別名:桑根白皮(そうこんはくひ)・桑皮(そうひ)
クワ科の落葉高木、 クワの根のコルク層を除去した根皮を桑白皮という。またクワの葉を桑葉(そうよう)、幼枝を桑枝(そうし)、果実を桑椹子(そうじんし)という。日本では北海道から九州、朝鮮半島、中国に分布するヤマグワMorus bombycisを用いる。中国産はトウグワ(㊥桑 M. alba)あるいはマグワといわれるクワで、東アジア原産で日本にも古い時代に渡来している。クワの葉はカイコの飼料として重要であり、養蚕用に多くの品種が栽培されている。根皮にはa・βアミリンやブレニルフラボノイドのモルシンなどが含まれ、降圧、利尿、降血糖作用などが報告されている。漢方では止咳・利水消腫の効能があり、 炎症性の咳嗽や呼吸困難、血痰、浮腫、脚気、排尿減少などに用いる。→桑枝・桑葉・桑椹子
①止咳作用
肺熱による咳嗽や喘息に用いる。気管支炎や気管支喘息などで咳嗽、喘息症状が続く場合には麻杏甘石湯に桑白皮を加える(五虎湯)。小児の気管支炎や喘息にはさらに二陳湯を加える(五虎二陳湯)。慢性化した気管支炎や気管支拡張症などで咳嗽とともに粘稠痰が多いときには桔梗・貝母などと配合する(清肺湯)。肺化膿症で臭気のある痰を出すときには桔梗・薏苡仁などと配合する(桔梗湯)。感冒の後で咳嗽のみが続くときには橘皮・半夏などと配合する(橘皮半夏湯)。
②利水作用
とくに熱証を伴う浮腫に用いる。妊娠浮腫など全身性の軽い浮腫に茯苓皮・陳皮・生姜皮・大腹皮と配合する(五皮飲)。心臓性喘息など浮腫に呼吸困難を伴う場合には茯苓・沢瀉・蘇葉などと配合する(導水茯苓湯)。
処方用名
桑白皮・桑根白皮・桑皮・生桑皮・炙桑皮・ソウハクヒ
基原
クワ科MoraceaeのカラグワMorusalbaL.のコルク層を除去した根皮。
性 味
甘、寒
帰経
肺
効能と応用
方剤例
瀉肺平喘
瀉白散・五虎湯
肺熱の咳嗽・呼吸困難・呼吸促迫などに、地骨皮・黄芩・生甘草などと用いる。
利水消腫
五皮飲
肺気壅実の浮腫・尿量減少に、茯苓皮・大腹皮・杏仁などと用いる。
臨床使用の要点
桑白皮は甘寒で下降し、甘淡で肺中の痰水を行らせ利小便・消腫し、寒で肺中の火を清して平喘し、瀉肺行水の効能をもつ。それゆえ、肺熱の咳喘・喀血や肺気壅実の水腫脹満・小便不利などに有効である。
参考
①生用すると利水に、炙用(炙桑皮)すると平喘止咳に働く。
②桑白皮・桑葉・桑枝は清熱に働く。桑白皮は肺に入り、下降の性質をもち肺中の火を瀉し肺中の痰水を行らせる。桑葉は軽くて上昇の性質をもち、肺・肝の風熱を疏散し、桑枝は経絡に入り、祛風湿・利関節に働く。
用量
6~12g、煎服。
使用上の注意
性寒で善降であるから、肺寒咳嗽・肺虚無火・小便自利には使用しない。