらに  気血不足となるので、胎児を養うことができず流産の徴候が現れる。

 肝気カ鬱すると気の流れは停滞し、次第に血滞も生じる。血虚も血流を鈍化させるので、さらに血 滞を悪化させる。このように気血の運行不通によって、「不通則痛」で腹痛が生じる。(血滞と血瘀 は同意語)

妊娠による浮腫

妊娠時は気血が過度に消耗され脾虚が進行し、脾の運化機能が減退するため 水湿が停滞する。

舌質淡

気血の不足を示す舌象である。

舌苔水滑

脾気虚によって水湿が停滞していることを示す。

脈細滑

滑脈は妊娠脈で、細脈は気血不足の代表的な脈である。

当帰芍薬散は養血剤の「四物湯」から熟地黄を除いたものに、利水剤の「四苓散」から猪苓を除いたものを加えた処方である。熟地黄には優れた滋陰補血作用があるが、薬性が膩で凝滞しやすいので、水湿が停滞している症状には不適当である。猪苓は茯苓、沢瀉にくらべ利水作用が強く、過度の利水は胎児に悪影響を与えるため、これを除く。芍薬は本方の主薬で使用量も多い。本方では活血作用が強い赤芍薬より、養血作用が優れた白芍薬を用いる。白芍薬は肝と脾に帰経し、肝血を養う力が強いので、腹痛緩和や、月経不順の調整にもよく用いられる。当帰は婦人科の要薬で、補血、活血作用がある。芍薬との配合によって血虚腹痛を治療し、川芎との配合によって瘀血を取り除く。補血を目的とするときは、より当帰身を使用するほうがより効彩的である。「瘀血去らずは、新血生せず」といわれるように、血虚症状には活血薬が少量必要である。川芎は「血中の気薬」とも呼ばれ、瘀血や気滞による痛み(生理痛、腹痛、胸痛など)によく用いる。活血薬であるため、使用量を少なくした。煎じ薬として妊婦に使用するときは、安全のため除くこともある。白朮は健脾燥湿作用のほか、安胎作用があるので、妊婦には使いやすい補気健脾薬である。茯苓も利水作用のほか健脾作用もある。脾の運化作用が増強されれば、水湿の停滞も血虛の症状も改善できる。沢瀉は常用利水薬で、茯苓の利水作用を増強し、浮腫などの症状を治療する。薬性がやや寒で、方中の補血薬と補気薬の熱を抑討することもできる。

臨床応用

妊娠中の諸症状

妊娠中の腹痛、浮腫、小便不利などの症状に用いる。妊娠合併症に限らず血虚+湿滞の病証るこ広く使用される。

流産の徴候があるとき+「四君子湯」(健脾益気)

  または+桑寄生・杜仲・続断(補腎固胎)

  または+黄耆・人参(健脾益気)

出血症状があるとき+「芎帰膠艾湯」(養血止血)

  または+阿膠・仙鶴草(補虚止血)

生理不順

生理痛:婦人科の基本方剤「四物湯」が配合されているので、肝鬱血虚。脾虚湿滞の病証にも使用できる。

  肝気戀結の症状が顕著なとき+「加味逍遥散」(疏肝解鬱)

  生理痛がひどく、血塊が多いとき+「桂枝茯苓丸」(活血化瘀)

不妊症

不妊症に広く用いられる。肝脾の機能を穏やかに調節することができ、不妊症に併用することが考えられる。しかし、不妊症の原因は複雑なので、本処方だけで解決することは難しい。

〇腰痛、耳鳴、健忘、無排卵の月経弧不妊症に+「六味地黄丸」(滋補腎陰)

  または+「八味t也黄丸」(温補腎陽)

  または+「海馬補腎丸」(補腎益精)

〇瘀血が多く、下腹部の冷痛など血瘀、血寒証に+「温経湯」(温経散寒・養血)

  または+「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」(温経散寒・養血通脈)

神経衰弱

肝鬱脾虚・血虚湿滞による不眠、動悸、憂鬱などの精神科症状に用いることもできる。主訴に合わせて、下記のような方剤を併用してもよい。

〇不眠のとき+「酸棗仁湯」(清肝・養血・安神)

  または+「天王補心丹」(滋陰清熱・安神)

  または+1帰脾湯」(益気養血・安神)

〇動悸があるとき+「炙甘草湯」(益気養血・復脈)

  または+「桂枝加竜骨牡蛎湯」(調和陰陽、鎮驚安神)

〇憂鬱なとき+「加味逍遥散」(疏肝解鬱)

  または+「四逆散」(疏肝理気)

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