沖縄県、台湾、中国南部、インドシナ半島東部に分布するつる性低木、キンポウゲ科のサキシマボタンヅル(別名:シナセンニンソウ・㊥威霊仙(Clematischinensis)の根を用いるそのほか中国では同属植物のセンニンソウ(㊥注黄薬子Cterniflora)や東北鉄線蓮C.manshurica、山蓼C.hexapetala、小木通C.annandiiなどの根も使用されている日本でも同属のテッセンC.floridaやカザグルマC.patensなどの根を威霊仙として代用している。
これらはいずもクレマチス属(センニンソウ属)のつる性植物である。ただし中国ではセンニンソウの根をとくに鉄脚威霊仙と称している。また『開宝本草』や『救荒本草』などではゴマノハグサ科のクガイソウVeronicastrumsibiricumを威霊仙あるいはそうはん草本威霊仙と記しているが、現在は使用されていない。生薬名の威霊仙の威とはその性質が猛、霊仙とはその効果が速やかなことをいう、威霊仙の成分にはアネモニンアネモノール、有機酸などが含まれ、血糖降下作用や鎮痛作用が報告されている。
ちなみにセンニンソウには毒性があり、生汁が皮膚に付くと発赤、水疱ができるが、生の葉を手首に貼り、水疱を作って扁桃炎を治療するという民間療法もあるかつて葉は魚毒やウジ退治などにも利用されていた。漢方では祛風湿・通経絡の効能があり、リウマチや痛風などによる関節痛や筋肉痛、手足のしびれ、脳卒中後遺症による半身不随などに用いる。また魚の骨が咽に刺さったときには威霊仙を水あるいは米酢で煎じて、ゆっくりと飲めばよいといわれている(去骨湯)。
止痛作用
関節痛、筋肉痛、神経痛などの痛みや手足のしびれ、麻痺などに用いる。単味を酒で服用して足腰の疼痛、脚気の腫痛に効果があると古医書にも見られる四肢の関節痛や運動障害、手足のしびれなど関節・筋肉の症状に蒼朮。羗活など配合する(二朮湯)。関節リウマチや肩関節炎などに木瓜・牛膝などと配合する(舒筋立安散)、坐骨神経痛や麻痺などの神経症状に桃仁、赤芍などの駆瘀血薬と配合して用いる(疎経活血湯)。また打撲などによる外傷性疼痛にも用いる。
処方用名
威霊仙・鉄霊仙・イレイセン
基原
キンポウゲ科RanunculaceaeのシナボタンヅルClematischinensisOsbeck、その他同属植物の地下部。古来の正品はカザグルマC.patensMorr、etDecne.またはテッセンC.floridaThunb.である。異物同名品にユリ科のサルトリイパラ属植物Smilaxspp.の地下部に由来するものなどがあるが、使用すべきでない。
性味
辛・鹹、温
帰経
膀胱
効能と応用
①祛風除湿、通絡止痛
風湿痺痛あるいは半身不随(癱瘓麻木)に、単味の粉末を酒で服用するか、当帰・川芎・独活・防已・蒼朮などと用いる。
方剤例:二朮湯・疎経活血湯・霊仙除痛飲・神応丸
②消痰逐飲
痰飲積滞による咳嗽・呼吸困難・惡心・嘔吐などに、半夏・草果・生姜などと用いる。
③その他
骨の軟化の効能があるので、諸骨が咽にささったときに、単味30~40gを煎じて徐々に飲み下す。
臨床使用の要点
威霊仙は辛蝛走散し温で通利し、強い祛風除湿、通絡止痛の効能をもつので、風湿痺痛、麻木癱瘓に適する。また、消痰逐飲にも働くので痰飲積聚に使用し、諸骨鯁咽に対し軟化の作用をもつ。
[用量]:3~9g、煎服。
[使用上の注意]走竄し気血を耗散するので、気血虚弱には用いない。