menu

冷え症に当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

「当帰四逆加呉茱萸生姜湯は男女を問わず、冷え症によく使われます」

処方のポイント

からだを温め冷えを除く桂枝湯に、消化器を温める呉茱・.細辛、血液を補強する当帰、尿を通す木通を加えた構成。からだを温める力が強く血行改善に働くので、冷え症に適応。冷えが原因の腹痛、腰痛等にも応用。独特の風味の甘辛味で、温服が効果的。

本剤が適用となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

手足の冷えを感じ、下肢が冷えると下肢または下腹部が痛くなりやすいものの次の諸症:しもやけ、頭痛、下腹部痛、腰痛。

漢方的適応病態

血虚受寒。すなわち、寒冷によって生じる、四肢や下腹部の冷えと痛み、しびれ、あるいは凍瘡などで、舌質は淡白、舌苔は白。脈は沈細、あるいは細弱(以上は当帰四逆湯と共通。本方はさらに寒冷がはげしいもの)。

より深い理解のために

当帰四逆加呉茱萸生姜湯の特徴は、1.シモヤケ、2、腰・腹部に寒冷により増悪する痛みがあるなどで、いずれかがあれば当帰四逆加呉茱萸生姜湯の適用。四逆とは、四肢が厥逆(冷える)すること。

組成や効能について

組成

当帰9白芍薬9桂枝9細辛6木通6大棗5炙甘草6呉茱萸9生姜9

効能

温経散寒・養血通脈

主治

血虚寒滞・血脈不通

 〇温経散寒:温性の薬物で、経脈に停滞した寒邪を除去する治法である。

 〇養血通脈:血を養って経脈を充満し、通じさせる治法である。

解説

当帰四逆加呉茱萸生姜湯は「当帰四逆湯」に呉茱萸、生姜を加味した処方である。温・散・補・通の特徵をもち、血虚寒滞、血脈不通の病証を治療する。「当帰四逆湯」は当帰を主薬とし、四逆(四

肢が冷える)症状を治療するという意味がある。

適応症状

◇手足厥寒

四肢の冷え症状を示す。厥寒は厥冷より程度がやや軽い。手足の冷える機序には次の3種が考えられる。

①血には温飺機能があり、血が不足すると、四肢を温養できなくなる

②気血の関係は「血載気、血崩気之母」(血は気を載せて運行する、血は気の母)である。血が不足すると、血が載せている陽気も不足し、四肢を暖められない。

③脈の気血が少なくなると、寒邪がその虚に乗じて侵入し、手足の冷えをもたらす。

◇疼痛

血虚による温養機能の低下と、寒邪による血脈の凝滞によって通則痛」となり、頭痛、痺痛、生理痛などが現れる。

◇活淡苔

白血虚を示す淡舌と寒邪の侵入を示す白苔が現れる。

◇脈細欲絶

脈が細く、いまにも絶えそうな状態を示す。①血虛で脈を充満することができない。②気血不足の状態に乗じて寒邪が侵入したため、脈の通利が悪くなる。

「当帰四逆湯」は、養血・通脈・散寒し、呉茱萸と生姜の加味は散寒作用を増強し、古い寒疾を取り除く。甘味の当帰と酸味の白芍薬は酸甘化陰によって、陰血の不足を補い、脈管を充満させる。温性の当帰は血の温養機能を高めることもできる。辛温の桂枝は経脈を通じさせながら、脈中の寒邪を除去する。甘味の当帰と併用すれば辛甘化陽で血脈の陽気を充満させることができる。桂枝と白芍薬は調和営衛の薬対で、陰血と陽気を調和させる。細辛は辛温解表薬で、温性が強く、散寒作用に優れている。特に少陰腎経に入り、腎の陽気を鼓動して上昇させる。また、寒邪を除去し陽気の回復を早める。木通は通利作用が強く、寒邪の停滞による血脈不通を治療する。心に帰経する薬で当帰、芍薬の作用を心に誘導する。木通は薬性が苦寒で、下降作用があり桂枝、細辛などの辛温燥性を抑え、温燥薬による陰血の消耗を防ぐ働きもする。用量は他の薬よりやや少なめにする。炙甘草と大棗は穏やかな脾胃薬である。後天の本である脾胃を調和して、気血生成を順調にする。呉茱萸は厥陰肝経に帰経する薬で、経脈の寒邪と臓腑に深入している寒邪を同時に温散する。特に肝経の寒盛による頭痛に効果が高い。また、止嘔作用が強く、寒邪の上逆による悪心、嘔吐などの症状を治療する。生姜は中焦を温めて寒邪を発散し、呉茱萸の止嘔作用を補佐する。本方は主に血脈中の寒邪を除去する処方であるが、寒邪はまだ深く臓腑に侵入していない病証に対するもので、「四逆湯」にある附子、乾姜は使わず、血分薬を中心に用いる。大辛、大熱の附子、乾姜は去寒作用が優れているが、陰血を損傷する心配があるので血虚をともなう場合は不適当である。

臨床応用

◇血虚寒

血虚と寒邪による諸疾患(頭痛、痺痛、生理痛、冷え症など)に用いる。

◇頭痛

特に肝経に寒邪が停滞した頭頂部の疼痛に用いる、「頭は諸陽の会合するところ」であるため、血虚と陽気の不足は頭痛をおこしやすい。顔面蒼白、疲労倦怠感などの虚証症状に、手足の冷えなど寒邪の症状がみられる場合に適している。呉茱萸・細辛の散寒作用が寒性頭痛に効果をもつ。

◇痺痛

血虛で、寒邪が経路に侵入した痺痛(腰痛、膝痛、坐骨神経痛、各種の関節痛など)に用いられる。血虚寒凝に属するしびれの症状にも当帰四逆加呉茱萸生姜湯をよく用いている。

◇生理痛

冷えをともない、経血の色が淡暗な生理痛に用いられる。

 活血作用を強めたいとき+「桂枝茯苓丸」(活血化瘀)

                         または+「当帰芍薬散」(活血化瘀)

◇冷え症

手足が冷える顔色が白い、眩暈、生理の量が少なく、薄い、舌淡、脈細などに用いる。血虚寒凝に属するしもやけ、進行性指掌角化症、レイノー病、血栓脈管炎などに用いることもある。

 腎陽虛をともなうとき+「八味地黄丸」(温補腎陽)

◇胃寒証

呉茱萸と生姜には温胃散寒・止嘔作用があるので、胃寒による胃痛、悪心、嘔吐涎沫(薄い唾液が込み上げる)、ゲップなどの症状に用いられる。芍薬は緩急痛の作用によって胃痛を緩和させることができる。

冷えを除去して経脈の流れを改善

腹痛、神経痛、しもやけなど冷えによる症候に

 当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)とは、実に長い名前である。およそ210種類ある薬局製剤漢方の中で最も長い。当帰四逆湯に呉茱萸と生姜を加味し、この処方が生まれた。

 「四逆」とは、四肢の冷えが主な冷えとなっている証を意味する。つまり当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、当帰を主薬とし、手足の冷えなどを改善することにより、病気や体調不良を治していく処方である。この作用は、呉茱萸と生姜を加えることにより増強される。

どんな人に効きますか

当帰四逆湯およぴ当帰四逆加呉茱萸生姜湯は、「血虚受寒(けっきょじゅかん)」証を改善する処方である。

この証の根本にあるのは血虚証、つまり血(けつ)が不足している体質である。血は人体を構成する基本成分の一つであり、血液だけでなく、血液が運ぶ栄養、さらに身体を滋養する作用という概念も含む。血虚は、栄養が足りていない場合だけでなく、血液循環や自律神経系、内分泌系などが失調しても発生する。人体の隅々にまで血液や栄養が供給されなくなり、必要な所に必要な滋養分が供給されない体質や状態が、血虚である。

この血虚の状態では、血が不足しているため、手足はもちろんのこと、身体全体が十分に養われておらず、外からの寒邪(かんじゃ)の影響を受けやすい。その結果、寒邪は経脈(けいみゃく)に容易に侵入して経脈中の血の流れを滞らせ、経脈の機能が阻害される(寒凝経脈)。寒冷刺激により末梢の血管が収縮している状態に近い。これが「血虚受寒」証である。

身体を温める力(陽気)の流れが寒邪に阻害されるために四肢が十分温められず手足の強い冷え(四肢厥寒[ししけっかん])が生じる。さらに手足の痺れや痛みが生じることもある。下腹部の冷え、腰の冷え、大腿部の内側や股間の冷え、腹痛(とくに下腹部痛)、腰痛、頭痛なども引き起こされる。お腹にはガスがたまりやすく、また生理痛も生じる。身体中を巡る経脈のどの部位が寒邪に侵されているかにより、症候が表れる場所や具体的な症状が異なってくる。

血の不足により脳に送られる血液量が減ると立ちくらみが起こる。冷えによる蕁麻疹、しもやけ、胃腸の痙攣、不妊なども生じる皮膚においては、うっ血が生じたり、唇や爪が紫色になったり(チアノーゼ)する場合もある。

いずれの症候も、寒冷刺激により悪化し、温めると緩和する。

舌の色は赤みが少なくて白っぽく、その上に白い舌苔が付着する。

寒邪は、寒い環境や冷たい飲食物など、外界から侵入する場合もあれば、体質の悪化により、体内で生じる場合もある。気虚、血虚、陽虚などの証の場合、体内で寒邪が生じやすい。

臨床応用範囲は、坐骨神経痛をはじめとする神経痛、腰痛、末梢循環障害、レイノー病、しもやけ、蕁麻疹などの皮膚疾患、慢性関節リウマチ、慢性関節炎、生理痛、月経困難症、不妊症、胃・十二指腸潰瘍下痢などで、血虛受寒の症候を呈するものである。

どんな処方ですか

当帰四逆加呉茱萸生姜湯の配合生薬は、当帰、桂枝、芍薬、細辛(さいしん)、木通(もくつう)、甘草、大棗(たいそう)、呉茱萸、生姜の九味である。

君薬の当帰は、不足する血を補い(補血養血)、経脈に滞る血を温めて脈内の通りをよくする(通脈)。同じく君薬の桂枝は、経脈を温めて血を巡らせ(通陽)、寒邪を排除する(温経散寒:おんけいさんかん)。体表部などの血管拡張作用に相当する。経脈における血の流れを改善する(活血通脈)ことにより、当帰の通脈作用を助ける。

臣薬の芍薬は、血をはじめとする陰液を補い(養血益陰)、当帰の養血作用を強める。同じく臣薬の細辛は文字通り細い形状の辛温薬で、温経散寒して桂枝をサポートする。鎮痛作用もある。佐薬の木通は、経脈を通じさせる。利水作用もある。使薬の大棗と甘草は、脾胃(ひい)の機能を高めて気を補い(益気健脾[えっきけんぴ])、当帰や芍薬の補血作用を高め、桂枝や細辛の通陽作用を補佐するとともに、諸薬の薬性を調和させる。

呉茱萸は熱性が強い生薬で、散寒作用がある。胃を温めて嘔吐を止め、肝を温めて上逆を降ろし(降逆)、腎を温めて嘔吐と下痢を止める。生姜は胃を温めて寒気を散らし(温胃散寒)、降逆して嘔吐を止め、呉茱萸の働きを助ける。

当帰四逆湯の効能は「温経散寒、養血通脈」である。当帰四逆加呉茱萸生姜湯においては「散寒止嘔」の効能が強まる。血虚受寒による厥寒が長く続く場合(久寒)や、嘔吐や腹痛がある場合は、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の方がいい。

本方は、桂枝、細辛、呉茱萸などの辛温散寒薬と、当帰、芍薬などの温養補血薬とを組み合わせることにより、寒凝経脈を治療していく方剤(温経散寒剤)となっている。陽と陰の両方を補う名方である。

冷えが強い場合は、人参湯や桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)を加える。痛みが強ければ、あるいは長く続くようなら、桂枝茯苓丸など、活血作用のある処方を合わせる。お腹を温めると楽になる生理痛には、当帰湯など、散寒作用の強い処方を合方する。

こんな患者さんに

〇不妊症です。基礎体温が低く、生理不順です

生理は遅れがちで、生理痛も強い。生理痛は、お腹と腰にカイロを貼って温めると軽減する。血虚受寒証とみて本方を使用。4カ月目くらいから生理が安定して来るようになり、1年後に妊娠、翌年、無事出産した。

 

〇腰痛です。病院に通っていますが、よくなりません

冷え症で、夏はクーラーが苦手、冬はお風呂に入ってもお腹や腰がなかなか温まらない。子どもの頃は、しもやけができていた。血虚受寒証とみて本方を使用。痛みは徐々に軽くなり、3カ月後から病院に行かなくてもよくなった。

 

用語解説

1)寒邪は病邪「六淫」の一つ。自然界には六気(風・寒・湿・熱[火]・暑・燥)があり、人はその中で暮らしている。また六気は人体内にも存在する。これらが強くなり、人に病気を引き起こす状態になったとき、六気は六淫(風邪・寒邪・熱邪・・・)と化す。

2)気・血・津液(しんえき)が体内を運行する通路を経絡(けいらく)という。経絡は全身にくまなく張り巡らされており、各部を密接に結び付け、身体全体を有機的に機能させる。この経絡のうち、その主幹部分を経脈という。気は生命エネルギー、津液は正常な水液に相当する概念。

3)気虚は、気が不足している正陽虚は、気虚に加え、身体を温める機能も低下している証。

4)陰液とは、人体の構成成分のうち血・津液・精を指す。精は腎に蓄えられる生命の源。

5)肝には全身の生理機能が円滑に行われるように調節する機能(疏泄[そせつ])、腎には水分代謝の調節をする働きがある。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

*

ピックアップ記事

  1. 【期間限定無料】推奨漢方判定フォーム

  2. 憂鬱・不安感がある方に効果的な漢方薬4種

  3. 生理不順に効果のある9種類の漢方薬

ページ上部へ戻る