「大黄甘草湯はコロコロした便の便秘によく使われます」
処方のポイント
強い瀉下作用の大黄、消化器系を保護する甘草で構成され、内臓に凝り固まった熱を大便により体外排出する熱の影響で乾燥し硬くなった大便を伴う便秘等に適応。大黄は効力が強く腹痛が起こることもあるが、甘草の配合と温服することで軽減される。甘苦味で、温服が効果的。
目次
大黄甘草湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
便秘症。
漢方的適応病態
便秘。
大黄甘草湯の組成や効能について
組成
大黄4甘草1
効能
清熱通便
主治
胃腸実熱証
〇清熱通便:通便させることによって胃腸内に停滞した熱を清する治法である。
〇胃腸実熱証:胃腸に実熱の邪気が存在する病証である。
解説
大黄甘草湯は、胃腸に実熱が存在するために生じる嘔吐を治療する処方であるが、臨床では実熱による便秘に用いることが多い。
適応症状
◇嘔吐
実熱の停滞によって胃腸の伝導機能が失調し、胃の下降、受納機能も乱されると、胃熱が上逆して吐く症状と水穀を受け入れることができない症状がみられる熱に起因する症状は急激で、飲食の直後に吐くことか特徴である。
◇便秘
胃腸の伝導機能が失調して、腑気の流通が滞る症状である。
◇舌苔黄
熱の存在を示す舌象である。
◇脈滑数
滑脈は実邪の存在を示し、数脈は熱の存在を示す。
主薬の大黄は瀉下通便の作用が強く、実熱を取り除き、胃腸の積滞を除去する。胃腸が通じれば伝導機能も回復するため、止嘔薬を配合しなくても嘔吐症状は自然におさまる。大黄の強い瀉下作用は、虚弱な胃腸をさらに損傷するおそれがあるので和胃作用のある甘草を配合して、方剤の性質を穏やかにしている。組成は簡単であるが邪気の除去と同時に正気を傷つけないように配慮された処方である。
臨床応用
◇便秘
大黄甘草湯は「大承気湯」より作用が穏やかで、各種の便秘に用いられるが、体格がよく、苔黄、脈実など実熱性の便秘に一番適している。単純性便秘、習慣性便秘などには、嘔吐の症状をともなわなくても使用することができる
◇嘔吐
便秘と同時にみられる嘔吐に用いる。嘔吐の性質が熱に属することが使用目標となる。臨床では、腎不全による嘔吐・便秘に大黄甘草湯を大量に用いることがある。
◎嘔吐が強いとき+「小半夏湯」(化痰止嘔)
注意事項
①虚弱体質、寒性の嘔吐(粘りのない水を嘔吐する、手足の冷え刮炎苔白など)、妊婦の便秘には禁忌である。
②大黄甘草湯には理気薬が配合されていないので、気滞の症状(腹脹、痞満など)が顕著なときは「大承気湯」(峻下熱結・理気除脹)を使用する。