別名:火麻仁(かまにん)・大麻仁(たいまにん)・苧実(ちょじつ)・麻実(あさのみ)
中央アジア原産のクワ科の1年草、アサ(タイマ㊥大麻Cannabissativa)の種子を用いる。中国では一般に火麻仁という。この種子は苧実(おのみ)とか麻実(あさのみ)とも呼ばれ、薬味として七味唐辛子に入れられたり、小鳥の飼料、麻油の原料にも用いられている。今日、アサは繊維用作物として旧ソ連やインド、東ヨーロッパなどで広く栽培されている。ところで麻薬に利用される大麻と同じ植物であるため、日本では「大麻取締法」で一般の栽培や所持は禁止されている。「大麻」として利用されるアサは熱帯の品種であるインドアサ(印度大麻)であり、日本の栃木県などで栽培されているアサにはほとんど麻酔性はないとされている。麻子仁にはリノール酸、リノレン酸、オレイン酸などからなる脂肪油やビタミンE、レシチンなどが含まれている。この油性成分により便を軟らかくして排便を促進する作用がある。漢方では潤腸通便の効能があり、緩下薬の代表的な生薬である。瀉下作用は穏やかで、高齢者や病後などで便が硬く乾燥して秘結するような慢性化した便秘に用いる。高齢者や虚弱体質者の常習性便秘に大黄・枳実や当帰・地黄などと配合する(麻子仁丸・潤腸湯)。また滋養作用もあり、虛労による動悸や不整脈に炙甘草・桂枝などと配合する(炙甘草湯)。→大麻
処方用名
麻子仁・火麻仁・大麻仁・麻仁・マシニン
基原
アサ科CannabidaceaeのアサCannabissativaL.の種子
性味
甘、平
帰経
脾・胃・大腸
効能と応用
方剤例
潤腸通便・滋養補虚
①麻仁蓯蓉湯・潤腸丸・潤腸湯
老人・虚弱者・産後などの血虚津枯による腸燥便秘に、当帰・肉蓯蓉・熟地黄などと用いる。
②麻子仁丸
脾約すなわち胃熱による腸燥便秘あるいは習慣性便秘には、白芍・大黄・芒硝・厚朴などと使用する。
臨床使用の要点
麻子仁は、甘平油潤で、潤燥滑腸通便の効能をもち、津枯の腸燥便秘に適する。なお、補虛滋養の効能もそなえているので、老人・体虚・産婦の血虚津枯による腸燥便秘にもっともよい。
用量
3~15g、煎肌丸、散に入れてもよい。
使用上の注意
外殻を除き、微炒したのち砕いて用いないと効果がない。