葛根湯(カッコントウ)の飲み方や効能について
- 2017/2/3
- 漢方薬辞典
葛根湯は「寒気のあるかぜによく使われます」
処方のポイント
軽い悪寒の感冒に用いられる桂枝湯に、発汗鎮咳作用をもつ麻黄,葛根を加えたもの。発汗により寒気を体外に排出することで、悪寒があり汗をかいていない感冒初期に適応する。首肩の張りや痛み、神経痛等に応用されることも。甘辛味で、温服が効果的。
目次
葛根湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。
漢方的適応病態
表寒・表実。
葛根湯の組成や効能
組成 葛根12 麻黄9 桂枝6 芍藥6 生姜9 炙甘草6 大棗9
効能 辛温解表・発汗・舒筋
主治 外感風寒・項背部のこわばり
葛根湯の解説
本方剤は太陽病表実証の兼証にある処方で、外感風寒による悪風・頭痛・無汗・および太陽膀胱経の経気の流れが滞ることによって生じる項背部のこわばりを治療目標とする。
適応症状
◇悪風
外感風寒証にみられる主症状の1つである。風寒の邪気が侵入することによって衛陽(体表を防衛する陽気)が塞がれ皮膚や腠理を温煦できなくなった症状である。悪風は悪寒よりやや程度が軽い。
◇無汗
寒は「凝滞・収斂」する性質がある。衛気が風寒の邪気を感受すると、腠理が閉じ汗は出口を失って、無汗となる。
◇項背こわばること几几
背中から首肩までが疑ってこわばる症状をいう。風寒の邪気の侵入によって、後背部を走行している太陽膀胱経の気が滞り、津液の分布も阻害されて筋脈が潤いを失う。
◇舌苔薄
表証であるため舌苔は厚くない。舌質も変化していない。
◇脈浮
正気が体表の邪気と抗争するためにおこる脈象である。
処方分析
葛根は本方剤の主薬である。津液を上昇分布させて項背筋の硬直を緩和する。辛凉解表薬に属しており、清熱作用もある。麻黄は発汗解表作用が優れ、外感風寒証による無汗症状に対しては必要不可欠のものである。桂枝と芍薬は、「桂枝湯」の主要組成部分である。薬性からみると、桂枝は陽薬、芍薬は陰薬に属し(一陽一陰)、一散一収の作用によって、体表の衛陽(衛気)と営陰(営気)のバランスを調和する薬対となっている。葛根と麻黄の解表作用を増強しながら体表の防御作用を調節する
臨床応用
◇感冒
外邪の侵入によっておこる悪風、無汗、頭痛など(表実証)に用いる。特に項背部のこわばりを診断の基準にすることができる。主薬の葛根は辛凉解表薬なので、外感風熱の初期にも用いることができる。
◇肩こり
葛根は肩こりの専門薬で、津液を上昇させ筋を潤し緩和する。温通血脈の桂枝柔筋止痛の芍薬が配合されているので外感症状をともなわなくても広く使用できる。
◇下痢
悪寒、発熱とともに、胃腸に熱が潜んでいるため下痢する、胃腸型感冒に使用することができる。葛根は脾胃に㷌経、清陽を上昇させることによって下痢をとめることができる。
◇発疹の初期
葛根には透疹(発疹を促して透発させる)作用があるので、蕁麻疹、麻疹、風疹などの発疹疾患の初期に用いられる。発疹が内にこもって充分に出ないとき+ 「升麻葛根湯」
かぜ症候群と葛根湯
かぜ症候群とは、急性の呼吸器感染症の総称であり、鼻腔,咽頭,喉頭、気管支が主として侵されることから急性上気道炎とも呼ばれる臨床的には鼻炎、咽頭炎、気管支炎から下気道の感染まで多くの病型がある。かぜ症候群の80~90%はウイルスによって起こる。ウイルスの種類は多く、代表的なかぜウイルスであるライノウイルスには110以上の血清型が存在する未だ病原ウイルスが確定されていないかぜ症候群もあることから、個々の原因を鑑別することは極めて困難である。
かぜ症候群に対する葛根湯の有効性
かぜ症候群患者に対する葛根湯の有効性の検討をした結果、全身症状のうち、悪寒、熱感、下痢では軽度以上の改善が80%以上に認められ、呼吸器症状のうち、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、痰の切れなどで軽度以上の改善が60%以上に認められた。また、疼痛症状のうち、肩こり、関節痛、筋肉痛では軽度以上の改善が80%以上に認められた。